金融市場では中国の通貨「人民元」安が一段と進むとの観測が広がっている=2016年1月8日、韓国・首都ソウル(ロイター)【拡大】
中国の通貨人民元安が一段と進むとの観測が金融市場で広がっている。日銀のマイナス金利導入を受けた円安の進行につられ、元切り下げ圧力がさらに強まったためだ。景気のてこ入れが必要だが、過度の元安を回避したい中国当局は、通貨安を招く追加金融緩和に踏み切れずジレンマに直面している。
投資家に強い警告
「人民元を空売りする投機家は巨大な損失をこうむるだろう」-。国営通信新華社など中国メディアは最近の記事で、元売りを加速している一部の投機筋を激しい論調で牽制(けんせい)している。
発端となったのは、1月にスイスで開かれた世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)での米著名投資家ジョージ・ソロス氏の発言だ。中国経済が危機に陥る「ハードランディングが避けられない」と警告。ソロス氏はかつて英国などを相手に通貨売りを仕掛け、巨額の利益を得てきただけに、中国当局は火消しに躍起になっている。
中国の景気不安が高まり、年明け以降、株式市場の動揺が続いている。これに対し、中国人民銀行(中央銀行)は市場予想に反し、利下げや預金準備率の引き下げといった本格的な追加金融緩和には動いていない。