ルビオ氏の提言 「外交は国内政策」

2014.9.24 10:00

 【アメリカを読む】

 バラク・オバマ米大統領(53)が最初の大統領選への出馬を検討していることを明らかにしたのは2006年10月のことだ。08年大統領選の2年前、中間選挙の最中だった。16年の次期大統領選から逆算するとちょうどこの秋に当たる。出馬を検討している民主党の有力候補、ヒラリー・クリントン前国務長官(66)は年明けに最終決断すると表明した。11月の中間選挙後をにらみ、「ポスト・オバマ」たちの動きが活発化している。

 バーバリ戦争の教訓

 共和党の有力な大統領候補の一人と目されるマルコ・ルビオ上院議員(43)も17日、ワシントンのホテルで安全保障をテーマに演説した。イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」に米国人2人が斬首殺害されたことからオバマ政権の外交・安保政策が争点になっている。ルビオ氏の演説の基調も「オバマ批判」だったが、米国が世界で果たすべき役割を明確にする建設的な提言だった。

 「米国はバーバリ戦争から重い教訓を得た。わが国が世界から孤立していないがゆえに、いかなる場所で発生する脅威にも備えておかなければならないということだ」

 ルビオ氏は1801~05年、15年の2度にわたり米国が北アフリカで戦ったバーバリ戦争を、海軍力の不足が海賊による災厄を招いた例として挙げた。初代大統領ジョージ・ワシントン(1732~99年)の「戦争に備えることは、平和を守る最も有効な手段の一つだ」との格言も引き、ルビオ氏は「だが、議会は同意しなかった。国内問題だけに焦点を合わせ、ワシントンの願いに反して海軍予算を削減してしまった」と指摘した。

 軍備拡充で中国を警戒

 オバマ政権によるイラク、アフガニスタンの2つの戦争からの撤退戦略、国防費の削減などにより「内向き」になる米国に警鐘を鳴らしたのだ。

 保守系草の根運動「ティーパーティー(茶会)」が躍進した10年中間選挙で初当選したルビオ氏は、南部フロリダ州選出でキューバ移民の息子だ。12年大統領選でミット・ロムニー前マサチューセッツ州知事(67)とコンビを組む副大統領候補として取り沙汰され、大統領選の帰趨(きすう)を決めるヒスパニック系の支持が見込めるとの目算から、13年2月にはオバマ氏の一般教書演説への反対演説にも抜擢(ばってき)された。上院では外交委員会東アジア太平洋小委員会で筆頭委員を務め、今年1月には訪日して安倍晋三首相(60)と会談した。ルビオ氏は17日の演説でも、アジアにおける安全保障を重視する姿勢を鮮明にした。

 「敵は米国の戦力が後退していることに気付いている。特に中国は即応性や精強性に関する米国との格差を埋めようと全力疾走しており、われわれが優勢を維持するにはそれ以上に速く走らなければならない」

 具体的には、(1)空母11隻体制を12隻に増強し、太平洋に常時2隻を展開(2)中国を優位に立たせないよう毎年2隻のバージニア級原潜を建造(3)中露が第5世代戦闘機の開発を進めていることからF35戦闘機の製造計画を堅持(4)情報収集能力の向上-などを提案した。

 深まる「二極化」

 米上院は18日の本会議で、シリアでイスラム国と戦う反体制派勢力を軍事支援するための予算案を可決した。

 共和党のランド・ポール(51)、テッド・クルーズ(43)、民主党のエリザベス・ウォーレン(65)といった、16年大統領選への出馬が取り沙汰される上院議員が反対する中、ルビオ氏は賛成した。

 「シリアで起きていることは米国の国益に関わると言い続けてきたが、わが党もホワイトハウスも多くの人が私の見解に同意しなかった」。ルビオ氏は議場での演説でこう語った。

 米国社会の「二極化」がいわれて久しい。共和党支持者はより保守的、民主党支持者はよりリベラルな価値観を重視しているといわれ、両党は差別化を図りやすい移民制度改革、医療保険制度改革(オバマケア)などの社会政策に焦点を当てがちになる。ルビオ氏も移民制度改革を推進しようとしたとして保守派の批判を浴びた。

 「外交政策は国内政策」。こう述べて国際情勢の安定が国益に直結すると説くルビオ氏。国防予算の拡充を求めるその主張が受け入れられるかは、米国がこれから内向きになるか否かを占う指標となるだけに、注目しておきたい。(ワシントン支局 加納宏幸(かのう・ひろゆき)/SANKEI EXPRESS)

閉じる