MS「ウィンドウズ脱却」に難航 ノキア買収でスマホ反撃なるか

2013.9.4 12:15

 米マイクロソフト(MS)は9月3日、フィンランドのノキアの携帯端末事業を54億4000万ユーロ(約7140億円)で買収すると発表した。両社ともスマートフォン戦略の出遅れで苦境に陥っており、“瀬戸際コンビ”を結成し、先行する米アップルやグーグル、韓国サムスン電子を追撃する。

 先月(8月)23日に今後1年以内で退任すると表明したMSの最高経営責任者(CEO)、スティーブ・バルマー氏(57)は、ソフトウエアをメーカーに提供する従来のビジネスモデルから、自らハード機器を手掛けるスタイルへの転換を進めてきた。端末メーカーのノキアは、バルマー氏からのでっかい置き土産となる。

 特許使用料含め7140億円

 「未来に向けた大胆な一歩だ。革新的なスマホを多くの人々に届ける」

 バルマー氏は声明で、ノキア買収の意義を強調した。買収額には、ノキアが持つ特許使用料の16億5000万ユーロが含まれ、実質的にノキアのほぼ全事業を傘下に収める。2014年1~3月期の買収完了を目指す。

 ノキアの約3万2000人の従業員がMSに移籍するほか、MS出身のスティーブン・エロップCEO(49)も買収完了時に出戻る。MSは3日、バルマー氏の後任を選出する特別委員会を設立したが、10年にMSからノキアに移籍したエロップ氏は、後任有力候補としてすでに名前が挙がっていた。

 「ウィンドウズ」脱却苦戦

 MS創業者のビル・ゲイツ氏(57)から経営を引き継いだバルマー氏は、「ソフトウエアの会社から端末とサービスの会社」への転換を掲げ、市場を独占してきたパソコン向け基本ソフト(OS)「ウィンドウズ」に依存した体質からの脱却を目指してきた。

 しかし、成長市場の携帯・スマホ向けOS「ウィンドウズフォン」は大苦戦している。MSは11年に、同じようにスマホ対応が遅れ、携帯電話世界トップの座から転がり落ちたノキアと提携。ノキアは12年にウィンドウズフォンを搭載したスマホ「ルミア」を発売したが、売れ行きはさっぱり。

 米調査会社IDCによると、今年4~6月期のスマホの世界出荷台数は、サムスンを中心とする、グーグルのOS「アンドロイド」搭載陣営が1億8740万台でトップ。OSと端末のiPhoneを自ら手掛けるアップルが3120万台で続き、3位のウィンドウズフォン搭載端末は870万台で、シェア3.7%にとどまっている。

 MSは昨年10月に自社開発のタブレット端末「サーフェス」も投入したが、販売が低迷し値下げを余儀なくされるなど厳しい状況で、「ビジネスモデルの転換」は難航している。

 「お荷物」の懸念も

 OSでライバルのグーグルも昨年、端末メーカーの米モトローラ・モビリティを買収しており、ソフトとハードの融合はIT業界の潮流だ。バルマー氏は声明で、ノキア買収のメリットについて「端末の設計、生産管理、販売などの能力」の獲得を挙げた。

 バルマー氏は退任表明時に「これからのMSは新しい機器やサービスを提供する企業に変貌を遂げる。そのための新しいCEOが必要だ」と語っており、ノキア買収をすでに念頭に置いていたのは明白だ。

 だが、先行陣営に加え、中国などの格安スマホメーカーも台頭するなか、ノキアの巻き返しは簡単ではなく、バルマー路線を継ぐ後継者の“お荷物”となる懸念も拭えない。(SANKEI EXPRESS)

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