東京都の外郭団体、来年にもコロナワクチンの治験 天然痘ワクチンを利用

2021.8.19 07:56

 東京都の外郭団体である都医学総合研究所が民間の製薬会社と共同開発している新型コロナウイルスワクチンが、臨床試験(治験)の準備段階に入ったことが18日、分かった。マウスやサルの非臨床試験では、新型コロナの発症予防効果が確認された。長期間の免疫維持が実証されている天然痘ワクチンを利用するため、開発中のワクチンも1回の接種で抗体が長期にわたり持続することが期待されるという。来年中に治験に着手し、早期の実用化を目指す。

 同研究所がノーベルファーマ社と共同開発しているのは、弱毒化した天然痘ワクチンに新型コロナウイルスの遺伝子を組み合わせて製造するワクチン。昨年4月に開発に着手し、マウスやカニクイザルを用いて非臨床試験を進めてきた。

 開発中のワクチンを接種したマウスに新型コロナウイルスを感染させる試験では、マウスにほぼ体重減少がなく、生存し続けることを確認。カニクイザルの試験では、肺でのウイルス増殖や肺炎の発症が抑えられ、重篤な副反応は見られなかったという。

 同研究所によると、天然痘ワクチンは1回の接種で少なくとも数十年以上、抗体が保持されることが確認されており、天然痘ワクチンをベースに開発される新型コロナワクチンも複数回接種することなく免疫を長期維持できるとみられる。凍結乾燥した製剤化により、常温での保存や輸送も可能という。

 新型コロナ感染者の中には、ウイルスに感染後も免疫ができにくいケースがあり、再感染のリスクが指摘されている。また、風邪ウイルスである従来のコロナウイルスは感染後、短期間で免疫が低下するとされ、同研究所は「免疫を長期間維持できるワクチンの開発が重要」としている。

 国内の新型コロナワクチン接種は、米国のファイザー社とモデルナ社製を中心に進められている。職域接種は申請が想定を超え、6月下旬に受け付けが一時停止された。希望する国民全員の接種には安定的な供給が不可欠で、国産ワクチンの開発が急務となっている。

 国内では塩野義製薬や第一三共などが開発に乗り出しており、同研究所感染制御プロジェクトの安井文彦プロジェクトリーダーは「いろいろなワクチンの有効性と安全性が確認され、その時々のニーズに合わせたものが安定的に供給されるのが望ましい」と話している。

 開発中のワクチンは、臨床試験後も薬事申請と審査を経て承認を得られるまでには一定の時間を要するため、医療機関への供給は早くても令和5年以降となる見通し。同研究所は実用化を急ぐ。

 「国産」ワクチン開発進む

 国産の新型コロナウイルスワクチンは、複数のタイプが治験段階にある。

 第一三共は、国内でのワクチン接種に使われているファイザーやモデルナが開発したメッセンジャーRNA(mRNA)を使ったワクチンを、KMバイオロジクスは不活化したウイルスを投与する従来型ワクチンをそれぞれ開発。いずれも今年3月から治験を進めている。

 バイオベンチャーのアンジェスが手掛けるDNAワクチンは最終治験を実施中だ。今月上旬からは、より高い効果が得られるように、1回の使用量を増やした高用量での治験も始めた。担当者は「驚異的な有効性を示すファイザー製やモデルナ製に遜色ないワクチンを開発するために改善が必要になった」と話す。

 塩野義製薬も、組み換えタンパクワクチンを開発しており、年度内の国内供給を目指す。担当者は「状況は常に変化している。より早い国内供給に向けて複数の選択肢で開発を進めていく」としている。(【東南アジアで治験】塩野義、コロナワクチン現地供給に貢献へ)

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