「チャイルド・スポンサー」ケニア訪問 民族・言語超えたつながり実感

2013.12.9 15:00

 砂塵をあげて疾走する四輪駆動車に揺られていると、ラリー・レースにでも参加しているような気分になってくる。ここは、ケニア南西部の乾燥しきったサバンナ。2013年8月、私は19人の支援者とともに、マサイの人たちの村を目指していた。

 アフリカ東部の国ケニアには、40以上の民族がいると言われる。マサイもその中の一つで人数的には少数派だ。にもかかわらず、知名度はとても高い。

 背の高い男性たちが赤い衣装でジャンプする「マサイの戦士」や、ビーズのアクセサリーで着飾った女性たちを思い浮かべる方が多いからだろう。

 そのマサイの村でワールド・ビジョン・ジャパン(WVJ)は、「チャイルド・スポンサーシップ」というプログラムに基づく支援活動を行っている。子供たちの健やかな成長を目指して、困難な状況にある地域の人々とともに衛生環境や教育環境を整える活動だ。この活動を支えるのは、日本に約5万3000人いる「チャイルド・スポンサー」と呼ばれる支援者。スポンサーになると、途上国に住む子供「チャイルド」が1人紹介され、文通などを通じて交流することができる。スポンサーの方が支援地域を訪問するツアーを毎年2、3回開催しているが、今回は、ケニアのツアーとなった。

 参加者は、年齢も人生経験も、スポンサーになった動機もさまざま。幼い娘さんが大病を患われたことをきっかけに支援を始めた方や、仕事や人生に疑問を感じている時にテレビ番組で途上国の現状を知り支援を始めた方など、一人一人の人生を反映した思いとストーリーがある。そのような女性11人、男性8人がツアーに参加した。

 今回のツアーでは、ケニアの2つの支援地域を訪問。マサイの子供たちは日本人を見るのが初めてで、最初は表情も硬く恥ずかしげにしていた。しかし、チャイルド・スポンサーと一緒に遊んだり楽しい時を過ごしていく中で、次第に打ち解け笑顔を見せてくれるようになった。スポンサーにとっては、民族や言語を超えた人と人とのつながりを実感できる時だ。この瞬間、長旅の疲れも吹っ飛ぶ。

 ≪子供たちの心に小さな種≫

 支援地域の人々は、水不足に苦しみ、衛生環境や医療施設、教育環境の不備に悩んでいる。しかし、少しでも現状を改善しようと懸命に努力し、成果をあげて、スポンサーへの感謝の言葉とともに、活動について誇らしく語った。

 それは、夫を亡くした10人ほどの女性グループによる養蜂を視察した時のこと。夫を亡くした女性たちの生活は厳しい。しかし、女性らは、養蜂活動により地域の平均所得より高い収入を得ることができるようになり、地域の15人の子供たちが中学校で学べるよう支援していた。「1人の女の子は大学まで進み、この地域の医者になるために勉強しています」と誇らしげに話した。弱い立場に追い込まれる可能性のある女性たちが、地域の子供たちを支援し、その子が将来地域に貢献することを夢みて学業に励んでいる。日本からの支援が実を結びつつあるような感銘を受けた。

 代表的なマサイ文化の一つに、美しいビーズのアクセサリーがある。実はビーズは昔からアフリカにあったものではなく、持ち込まれたビーズをマサイの人たちが自らの文化として取り込んだものだそうだ。今日では世界約90カ国にまで広がったWVの活動だが、それぞれの支援地域での活動が、人々にとって、そして子供たちにとって有益なものであると感じてもらえればと願っている。

 そして、マサイの人たちのビーズのように、養蜂をしていた婦人たちのように、自らの文化や生活に取り込んでもらえればと思う。それが小さな種となり、実がなり、実を栄養として子供たちが健やかに成長してくれればと願ってやまない。その子供たちが、未来の地球を作ってくれるのだから。

 チャイルド・スポンサーの方々の支援が、そのための小さな種になると信じている。そして、今回のツアーでも、子供たちの心にも小さな種がまかれたと信じている。

 このような小さな種を通して、私たちは国境を越えて民族を超えて、一緒に幸せになれそうな気がする。(文:ワールド・ビジョン・ジャパン 高木克巳/撮影:ワールド・ビジョン・ジャパン/SANKEI EXPRESS)

 ■たかぎ・かつみ 関西大卒業後、地質調査・井戸掘削会社や斜面保護・緑化会社に勤務、現場作業や施工管理などを担当。1992年渡英し、グラスゴー・バイブル・カレッジに留学。95年に帰国し、ワールド・ビジョン・ジャパンに入団。2000年度よりマーケティング部長。

 ■ワールド・ビジョン・ジャパン キリスト教精神に基づいて開発援助、緊急人道支援、アドボカシー(市民社会や政府への働きかけ)を行う国際NGO。子供たちとその家族、そして彼らが暮らす地域社会とともに、貧困と不公正を克服する活動を行っている。

 クリスマスまでにあと3500人の子供を救いたい。チャイルド・スポンサーを募集しています。www.worldvision.jp/campaign14e

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