【本の話をしよう】
作家、よしもとばななさん(50)の1年ぶりの書き下ろし長編小説『鳥たち』が刊行された。ネーティブアメリカンの詩など、幻想的なイメージを織り交ぜながら、お互いにしか癒やせない孤独を抱えた若い2人の魂の救済を描いた。
アメリカ・アリゾナで共に育ち、現在は日本で暮らす大学生の「まこ」と、2つ年下でパン職人の「嵯峨」。それぞれの母親はかつて神秘主義者の高松という男性の思想に共鳴し、渡米。アリゾナで畑を作りながら、共同生活を送っていた。しかし、高松が病死すると母親たちは相次いで自殺。残されたまこと嵯峨は帰国し、身を寄せ合うように日本で暮らす-。
慌ただしい若者たち
20歳前後の若者にもかかわらず、あまりに重い過去を背負った2人。「子供と大人の中間ぐらいの若さでありながら、行き詰まったカップルを描きたいというのはずいぶん前からあって。いい意味ではなくて、『宿命的』な感じ。今の若いカップルって、すごく慌ただしい印象があるんです。サッと付き合って、サッと別れてしまう。そんなに慌てて、何があるの?と不思議なぐらい。まこと嵯峨は、時間だけはたっぷりある。だからこそ、いろいろ考えすぎて行き詰まってしまう。ある意味古風な若者たちですよね」