【安倍政権考】
安倍晋三首相(59)はつくづく「ついてる男」だと思う。
9月、ロシアでの20カ国・地域(G20)首脳会合を途中で切り上げ、ブエノスアイレスで開催された国際オリンピック委員会(IOC)総会に乗り込み、2020年の東京五輪招致を成功させた。「途中抜け」に外務省が抵抗したが、リスク覚悟での強行突破だった。五輪招致の成否は「天国か地獄か」の違いだったが見事、凱旋(がいせん)将軍となった。
東京五輪の追い風
アベノミクスの「三本目の矢」たる成長戦略に決め手と迫力を欠き、デフレ脱却への“弾不足”が指摘されるなかで、五輪招致決定は景気に強い刺激をもたらす格好の「第四の矢」となった。
政治指導者には「運」も必要だが、これほど運に恵まれた首相も珍しい。1年前に自民党総裁選に挑んだ当時の安倍氏は、過去に政権を投げ出した十字架を背負う「終わった政治家」だった。だが党員票で石破(いしば)茂氏(56)=現幹事長=にダブルスコアで大敗しながら議員による決選投票で逆転勝利した。