ネットから消えた“黄金のカエル” 江沢民氏似で盛り上がり…当局検閲

2014.7.25 10:08

 北京の公園に登場した「黄金のヒキガエル」と名付けられた巨大なオブジェについて、中国ネット市民が、江沢民元国家主席(87)に似ていると書き込み、盛り上がりをみせたところ、当局のネット検閲によってカエルの記事がたちどころに削除される事態となった。

 中国では昨年(2013年)、オランダ人芸術家の作品である巨大な「黄色いアヒル」が大人気となり、各地に偽アヒルが氾濫。今回のカエルもモチーフを変えただけの模倣作品なのは明らか。何でもパクリ放題の一方で、ネット上では表現の自由が許されない中国の姿を浮き彫りにしている。

 「アヒル」パクった?

 「黄金のヒキガエル」は7月19日から、桜の名所で知られる北京の玉淵潭(ぎょく・えんだん)公園の池に浮かべられ、展示されている。フランス通信(AFP)や英紙デーリー・テレグラフ(電子版)などによると、浙江省寧波市(せっこうしょうねいはし)出身の芸術家ゴウ・ヨンヤオ氏が製作した。

 大きさは高さ22メートル、幅34メートルで、空気を入れてふくらませるラバー製。中国で、富や金運をもたらすとの言い伝えがある「黄金のカエル」を題材にしているという。

 もっとも、このカエルは、オランダ人芸術家、フロレンティン・ホフマン氏(37)が製作した、平和を訴えるために世界各地を回っているラバー製の巨大な「黄色いアヒル」にそっくり。アヒルは昨年(2013年)、香港のビクトリア・ハーバーで展示されたが、杭州や武漢、天津など各地に偽物が登場し、世界から失笑を買った。

 今回のカエルも芸術作品としての創造性を欠いているが、中国国営の新華社通信は当初、「アジア最大のヒキガエルのアート出現!」と、得意満面で報じていた。

 微博など大反響

 ところが、ネット上で予想外の反響が起きた。中国版ツイッター「微博(ウェイボ)」などに、アヒルではなく、国家指導者だった江氏にそっくりだという投稿が相次いだのだ。

 ネット市民たちは、ヒキガエルのオブジェと江氏の写真を並べて比べたり、ヒキガエルの写真を加工し江氏のトレードマークである黒縁の丸いメガネをかけさせたりとやりたい放題。

 これに慌てた政府当局は、すぐさま新華社のサイトからカエルの記事を削除したほか、他のサイトでも関連記事の削除に乗り出した。新華社のサイトで検索すると、「アクセスされた記事は削除されたか期限切れです」と表示される。

 ただ、AFPによると、玉淵潭公園側は、オブジェそのものを撤去する考えはないという。

 過去にも検索不能

 江氏をめぐっては2011年に重病説が飛び交った際、微博で「江沢民」や「心筋梗塞」といった言葉が検索不能になった。

 一方、黄色いアヒルについても昨年(2013年)、天安門事件で広場に向かう戦車をアヒルに置き換えた風刺写真がネット上で出回り、「黄色いアヒル」という言葉が検索できなくなった。

 中国当局は国内のネットを厳重な監視下に置き、体制を批判するなどの不都合な書き込みや投稿写真をチェック。削除したり、検索不能にしたりするネット検閲態勢を敷いている。監視のための「世論分析官」と呼ばれる要員は200万人に上るとされている。

 中国では、「自由な表現が許されないから、パクリが横行する」という相関関係にあるのかもしれない。(SANKEI EXPRESS)

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