【BOOKWARE】
佐川美術館の中にある楽吉左衛門の茶室には「守破離」の額がかかっている。心に滲みる書だ。茶の湯に「守・破・離」を導入したのは江戸千家の川上不白だった。武道の心得を採り入れたのだ。不白は「師が守の型を教え、弟子がこれを破り、両者がこれを離れてあらたに合わせあう」ということを理想とした。
2000年6月、ぼくはネット上にイシス編集学校を開設した。情報編集術の型を教え、その応用をさまざまに習得してもらう学校だ。このとき不白にヒントを得て、基本コースを「守」、応用コースを「破」、校長直伝コースを「離」と呼ぶことにした。モットーは「型を守って型に就き、型を破って型へ出て、型を離れて型を生む」というものだ。
守破離の各コースにはそれぞれ16週間をあてた。参加者は約10人ずつがネット上の教室に入り、次々に配信されるユニークなお題に応える。ぼくが腕にヨリをかけてつくったお題だ。それに回答すると、教室付きの師範代や師範たちの丁寧で軽妙な指南が受けられて、次に進める。そんな仕組みにした。真っ先に申し込んできたのは当時のホンダの常務さんだった。その後、32期で893教室が運営され、3万人の受講者がとびきりの編集力を身につけていった。