【取材最前線】着任から5日と5カ月の落差

2013.12.14 08:15

 ケネディ元大統領の長女であるキャロライン・ケネディ駐日米大使が11月15日に着任した。さっそく東日本大震災の被災地や被爆地の長崎を訪問するなど精力的に活動している。

 日本政府の歓迎ぶりも、ひと味違った。安倍晋三首相は着任から5日後の11月20日、首相公邸にケネディ氏を招待した。首相は「大使の来日を機に、さらに日米関係を発展させていきたい」と歓迎の言葉を述べると、ケネディ氏も「ともに仕事ができることを大変光栄に思う」と応じた。

 昼食をとりながらの懇談には、稲田朋美行政改革担当相、森雅子少子化担当相の女性2閣僚も同席し、女性の社会進出などについて話に花が咲いたという。ある政府高官が「私も会いたかった…」と漏らすほどの人気ぶりだ。

 ケネディ氏が大歓迎を受けた1週間前に官邸で初めて首相と面会した大使がいた。韓国の李丙●(=王へんに其、イ・ビョンギ)駐日大使だ。

 李氏は表敬訪問後、記者団に「韓日両国の安定化のためにともに頑張りましょうという話をした」と語った。その次の言葉に耳を疑った。

 「『早いうちに過去を整理して未来に向かって進めていく指導者になっていただきたい』ということを私から申し上げた」

 「過去を整理」とは、先の大戦に関し「歴史認識を改め、韓国に謝罪せよ」との意味だろう。日本人の常識からすると、初面会の一国の首相に対してふさわしい言葉とは思えない。

 李大使の着任は6月4日だった。首相への表敬は11月13日。実に5カ月以上もかかった。

 李氏の表敬訪問の翌14日、日韓両国の政財界要人で構成する「日韓・韓日協力委員会」の韓国側メンバーが首相を表敬訪問し、李氏も同席した。直前の李氏の首相表敬について、ある外交筋は「元副首相ら韓国政財界の大物が官邸で首相と会うのに、大使が一度も会ったことがなかったため、急遽(きゅうきょ)面会を申し入れたようだ」と説明する。

 そうして発したのが先ほどの言葉だった。首相が繰り返し「対話のドアは常にオープンだ」と首脳会談を呼びかけても、朴槿恵(パク・クネ)大統領は応じないどころか、反日姿勢を一層強めるばかり。着任から首相表敬までの5日と5カ月の落差は、現在の日米、日韓関係を象徴している。(酒井充/SANKEI EXPRESS)

閉じる