【軍事情勢】反日で従北、救いがたい韓国 呑気な情勢ではない

2014.1.19 09:30

 北朝鮮系細胞が韓国各界で増殖し、内部崩壊させようとしている。反日に苦しむ日本としては「ザマァ見ろ」と言いたいが、そうもいかない。北朝鮮に呑み込まれた、或(ある)いは中国傀儡(かいらい)の、半島統一国家出現は日本存亡にも関わる。「特定秘密保護法反対」などと利敵行為を叫び、拳を突き上げている呑気(のんき)な情勢ではないのだ。もっともデモ扇動者が、半島有事で呼応する同志・同胞なら話は別…。

 地下革命組織RO

 2012年12月、北朝鮮が「人工衛星」打ち上げ用と称する弾道ミサイルを発射する直前に出た、韓国従北左翼政党・統合進歩党発の論評には仰天した。曰く(いわ)-

 「韓国の(衛星打ち上げ用ロケット)『羅老(ナロ)』と変わらない。問題視する必要はない」

 北への従属を熱望する勢力を、韓国保守派は最近「従北」と呼ぶ。統進党も所属国会議員が「北朝鮮が攻撃しても対抗してはならない」(金在妍(キム・ジェヨン)氏)、「従北より従米が問題。韓国々歌・愛国歌は国歌ではない」(李石基(イ・ソクキ)被告=内乱陰謀罪などで起訴)と放言して憚(はばか)らぬ。

 金氏の発言は、1990年代に「核兵器を有するソ連に日本は敵わない。従って非武装中立を目指し、もしソ連が侵略してくれば白旗と赤旗を掲げて降伏すれば、被害は大きくならない」といった主旨の“思想”を披露した日本人教授に通じる。

 李被告の方は、日本の多くのメディアや日教組の論調にも似る。韓国・全国教職員労働組合の“歴史観”によると、韓国は「米帝が親日派を利用して創った」。その上でこう断じる。一部は当たらずとも遠からずで、痛いところを突く。

 「南朝鮮初代大統領の李承晩(イ・スンマン、1875~1965年)は日本と戦わなかった。北朝鮮初代国家主席の金日成(キム・イルソン、1912~94年)は独立戦争の英雄で、民族史の正統後継は南ではなく北朝鮮」

 国家・民族・文化をジワジワと貶(おとし)め、まずは空虚な抜け殻(無機質)化を謀る点で、日韓極左の非公然部隊の謀略には共通部分もある。しかし、韓国の公然部隊は端(はな)から武力で国家を転覆させ、北朝鮮に引き取ってもらうべく策謀しており、日本の公然部隊のように、便宜的に狂信性を抑えはしない。

 李被告らは地下革命組織RO(Revolutionary Organization)の戦士。朝鮮半島有事にあたり、韓国軍の弾薬庫を急襲し武器を奪い、政府機関を占拠するなど、具体的作戦の立案が判明し、13年9月に逮捕された。5月に「革命が近付いている。通信・石油備蓄の施設や鉄道を襲う準備をせよ」と、130人ものROメンバーに檄(げき)を飛ばした容疑が逮捕に結び付いた。

 麗水・順天事件の教訓

 日本の国会にも、代々木=共産党系はじめ、非合法の反代々木=新左翼系の国会議員は在籍する。だが、韓国の場合、議員の1割=30人ほどが国家保安(スパイ防止)法容疑で逮捕されても転向せず、堂々と政治活動を繰り広げる。ROには李被告以外に国会議員2人が所属してもいる。

 朝鮮戦争(1950~53年)は終戦ではなく休戦中に過ぎぬのに、従北勢力を野放しにする緊張感を欠いた大多数の韓国国民の怠慢は目に余る。それは、憲法改正や集団的自衛権の解釈変更、特定秘密保護法成立に反対する国民を抱える日本の、将来の無残な姿かもしれない。

 ただ、北朝鮮の支援を受けた韓国系親北勢力による騒擾(そうじょう)・内乱は、共産主義への警戒感が強い米軍政期や朝鮮戦争前の李承晩政権時から続発していた。中でも、中佐・少佐級まで含む国軍将兵の反乱《麗水(ヨス)・順天(スンチョン)事件=1948年》は、韓国軍に部隊規模で浸透できる細胞・シンパを抱える、北朝鮮の高度な隠密性を証明した。最初に決起したのは、別の騒擾鎮圧に向け出動命令を受けた連隊で、2000人中40人が南朝鮮労働党の細胞だった。細胞が決起を促すと、オルグ済みのシンパが歓呼・賛同し、反対者を迷いもなく射殺すると連隊自体が反乱軍と化し、他の反乱部隊と合流。この連隊鎮圧に出た部隊も指揮官射殺後、反乱軍に引き込まれた。

 1000人もの軍人が逮捕され、内152人が軍法会議で死刑となった。危険分子として強制除隊を強いられた将兵は4700人で、当時の韓国軍の1割に迫る。死者も無辜(むこ)の民間人を含め数千人に達した。9日間でほぼ制圧したが、一部反乱軍は山中でゲリラ戦を継続。完全制圧は10年後で、朝鮮戦争休戦後4年もたっていた。北朝鮮のゲリラ戦教育には強い警戒が必要なのだ。

 細胞培養期間だった10年

 さらに80年代にかけ、北と韓国内の細胞は親北派エリートを育て、労働組合はじめ政治/法曹/教育・大学/メディア/官僚/経済の各界に埋め込んでいく。特に、法曹界には優秀なゲバ学生を資金援助し、裁判官や弁護士、検事に仕立て上げた。今後も日本政府・企業に対し、歪(ゆが)んだ判決が続く可能性は高い。

 その後の、親北勢力に甘い(というより、自ら韓国を北朝鮮に差し出そうとした観測もある)金大中(キム・デジュン)→盧武鉉(ノ・ムヒョン)の2政権10年の間、李被告も含め公安事件犯3500人を特赦で釈放。細胞の格好の培養期間となった。当然、金・盧両元大統領の路線を受け継ぐ野党第一党・民主党にも国家保安法適用の逮捕者が20人ほどいる。

 朴槿恵(パク・クネ)大統領(61)も統進党解散や全教組解体→歴史教科書修正に向け、果敢に取り組んではいる。従北勢力が仕掛ける情報機関・国家情報院解体の陰謀も阻止せんと必死だ。

 なるほど、と思う。国情院は、金大中政権が前身の国家安全企画部を廃止した代わりに、大幅縮小・弱体化改編され生まれた組織。前政権の2011年、金正日(キム・ジョンイル)総書記(1941~2011年)死亡は、公式報道直前まで兆候すら把握できなかった。これに対し、朴大統領は人的情報源構築や通信傍受など態勢強化を命じ、張成沢(チャン・ソンテク)前国防副委員長(1946~2013年)の粛清事変では、側近の公開処刑情報を含め早期に情勢を掴(つか)んだ。呑み込み易(やす)い弱い韓国誕生こそ、従北勢力の悲願なのである。

 ところで、大統領の父・朴正煕(パク・チョンヒ)元大統領(1917~79年)は大統領が生まれる前の韓国軍少佐時代、前述した《麗水・順天事件》で高位の細胞として逮捕され、死刑宣告を受けたが、捜査協力し刑を免れた。

 死刑が執行されていれば、父娘「二人の朴大統領」は実現してはいない。(政治部専門委員 野口裕之/SANKEI EXPRESS)

閉じる