「真の普通選挙を」51万人抗議  香港民主派、反中デモ 511人拘束

2014.7.3 00:04

 香港の国際金融センター、セントラル(中環)地区で7月2日未明、香港の選挙制度に対する中国政府の政治介入に反対して座り込みを続けていた市民や学生ら約1000人のうち、民主派のリーダーらが警官隊によって強制排除された。香港警察によると、拘束者は511人に上った。今回の座り込みによって香港中心部では数時間にわたり交通がまひし、民主派が計画している中心部の大規模占拠に現実味が出てきた。実行されれば経済的にも政治的にも多大な影響が出ることは確実で、占拠を回避するため中国政府が民主派に歩み寄るのか、それとも強硬路線を貫くのか、香港情勢は厳しさを増してきた。

 「不公正さ世界に」

 2日の香港主要紙(電子版)によると、中国返還から17年を迎えた1日午後、香港では主催者発表で民主派による過去最大規模の51万人(警察発表は9万8600人)が反中デモを実施。セントラル地区はその終点だった。

 参加者は、2017年に行われる香港トップを決める行政長官選の選挙制度改革で、中国政府が親中派しか立候補できない仕組みを構築しようと介入していることに強く反発。夜を徹して「真の普通選挙を要求する」などとシュプレヒコールを上げ、約17時間半にわたって抗議行動を続けた。

 共同通信によると、強制排除の際、民主派団体「香港市民愛国民主運動支援連合会」の李卓人代表も警官隊に連行された。参加した大学生、張家恩さん(21)は「デモをしただけでは何も変わらない。学生は行動しなければいけない。逮捕されることで、香港政府の不公正さを世界に示したい」と訴えた。

 大規模占拠「演習」

 民主派は、米ニューヨークで3年前に起きた抗議活動「ウォール街を占拠せよ」にならい、中国の介入で選挙制度改革が後退した場合、「大群衆によるセントラル占拠」を呼びかけており、2日未明の座り込みは“予行演習”とされた。

 香港当局や金融界などは、「もし占拠が実行され、金融機能がまひすれば、経済損失は最大400億香港ドル(約5300億円)に上る」などと試算して警戒を強めていた。

 1日のデモには台湾で今年3月に立法院(議会)を占拠した台湾の学生グループらも参加した。政治圧力を強める北京の中国政府に対し、台湾と香港の民主派が連携する姿勢も示している。

 圧力強める中国政府

 一方、中国政府は6月10日に発表した初の「一国二制度白書」で、「香港に対し全面的な管轄統治権を持つ」と圧力を強め、一部には「香港で混乱が生じた場合、中国は戒厳令を敷くことも辞さない」と強硬論も飛び出している。

 中国政府が恐れているのは、民主化の波が中国本土にまで波及することだ。それだけに、民主派が行政長官に当選する可能性のある選挙制度は、決して受け入れられない。

 香港の地元紙は「香港は米政府によって反中国の足掛かりとして利用され、そこから革命の波が中国本土に広がっていくかもしれない」と指摘。人民日報(海外版)も、「米国は香港の政治に影響を及ぼす最大の外部要因になっている」と、米国を“黒幕”に仕立て上げた。

 中国外務省の洪磊(こう・らい)報道官は2日の記者会見で、香港の大規模な反中デモについて「中国の内政問題だ。いかなる国の干渉も許さない」と述べた。その言葉からは、国際社会が期待する形での「普通選挙」を実施する意思は伝わってこない。(SANKEI EXPRESS)

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