アイスランド紀行 大自然 氷が生きている

2013.11.15 12:08

 北極圏にあるアイスランドは、200を超える火山に、国土の約10%が氷で覆われる。「火と氷の島」と呼ばれ、その共存しがたい組み合わせが、アイスランドの大自然をより魅力的に彩る。

 観光客でにぎわう夏を避け、紅葉シーズンも終わりを迎えようとしている10月中旬に首都、レイキャビクに降り立つと、ややひんやりとした風が出迎えてくれた。

 車で東エリアへ。目指すはヨーロッパ最大の氷河「バトナヨークトル(バトナ氷河)」だ。アイスランドでも人気の滝トップ10に入る「セリャランフォス」や「スコガフォス」、珍しい黒い砂浜などを楽しみながら、どこまでも続く地平線に向かって車で走る。

 灰色がかった厚い雲を恨めしそうに見ていると、「秋から冬の定番だ」と現地ドライバーが教えてくれた。人口の半分が首都圏に住んでおり、時折、小さな集落を見る以外、行き交う車もほとんどない。

 バトナ氷河はアイスランド国土の約8%を占め、麓に広がる氷河湖ヨークルサルロンには崩れ落ちた氷河が氷山となって浮かんでいる。氷河湖は海につながり、流された氷山が波に洗われ、大小の氷塊が砂浜に打ち寄せる。氷が生きものと感じられる不思議な場所だ。

 ≪豪快な水柱 大地の胎動感じて≫

 「氷」の次は「火」。人気観光エリア、ゴールデン・サークルは、レイキャビクから東へ約30~120キロと比較的近く、自然と世界遺産の両方を楽しめるとあって、日帰り観光の「定番」となっている。

 地熱で大地から白い蒸気が上がり、車の中にいても硫黄のにおいが鼻をつく。アイスランドのシンボル的存在、ゲイシールは英語の「間欠泉(geyser)」の語源ともなっている。かつては70メートルの高さまで噴き上げていたゲイシール間欠泉も現在は活動を停止。代わって、すぐそばのストロックル間欠泉が観光客を楽しませていた。5~10分おきに噴出する様は迫力も規模も毎回異なり、予想のできない噴き上げの営みはいつまでも飽きないおもしろさがある。

 世界文化遺産である「シンクベトリル国立公園」では、ユーラシア大陸と北米大陸の両プレートの引っ張り合いでできた地球の「割れ目」を一望。火山活動とともに国土を1年に約2センチ拡大させ続けるアイスランドは、胎動する大地の国だ。

 そして、アイスランドの地熱を利用した、世界最大級の露天風呂ブルーラグーンで旅の疲れを癒やす。ミネラル豊富なミルキーブルーの温泉水は皮膚病に効くとされる塩温泉で、海水よりもしょっぱかった。

 旅の最後の日、レイキャビク市内で空を見上げると色鮮やかなオーロラが。刻一刻と姿を変える美しいオーロラダンスに、「アイスランドの魅力はまだまだあるよ」とささやかれた気がした。(産経デジタル 堀川亮子、写真も/SANKEI EXPRESS)

 ■アイスランド 面積は、10万3000平方キロメートルと北海道と四国をあわせたよりやや広い。アイスランド語が公用語だが、ほとんどの場所で英語、デンマーク語が通じる。通貨はアイルランドクローナ。時差は、日本時間からマイナス9時間。北極圏に接するが冬の一番寒い時期でもマイナス5度前後と穏やか。日本からの定期的な直行便はなく、ヨーロッパで乗り換えるのが一般的。コペンハーゲン経由で約15時間、ロンドン経由で約16時間など。夏期限定の直行便で約12時間。(いずれも乗り換え時間を含まず)

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