「暗殺」映画 公開に強力援軍 グーグル、MS「表現の自由、勝利確実に」

2014.12.26 00:02

 米映画会社ソニー・ピクチャーズエンタテインメント(SPE)は24日、北朝鮮の金正恩第1書記の暗殺を題材としたコメディー映画「ザ・インタビュー」のインターネット配信を米国で始めた。北朝鮮のハッカーからとみられる映画館へのテロ予告で公開中止に追い込まれたが、この決定をバラク・オバマ大統領(53)が「間違いだった」と批判。SPEが公開先を探した結果、グーグルとマイクロソフト(MS)が協力を申し出、動画配信サイトでの公開を実現させた。25日には映画館での公開もスタート。コメディー映画の公開は、自由と民主主義を国是とする米国の誇りを懸けた問題にまでエスカレートした。

 アップルは拒否

 ネット上での公開は米太平洋時間の24日午前10時から、グーグルの配信サイト「グーグルプレイ」や傘下の動画共有サイト「ユーチューブ」、MSの家庭用ゲーム機「Xbox」を使う配信サービス「Xbox Video」、そして専用サイトで開始。レンタルが5.99ドル(約720円)、購入が14.99ドル(約1800円)で、当面は米国内のみのサービスとなる。

 SPEのマイケル・リントン会長兼最高経営責任者(CEO、54)の声明などによると、SPEはこの映画の公開中止を発表した今月17日、映画館以外で公開する可能性を探り、水面下でネット系企業やメディア系企業に協力を要請した。しかし、ケーブルテレビ会社や衛星テレビ会社は軒並み拒否。アップルの映画音楽の配信サイト「iTunes(アイチューンズ)」を使った公開もアップル側の拒否で実現しなかった。

 そんななか、SPEの申し出を快諾したのがグーグルとMSだった。グーグルのデビッド・ドラモンド最高法務責任者は自身のブログへの投稿で「すべての問題を議論した後、ソニーとグーグルは、この件を傍観し、他国の言論の自由の限界を(勝手に)決めようとする一握りの人間を許さないとの考えで合意した。たとえその内容がつまらなかったとしても」と説明した。

 MSのブラッド・スミス法務顧問兼業務執行副社長もブログ投稿で「誰かの権利に対するサイバー攻撃は、全ての人の権利に対するサイバー攻撃と同じだ。熟慮の結果、表現の自由の勝利を確実にするため、ソニーとともに立ち上がることを決めた」と明かした。

 グーグルとMSの快諾にSPEのリントンCEOは「実現を支援してくれたグーグルとMSに感謝している。われわれは戦い、サイバー犯罪者に屈しなかったことを誇りに思う」との喜びの声明を出した。欧米メディアの多くは、米ネット界の巨人が表現の自由を守るため共闘戦線を組んだとの論調でたたえている。

 サプライズ登場に拍手

 一方、映画館では当初、全米で2000~3000カ所で公開予定だったが、テロ予告を懸念した大手映画館チェーン各社が一斉に上映を見合わせたため、25日には約300カ所での公開となった。

 ロイター通信などによると、全米のトップを切って上映を始めた米ロサンゼルスのハリウッドに近い独立系映画館「サイレント・ムービー・シアター」では、真夜中の午前0時半からの上映開始にもかかわらず、満席状態。警官が警備する中、サプライズで姿をみせた監督兼主演のセス・ローゲンさん(32)らが「(テロ予告に屈しない)劇場があり、あなた方のような観客がいて、上映が実現した」と語り掛けると、観客から大きな歓声と拍手が湧いた。(SANKEI EXPRESS)

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