「イスラム国」 ビットコイン利用か 資金調達・決済 抜け道確保狙う

2015.2.26 09:35

 イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」が、インターネット上の仮想通貨ビットコインを資金調達や決済に利用している可能性が高いことが24日、判明した。イスラム国と戦う複数の有志国の治安当局者による話として外交筋が明らかにした。組織の資金源を断とうとする国際社会の動きに対し、抜け道確保の試みとみられる。ソーシャルメディアを活用した戦闘員の勧誘活動だけでなく、資金面でもイスラム国はサイバー戦略を駆使していることになり、組織壊滅を目指す有志国の掃討作戦にも影響する恐れがある。

 イスラム国の資金源は、石油などの取引が中心とみられるが、金銭授受や決済手段は不透明。外交筋は組織の資金の動きについて「現金や貴金属の直接の授受が大半ではないか」と分析。銀行口座を介した取引は米当局などの監視が厳しく、利用は困難になっていると推測した。銀行取引に代わる電子決済の手段として、資金移動の把握が難しいとされるビットコインを重視しているもようだ。

 オバマ米政権は19日、ワシントンに60カ国超の閣僚らを集め、過激派対策の国際会議を開催。軍事面だけでなく資金調達や若者の戦闘員流入を防ぐ非軍事面の協力を確認したばかり。

 ビットコインは、政府や中央銀行の裏付けがない一方、利用者の秘匿性が高く、ネット上の取引所で米ドルや日本円などと交換が可能。これに対して、銀行取引では複数の口座を迂回(うかい)させたり、取引を分散させたりしても最終的に各国の捜査機関などによって動きを突き止められる可能性が高いという。

 中東に詳しい外交筋は、イスラム国について「ITの世界を驚くほど熟知している」と指摘する。想像以上に巧妙な「サイバー集団」を壊滅に追い込むには、常識にとらわれない柔軟な発想と取り組みが求められる。

 ただ、こうしたイスラム国側の動向は、資金確保に焦り始めた兆候と見ることもできる。最大の資金源とみられる石油の闇取引は、世界的な原油価格下落の影響を受けているのは明らか。イスラム国がブラックマーケットに持ち込む安価な石油の商品価値は薄れている。

 米当局などの厳しい監視により、世界の銀行取引からも締め出され、イスラム国は限られた資金で有志国連合との戦いに臨まざるを得ない状況に追い込まれているとの指摘もある。(共同/SANKEI EXPRESS)

 ≪「組織壊滅を」 米、カタールと連携強化≫

 オバマ米大統領は24日、ホワイトハウスでカタールのタミム首長と会談し、過激組織「イスラム国」壊滅に向けて連携を強化することで一致した。米政府は、組織への資金提供疑惑がたびたび指摘されるカタールと有志国としての結束を確認することで、戦闘員流入などと並んで重視する資金源の遮断を図りたい考え。

 会談後、オバマ氏は記者団に「米国とカタールは極めて強い安全保障上の関係がある。カタールはイスラム国との戦いで強力なパートナーだ」と表明した。タミム氏はテロ組織の動向に懸念を表明した上で「われわれは考えを共有している」と強調した。

 カタールは米軍に軍事拠点を提供。米国がイスラム国と戦うシリアの穏健な反体制派に対する訓練をカタールで実施することでも合意している。ただ、カタールはパレスチナのイスラム原理主義組織ハマスなど過激派との間につながりがあると指摘され、イスラム国との関係も近いとの見方が以前からあった。

 アーネスト米大統領報道官の24日の定例会見では「カタールは、イスラム国や他のテロ組織の資金源ではないのか」との質問が出た。アーネスト氏は「カタールとは意見が合わないこともあるが、それ以上に米国と利害が重なっている」と述べ、過去の疑惑より今後の協力に目を向けたい米政府の立場を強調した。

 この日の会談で両首脳は、内戦が続くシリア情勢についても意見交換。オバマ氏はアサド政権退陣に向けて反政府勢力を支援する考えを示した。(共同/SANKEI EXPRESS)

 ■ビットコイン 2009年ごろ取引が始まったインターネット上の仮想通貨。政府や中央銀行の裏付けがなく、特定の管理者はいないが、一部の商品やサービスの代金決済ができる。国境を越えた送金も安い手数料で可能で、10分程度あれば利用者間の送金が完了する。ネット上の取引所で米ドルや日本円などの通貨と交換でき、交換レートが変動するため投機マネーも流入。一方で、マネーロンダリング(資金洗浄)に悪用される懸念も指摘されている。

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