セレブは雲の上の存在ではない 映画「ブリングリング」 ソフィア・コッポラ監督インタビュー

2013.12.13 13:30

 取材を受けていてもどこか上の空。ソフィア・コッポラ監督(42)は、スマートフォンをもぞもぞといじっては、何かを確認していた。ベネチア国際映画祭金獅子賞やアカデミー賞脚本賞を手中に収め、揺るぎない地位を築いた彼女も、プライベートではSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の恩恵を享受する現代人なのだろう-と思いきや、「ツイッターやフェイスブックはやらない」。コッポラ監督は意外なことを口にした。

 そんなコッポラ監督が監督、脚本、プロデュースを務めた新作「ブリングリング」は、ハリウッドスターや人気モデルのきらびやかな生活に憧れるティーンエージャーの少年少女たち(エマ・ワトソンら)が主人公だ。SNSを駆使してセレブたちの自宅を調べ上げ、行動を逐一把握したうえで、パリス・ヒルトン(32)やリンジー・ローハン(27)らの留守宅へ侵入。豪勢な邸宅内ではしゃいだり、高級ブランド品を盗んだりを繰り返し、揚げ句の果てにパーティーまで開いてしまう。被害総額はなんと3億円。その奔放な言動から「お騒がせセレブ」として知られるヒルトンやローハンも顔負けの狼藉(ろうぜき)ぶりなのだ。

 友達の日記と同様

 題材はロサンゼルス郊外で実際に起きた事件で、ヒルトンもローハンも実名で登場する。自らも押しも押されもせぬセレブリティーで、ファッションアイコンとしても注目を浴びてきたコッポラ監督にとっても、気になる事件だったようだ。タイトルの「ブリングリング」はキラキラしたやつらという意味だが、実際に罪を犯した彼女たちに取材して、痛切に感じたのは「彼女たちにとってセレブたちはかつてほど雲の上の存在ではなくなっている」ということ。朝食のメニューといった、取るに足らない、しかしごく私的なことまでセレブが気軽に世界中に向けてツイートするような時代となった今、「彼女たちは友達の日記を読むぐらいの感覚でいるのでしょう」と推し量る。

 ポップな映像と音楽できらびやかに彩られ、コッポラ監督が「コンテンポラリーな世界観」と表現する空気をまとった本作は、10月の東京国際映画祭のジャパンプレミアで上映された。チケットはわずか6分で完売したという。ちなみに冒頭のスマートフォンでの確認のお目当ては、一緒に来日した家族とのたわいないやり取りだったとか…。12月14日、全国公開。(文:高橋天地(たかくに)/撮影:荻窪佳(けい)/SANKEI EXPRESS)

 ■Sofia Coppola 1971年5月14日、米ニューヨーク生まれ。2作目の監督作「ロスト・イン・トランスレーション」で米アカデミー賞脚本賞を受賞。99年にスパイク・ジョーンズ監督(44)と結婚したが、2003年に離婚。「ゴッドファーザー パート3」で女優デビュー。写真家、デザイナーとしても活躍。父は映画監督のフランシス・フォード・コッポラ(74)。

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