ちなみに、首相の政治スタイルを考えるに、「理(ことわり)の政治家」ではないかと推察する。辞書によれば、「理」とは、物事の筋道、道理といった意味となる。「創生『日本』」のような政治理念を押し出した「美しい日本」をどう構築するのかが大切なのだろう。
実際、その政治スタイルからは、自民党の派閥全盛時代に存在していた党人政治家のような、理念を捨てて利にさとい資質も垣間見えない。幹事長を務めはしたが、「強面(こわもて)」で党内にらみをきかせた風もとんとなく、首相の座に2回座りながら、派閥会長の経験はない。
参院選後、政権基盤が盤石となり、経済状況が上向き加減を維持すれば、これほど恵まれた政治環境はあるまい。首相周辺は「安倍官邸」が参院選まで大きく動揺することなく、どうにかやってこれた事情をこう説明する。
「常に1カ月先を見越したスケジュール感をもってさばき方を考えている」
この伝で言えば、選挙後の政治日程や課題の処理は織り込み済みのはずである。参院選の結果が予想通りとなれば、首相は心底、「ここまでよくやってきた」と胸をなで下ろすだろう。
だが、「これからどうする」の覚悟と見識なくして、どうして長期政権が視野に入ってこよう。首相が真価を問われるのは、選挙後と言ってよい。(松本浩史/SANKEI EXPRESS)