周囲から支えられていることに気付きます 舞台「今度は愛妻家」 葛山信吾さんインタビュー

2014.3.30 16:05

 偏食で野菜嫌いだった葛山信吾(41)は、ある人のおかげでそれを克服したという。

 「結婚後、妻が食べやすいように工夫してくれて、食べられるものが増えました。日々、当たり前に食べているけれど、いろんな思いが込められているのかも…とこの芝居で気づいて。どうもすみません、って思いました」

 普段はつい忘れがちな妻(あるいは夫)への愛や感謝。葛山は舞台「今度は愛妻家」(作・中谷まゆみ、演出・板垣恭一)の稽古の日々で、妻のおかげに思いが至り、「最近、妻にはちょっと優しくなってるかもしれない」。洗濯したてという感じの稽古着を着て、照れたように言った。

 奥さんあっての僕です

 葛山演じる元売れっ子カメラマン、北見もブロッコリーが嫌い。皿に残すと、健康オタクの妻さくら(瀬奈じゅん)が「体にいいんだから」と無理に食べさせられる。若い女性と浮気もしたい。ああ、妻がいなければ…。そんなふうに思っていた北見だが、あることを機に、妻への愛に気づかされる。日常に埋もれた夫婦愛をじわりとあぶり出す本作は2002年に初演され、10年に映画にもなった。

 6年付き合い、結婚6年目。お互い空気のような存在と化した夫婦によくあるため息交じりの会話を、葛山は瀬奈とテンポよく見せる。中谷脚本、板垣演出で、瀬奈共演という座組は舞台「ビューティフル・サンデイ」に続き2度目。

 「中谷さんの脚本は、お互い相手をどう思って共存しているのか、気持ちのやりとりがきちんと描かれていて、いつも魅力的です。瀬奈さんは明るい方でやりやすい。板垣さんは初演版も演出され、作品への思いがひとしおだと思いますが、僕たちのアイデアも柔軟に取り入れてくださいます。楽しい現場です」

 北見が妻への愛に気づく過程には、混乱や痛みも伴う。葛山は「すごく難しい役です」と言い、「頭で考えてもパニックになりそうになる。その僕の混乱や考えている状態が、北見の気持ちとしても正解なんだ、と言い聞かせてやっています」。

 人は空気がないと生きられないが、空気のような存在ほど、本当はかけがえがないのかもしれない。

 「普段当たり前に周りにいると、そのつながりはずっと続くと思って見過ごしてしまうんですよね。この作品が、周りにいる人の大切さ、いろんな人に支えられて生きているという事実を再確認する機会になるかもしれません」。そのあとに、ぽつりと「奥さんあっての僕なんです」と言ったのが印象に残った。(文:津川綾子/撮影:大橋純人/SANKEI EXPRESS)

 ■かつらやま・しんご 1972年4月7日生まれ。三重県出身。90年、ジュノン・スーパーボーイ・コンテストでグランプリ受賞。91年ドラマ「ヴァンサンカン・結婚」で俳優デビュー。「仮面ライダークウガ」「真珠夫人」などドラマで一躍人気に。2002年に女優の細川直美(39)と結婚。舞台出演作は「アンナ・カレーニナ」「宝塚BOYS」「英国王のスピーチ」など多数。6月、舞台「細雪」(水谷幹夫演出)に出演する。

 【ガイド】

 4月4~20日 東京芸術劇場シアターウエスト(東京)。東宝芸能(電)03・3504・2011。4月24日 青少年文化センターアートピアホール(名古屋)。キョードー東海(電)052・972・7466。4月26、27日 兵庫県立芸術文化センター阪急中ホール(兵庫)。劇場(電)0798・68・0255

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