存在意義失った「iPod」 クックCEOが終焉示唆、故ジョブズ氏も予言

2014.1.31 08:30

 米アップルが2001年に世に送り出したデジタル携帯音楽プレーヤー「iPod(アイポッド)」が、近く市場から姿を消すことになりそうだ。音楽も聴ける「iPhone(アイフォーン)」に取って代わられ、販売が激減しているためで、最高経営責任者(CEO)のティム・クック氏(53)が投資家向け説明会で生産・販売の中止を示唆した。

 アップル躍進の原点ともいえる革新的な製品だったが、11年に56歳で亡くなったカリスマ創業者スティーブ・ジョブズ氏も終焉(しゅうえん)を予言していた。アップルは“ジョブズ後”に革新的な製品を生み出せず試練を迎えている。

 「アイポッドのビジネスに終わりが近づいていることは、わが社の社員なら全員が知っていると思う」

 英BBC放送は、クック氏が今月27日に行われた説明会でこう発言したと伝えた。

 同じ日に発表されたアップルの2013年10~12月期決算によると、この期のアイポッドの販売台数は前年同期のほぼ半分の約600万台で、売上高も半分の9億7300万ドル(約973億円)にまで落ち込んだ。

 アップルの売上高全体に占める割合はわずか2%にとどまっている。一方で、アイフォーンは前年同期比7%増の5100万台、タブレット端末の「iPad(アイパッド)」も2100万台と、いずれも四半期としては過去最高を記録した。

 世界的企業に躍進

 「ほとんど趣味のレベルだ」。米IT系ニュースサイト、ザ・バージが、こう酷評するように、アイポッドはすでに存在意義を失っている。

 ただ、アップルにとってアイポッドは記念すべき特別な製品だ。01年に400ドルで初代が発売され、03年には音楽配信サイト「アイチューンズストア」がスタート。

 05年に99ドルの「アイポッド・シャッフル」を売り出し、その後も超小型の「ナノ」やタッチパネルを採用した「タッチ」などの新機種を次々に投入。ピーク時の08年には全世界で2200万台が売れた。

 楽曲データをデジタル圧縮し、いつでもどこでも好きな音楽を聴ける新しいスタイルを提案。レコード会社が支配していた音楽業界を激変させると同時に、携帯音楽プレーヤー「ウォークマン」で一世を風靡(ふうび)していたソニーのお株を奪った。

 それまで「マッキントッシュ」がコアなファンに支持されるマニアックなパソコンメーカーにすぎなかったアップルは、世界を代表するIT企業に躍進。アイポッドの成功がなければ、アイフォーン(07年)やアイパッド(10年)も生まれなかった。株価は2012年に一時700ドル台の最高値を付け、アイポッド発売前から約40倍に値上がりした。

 低迷続く株価

 だが、現在のアップルは“ジョブズ氏の遺産”で食いつないでいるのが実情だ。株価も29日に一時500ドルを割り込むなど低迷が続く。

 「クック氏は投資家に見捨てられたくないなら、革新的な新製品を投入すべきだ」。アップルファン向けサイト「カルト・オブ・マック」のライター、アレックス・ヒース氏はBBCで、手厳しく注文を付けた。

 07年にアイフォーンを発売した際、ジョブズ氏はこう言った。「これはわれわれが作った過去最高のアイポッドです」。

 その予言通り、アイポッドは役目を終えようとしている。(SANKEI EXPRESS)

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