【5時から作家塾】コロナ騒動で需要急伸、空き家が注目を集めるワケ

2020.10.22 07:00

 新型コロナウイルス感染拡大により、いま大きく需要が伸びているものがある。

 それは「空き家」だ。

 総務省統計局の2018年住宅・土地統計調査によると、全国の空き家は846万戸。2013年と比べ、26万戸も増加している。地方の過疎化や高齢化を背景に、年を追うごとに増えている空き家。そこに注目が集まっているのだ。

 なぜ需要が伸びているのだろうか?

 その理由を空き家の専門家である、空き家活用株式会社の代表取締役社長・和田貴充さんに取材をした。同社が運営する情報サイト「空き家活用Lab」は、コロナ騒動以後、閲覧数が急速に伸びているという。

 「新型コロナウイルスの感染拡大により、東京や大阪などに住む方が、過密都市の危険性を実感するようになったのが、第1の要因だと思います。今回の騒動でテレワークに移行した企業も多く、都心のオフィスは撤退が相次いでいる状態です。テレワークになれば通勤圏という制約がなくなり、企業は家賃や交通費の負担が大幅に削減されます。働く側も在宅で仕事をするとなれば、ワークスペースが必要です。その結果、都心から離れた場所で、土地が広くて環境が良く、ゆっくり過ごせる場所に住みたいという方が増えたのではないかと分析しています」(和田貴充さん、以下同)

 税金が重くのしかかるケースが増加

 「空き家活用Lab」には多彩なコンテンツが掲載されているが、閲覧数1位になったのが「0円で手に入る空き家」という記事である。空き家が増えすぎて、今や無料で譲渡する人も少なくないそうだ。この記事はライター氏の体験談をもとにしており、地方の空き家の現状を伝えている。以下が抜粋した内容だ。

 〈先日、岩手の祖母の家を無料で引き取ってもらいました。祖母はまだ存命ですが、施設に入っているため、家は長らく空き家状態でした。祖母が亡くなれば、途端に相続税が発生します。以前は相続税の物納として家と土地で納めることができましたが、財政難や過疎化、高齢化などにより、数年前から家や土地の物納は不可となりました。田舎の家なので庭や家は広く、最寄り駅からは車で25分もかかってしまいます。そのため、売りに出したとしても、なかなか買い手はつかないだろうと考えたのです〉

 以前は、空き家にかかる固定資産税には優遇制度があり、減免されていた。しかし2015年の「空き家対策特別措置法」の施行により、この制度が廃止され、放置しておくと税金が重くのしかかるケースが増えているのだ。

 〈相続税や固定資産税、家具などの処分費用、家屋の取り壊し代、更地の整備代だけでも、少なく見積もっても1000万円はかかるとのことでした。その結果、『無料でもいいから』引き取ってくれる人を探すことにしたのです。無料で譲渡すれば、とりあえず1000万ほどのお金が浮きます。あくまでも一例ではありますが、こういった事情で、地方では空き家を無料で譲渡したい人が結構いるのです〉

 無料までいかなくても、地方には安価の空き家が数多くある。移住や多拠点居住を考えている方には、今がチャンスかもしれない。

 とはいえ、空き家を購入する際には、十分な準備と注意が必要だ。

 「まず、どこに住みたいかが重要です。希望のエリアが決まったら、何度か訪問して試しに滞在してみてください。住民の様子、自治体のルールが分かってきます。また、既に移住している方にも話を聞いて参考にしてください。物件の状態は千差万別ですが、何でも揃っている完璧な物件は、やはり相応に高額です。多少の不便がある物件は価格も安くなっていますので、そういう物件を選んでDIYを楽しみながら、好きなようにリフォームしていくことをおすすめします。リフォーム時に一番大事なのは、水回りや電気系統です。水道管や、排水管、そして電気の配線などをしっかりチェックしてください」

 地元に詳しいシニアを調査員に

 同社では、2018年から「AKIDAS(アキダス)」という独自のシステムを運営している。これは全国の空き家と想定される物件を、専門の調査員が調べてデータベース化したものである。それを有償で不動産業者に提供している。

 「地方の空き家を有効活用したいけれど、現地を調査したり、法務局へ行くのが負担という事業者のために運営しています。リタイヤした地元に詳しいシニアを調査員として雇用しており、現在50名が在籍しています。空き家は時間とともに状態が変化しますので、3カ月に1度のペースで確認しています。これまでは都市部の空き家見込み物件を中心にデータを収集していましたが、最近では地方自治体からの相談も増えており、地方の空き家調査も受けている状況です」

 また、空き家のDX(デジタルトランスフォーメーション)化も進めている。人工衛星が撮影する熱赤外画像などのデータを、AIを活用して分析し、空き家の多いエリアを検出するプロジェクトである。この事業は東京都が財政支援を行う「民間空き家対策東京モデル支援事業」に採択されている。

 「空き家特措法が制定されて以来、全国の自治体では空き家の実態調査を行っています。しかし、職員が1軒ずつ訪問して調べる場合が多く、大変な負担を強いられています。AIを活用すればコストを抑えることができ、空き家の情報を迅速に提供できるようになると考えました。コロナ禍により地方へ引っ越す人が増え、空き家の注目度も高まってきた今、調査のデジタル化は、新しい市場の創出につながると確信しています」

 新型コロナウイルスの騒動で注目を浴びている空き家。歴史を育んできた貴重な建物を壊さずに再活用すれば、次の世代への財産になるかもしれない。地方移住や多拠点居住を考えている方は、空き家を選択肢に入れてみてはいかがだろうか。(吉田由紀子/5時から作家塾(R))

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5時から作家塾(R)

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編集ディレクター&ライター集団

1999年1月、著者デビュー志願者を支援することを目的に、書籍プロデューサー、ライター、ISEZE_BOOKへの書評寄稿者などから成るグループとして発足。その後、現在の代表である吉田克己の独立・起業に伴い、2002年4月にNPO法人化。現在は、Webサイトのコーナー企画、コンテンツ提供、原稿執筆など、編集ディレクター&ライター集団として活動中。

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