【高論卓説】「キッズウイーク」に賛成できない “秋休み”子供も多忙で非現実的

2017.6.15 05:59

 ■“秋休み”子供も多忙で非現実的

 「働き方」に続き、今度は「休み方」改革を国が主導して進めるらしい。有給休暇の取得率向上や、夏休みを短縮し、他の時期にまとまった休みを取る「キッズウイーク」の導入を目指すようだ。しかし、「キッズウイーク」に関しては、あらゆる角度から考えても賛成しかねる。

 その理由は、第一に地域差はあるものの、夏の暑さが残る8月末に休みを短縮し、学校を再開することが子供のためになるのだろうかということである。

 一部の自治体では、授業時数を確保するため、土曜授業を実施したり、夏休みを短縮し2学期の開始を早めたりしているところもすでにある。北海道は、気候の特性に合わせて冬休みを長くし、夏休みを短くしている。しかし、北海道や東北地方の豪雪地帯など一部地域を除き、その他多くの、夏の暑さが厳しい地域で、休みを短縮し、学校を再開するのは、一体どういう価値があるのだろうか。

 第二に、秋の行楽シーズンに短縮した分の休みを親子で取得し、家族の時間を増やすというが、未就学児ならまだしも、学齢期に達している子供たちには不可能だ。

 2学期に学校行事が集中し、まとまった休みを作るとなれば、年間を通じた学校スケジュールの大幅な組み直し、引いては教育内容の再検討など、膨大な見直しが必要となる。中学以上になれば、中間や期末テストもある。文化祭、運動会など、兄弟姉妹、それぞれの学校や部活のスケジュールを調整し、両親の仕事も調整し、学期中に家族が一斉に数日間の休みを取ることなど、絶対にできないと言ってよいだろう。

 プレミアムフライデーと同じで、子供のいる家庭にはほとんど無関係だ。安倍晋三首相が考える「親子でのコミュニケーションの時間を多くとる」という目的は達成できない。

 そう思うと、休み方改革とは一体何を目的にしているのだろうか。長時間労働の是正につなげるための有給取得率向上には異論はない。しかし、取得時期については、特に学齢期に達している子供のいる家庭では、夏休みにこそ、取得しやすい環境が必要である。

 共働き世帯にとって、夏休みをどう乗り切るかは、大きな課題だ。休みの取得について、国を挙げて積極的に進めるのならば、家族が予定を調整し、そろって取得する夏休みを1週間しっかりと取る。その他に、夫婦が別々の時期でもよいので、1週間ずつ取る。そうすれば、3週間は両親とも、あるいはどちらかが子供と過ごす時間が取れることになる。その他、キャンプなどの合宿活動に参加するようにすれば、約1カ月は乗り切れることができるのだ。

 夏休みは6週間近くあるので、もう少しやりくりが必要だが、子供本人の都合ではなく、仕事で不在になる親の都合で、塾に通わされたり、ゲーム漬けになって留守番したりするよりは有意義な夏休みを過ごすことができるだろう。夏休みだからこそ、繁忙期の業種もあると思うが、この時期なら休暇取得に対して、周囲の理解は得られやすい。

 これだけをみても、政府が考える「キッズウイーク」は非現実的な制度であり、導入する意味も価値もない。それでも政府は来年度から導入する方向というから驚きである。今後、「休み方改革官民総合推進会議」で検討されるようだが、委員の方々には良識的に判断してもらいたい。

【プロフィル】細川珠生

 ほそかわ・たまお ジャーナリスト。元東京都品川区教育委員会教育委員長。テレビ・ラジオ・雑誌でも活躍。千葉工業大理事。一児の母。父親は政治評論家の故細川隆一郎氏。

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