今世紀末 日本の砂浜、85%消える? 温暖化… 環境省研究チーム予測

2014.3.18 10:35

 地球温暖化の影響で、今世紀末の日本の年間の洪水被害額が、最大で20世紀末の3倍以上の約6800億円に達し、砂浜は全国の85%が消失するなど、幅広く悪影響が出ることを予測した報告書を環境省の研究チームが3月17日、発表した。年平均気温は20世紀末に比べて3.5~6.4度上昇するとしている。

 「暑さで死亡」2倍

 今世紀半ばには暑さが原因で死亡する人が全国的に2倍以上に増え、亜熱帯の果樹が首都圏で栽培できるようになるなど、健康や農業にも影響が出る。会見で研究チームを率いる三村信男・茨城大教授は「影響は温暖化がどの程度進行するかによって左右される。温室効果ガス排出の抑制が必要だ」と強調。一方で「気温上昇を低く抑えられるとしても現在を上回る悪影響が考えられる」とも述べ、被害軽減策の重要性を訴えた。報告書は都道府県ごとに分野別の影響を初めて示した。自治体の政策作りに生かされる。

 チームは、4種類のコンピューターモデルによる最新の気候変動予測を活用し、水害や食料などの分野ごとにどのような影響が出るか計算して20世紀末と比較した。この結果、今のペースで温室効果ガスの濃度が上がる最悪ケースでは、今世紀末の年平均気温は、23道府県で5度以上上昇する可能性が高いことが分かった。

 ハイマツ絶滅危機

 強い雨の頻度が増すため、今世紀末の洪水被害額は、特に東北、中部、近畿、四国地方で2倍を超える可能性が高い。ただ、堤防を高くしたり、ダムの容量を大きくしたりするなど対策を取った場合は、被害額は大幅に減少した。海面上昇は約60センチと予測され、高潮被害額は最大で年間約2600億円増加する。

 現在、約5万平方キロに広がる高山の針葉樹ハイマツが生育できる場所は、約500平方キロに激減し、絶滅リスクが高まる。全国のコメの収量は大きく変化しないが、品質の悪いコメの割合が高まる。影響は地域ごとに大きく異なるという。

 ≪平均気温6.4度上昇 海面60センチ上昇≫

 このまま地球温暖化が進むと、今世紀末の日本の年平均気温は、20世紀末に比べて最大6.4度上がって約20度になり、海面は約60センチ上昇する-。環境省研究チームの報告書は、温暖化によって変わる日本の今世紀末の姿を記した。

 海面は、今世紀半ばに41~44センチ、今世紀末には60~63センチ上昇する。これに伴って、日本の砂浜の83~85%が消失する。降水量は、今世紀末には9~16%増えて年間1805~1934ミリになると予測。河川流量は1.1~1.2倍になる。

 報告書は、温室効果ガスの大気中濃度を3種類想定して4つのコンピューターモデルで気候を予測。現状の排出ペースが続いた場合に相当する、最も濃度が高い最悪ケースで、日本の年平均気温は、20世紀末に比べて今世紀半ばに1.0~2.9度、今世紀末には3.5~6.4度上昇するとした。(SANKEI EXPRESS)

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