もちろん名言集には「勉強して発明するんだ。勉強しなくても 頭のよくなる機械を。」とか「一生けんめい のんびりしよう。」など、相変わらずののび太節も多々収録されている。けれど、てんとう虫コミックスを読むと、藤子・F・不二雄がこの作品にこめた多種多様なメッセージがじんわりと気持ちよく伝わってくるのだ。便利な道具を使いすぎた人の災いを面白おかしく描くだけではなく、励ましや叱咤、真理や勇気が『ドラえもん』という作品にはつまっているのだ。
ちなみにこの名言集は、装丁にもとことんこだわった。デザインをしてくれたセプテンバーカウボーイの吉岡秀典は、コデックス装で全ページがしっかり180度開くようにし、藤子・F・不二雄の絵が存分に楽しめる工夫を凝らす。仕上がりは、この時代にわざわざ紙で出版する意味を感じる素敵な存在感をまとうことができた。プレゼントブックにもぴったりなこの一冊、まずは本書からてんとう虫コミックスのメッセージを感じてもらい、いずれは漫画版で自分ならではの『ドラえもん』を見つけてもらえば幸いである。(ブックディレクター 幅允孝/SANKEI EXPRESS)
■はば・よしたか BACH(バッハ)代表。ブックディレクター。今回をもちましてこの連載も最終回。みなさん長らくありがとうございました。