【オーダーブックで読み解く外為市場】リスク許容度低下でもドル高地合い続くか 出口見えず再び不安定化も

2020.3.24 07:00

 先週の為替市場は、引き続き新型コロナウイルスの感染拡大による景気減速を警戒したリスク回避色の強い状態が続きました。為替市場においては、一般的に市場のリスク許容度が低下する局面では、安全資産とされる円やスイスフランが強くなり、次いで米ドルが強くなる傾向がありますが、今回のケースでは、今のところ、資産の現金化に伴うドル需要を中心に米ドルの強さが目立つ状態が続いており、このドル高地合いが今週も続くかどうかに注目が集まります。

 先週は各国の政府から、様々な経済政策が発表されたことや米連邦準備制度理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)、日本銀行、イングランド銀行(BOE)等の主要な中央銀行が緊急の金融緩和政策を発表したこともあり、市場は徐々に落ち着きを取り戻しつつあります。ただし、欧米を含め世界中で新型コロナウイルスの感染拡大が続き、今のところ出口が見えない状況であるため、再び市場が不安定な状態に陥る可能性も十分に考えられそうです。

下落基調に転じる可能性も

 では、世界中に顧客を持つ外国為替証拠金取引(FX)会社のOANDA(オアンダ)が提供するオーダーブックで外国為替市場の動向を探ってみましょう。

 オーダーブックはOANDAの顧客の取引状況を公開したデータです。顧客の保有しているポジションの取得価格の水準(縦軸)と割合(横軸)を示す「オープンポジション」と、顧客の未約定の注文の価格水準(縦軸)と割合(横軸)を示す「オープンオーダー」の2種類のデータから成ります。

 ちなみに、ある通貨を買っている状態を「買いポジション」、売っている状態を「売りポジション」といいます。買いポジションを保有している場合、その通貨の価格が取得価格から上昇したら収益が上がり、逆に下落すると損失が発生します。売りポジションを保有している場合は、取得価格から下落すると収益が上がり、上昇すると損失が発生します。FXでは、それぞれのポジションとは反対の売買を行って決済(損益の確定)をする仕組みとなっているからです。

 先週のドル円は、底堅い推移が続き、1米ドル=111円台まで上昇する動きとなりましたが、週末には少し伸び悩む動きとなりました。

 OANDAのオープンポジションを見ると、直近の伸び悩みにより、含み損が発生し、ストレスを抱えた買いポジションが増えており、ここから、さらに下押しが強まると、これらの買いポジション保有者の損切り(損失の拡大を防ぐための決済取引)の売りが増え、下落基調に転じる可能性に注意が必要となりそうです。

 短期的な上昇基調に転じるか

 先週のユーロドルは、上値が重い推移が続き、1ユーロ=1.06米ドル台前半まで下押す動きとなりましたが週末には下げ渋る動きとなりました。

 OANDAのオープンポジションを見ると、下落が続いたことにより、含み損を抱えた買いポジションが多い状況ですが、直近の反発により、含み損を抱えた売りポジションも少し増えています。

 反発地合いが強まると、これらの売りポジションが苦しくなり、損切りの買いが増え、上昇を後押しすることが想定され、短期的な上昇基調に転じる可能性にも注意が必要となりそうです。

 含み損を抱えた売りポジションに要注意

 先週のポンドドルは下落が続き、一時1ポンド=1.15ドルを割り込む水準まで下押しする動きとなりました。

 OANDAのオープンポジションを見ると、下落により、含み損を抱えた買いポジションが目立つ状況が続いており、反発したところでは、これらのポジション保有者の損益分岐点に戻ってきたことによる安堵の売りが増えることが想定されるほか、安値を切り下げる場面では、これらのポジションの損切りの売りが増えることが想定され、上値の重い推移が続く可能性が考えられそうです。

 一方で、直近の反発により、含み損を抱えた売りポジションも少し増えており、反発が続くと、これらの売りポジションの損切りの買いに後押しされ、短期的にでも上昇が勢いづく可能性にも注意が必要となりそうです。

〈OANDAのオーダーブック〉

オープンポジションはここに注目

 相場を動かす要因の一つは損切り注文といっても過言ではありません。

 これ以上損失を増やしたくないトレーダーは保有しているポジションの反対売買を行い、損失を確定させ、市場から退出します。

 例えば、価格が下落する局面では、買いポジションの保有者が苦しくなり、損切り注文(決済の売り注文)が出やすくなり、下落圧力が強まる要因となります。

 損切り注文は価格の向かう方向と同じ方向へ力が加わる注文となるため、損切り注文が多くでる場面では、短期間に相場が大きく動きやすくなります。

 オープンポジションを見ると、どの水準に含み損を抱えたポジションが多いかを視覚的にチェックすることができ、次にどちらに動いた方が、価格の動きが大きくなりそうか(損切り注文が多く出そうか)を予想することができます。

オープンオーダーはここに注目

 前述の通り、損切り注文が増えると、一方向への力が強まるため、価格の動きが勢いづくことがあります。

 オープンオーダーを見ると、どの水準にどの程度の注文(オーダー)が入っているかを視覚的に素早くチェックすることができます。

 損切り注文が多く入っている水準に到達すると、価格が短期的にでも勢いづくことがあるため、注意が必要です。

世界中のトレーダーの相場分析のサマリー?

 トレーダーが損切り注文を入れる水準は、通常は、チャートで相場分析を行なった上で、「この水準を超えてしまったら、相場の流れが逆方向に向かう」と考えた水準に入れます。

 OANDAのオープンオーダーは、世界中のトレーダーが相場分析を行った結果のサマリーと言っても過言ではありません。

 これを見れば、世界中のトレーダーがどの水準に注目し、相場の転換点となると考えたかを簡単にチェックできます。

※逆指値注文:現在の水準よりも不利な水準を指定して行う注文。通常、損切り注文はこの逆指値注文を使います。

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OANDA Japan株式会社

第一種 金融商品取引業 関東財務局長 (金商) 第2137号

加入協会等:一般社団法人 金融先物取引業協会 証券業協会 日本投資者保護基金

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OANDA FXラボ編集部

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OANDA Japan株式会社世界各国に拠点を持つFXブローカー

1995年に世界で初めてインターネットを利用した無料の外国為替レート情報の提供を開始したOANDAの日本法人。創業当初から、正確で透明性の高い優れた為替レートを提供するため万全のインフラを整え、取引環境の改善を行ってきた。現在では世界8カ国にオフィスを構え、そのサービスは世界中のトレーダーに利用されている。

【オーダーブックで読み解く外為市場】はOANDA FXラボ編集部が投資判断の参考として外国為替市場の動向を読み解く連載コラムです。更新は原則毎週火曜日。アーカイブはこちら

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