東アフリカ 伝統を現代的にアップデート オウィニー・シゴマ・バンド/インペリアル・タイガー・オーケストラ

2015.9.9 14:00

 アフリカ音楽というと、セネガルやマリといった西アフリカや、エジプト、アルジェリアのアラブ音楽のイメージが強い。ワールドミュージックの発信源、フランスのチャートでも、これらの国のミュージシャンは常連だし、日本でも情報が入ってくるのは、これらのエリアが中心だ。しかし、つい最近、立て続けに珍しく東アフリカから面白いアルバムがリリースされた。いずれも伝統的なサウンドを、現代的にアップデートした最新音楽だ。今回は、未知なる東アフリカへと旅してみたい。

 ケニアの民家で録音

 まずは、ケニアとロンドンのミュージシャンによる混合グループ、オウィニー・シゴマ・バンド。2009年に発表したデビューアルバム「オウィニー・シゴマ・バンド」は、その斬新なサウンドで話題になり、世界中のラジオやクラブで流された。レディオヘッドのトム・ヨークが結成したアトムス・フォー・ピースのヨーロッパツアーでは、前座を務めたということからも、その注目度が分かるはずだ。

 3作目となる新作「ニャンザ」は、メンバーの故郷、ケニアのニャンザ州に出向き、自然音が聞こえる民家で録音。いわゆる民族音楽的な音素材だが、そこにテクノやダブなど新しいエッセンスを加え、最新型のダンスミュージックに仕上げている。ときおり聞こえてくるニャティティという弦楽器の響きが、エキゾチックで新鮮だ。

 異色のエチオピアジャズ

 もうひとつ注目したいグループが、インペリアル・タイガー・オーケストラ。スイスで結成されたバンドだが、エチオピアのジャズを奏でるという異色集団なのだ。リーダーでトランペッターのラファエル・アンカーは、エチオピア音楽のコレクターでもあり、実際に現地に赴きエチオピア人のミュージシャンやダンサーたちとコラボレーションを重ねている。

 10年にデビューし、すでに各国を忙しくツアーで回っているが、13年に発表した3作目のアルバム「ワックス」が日本でもリリースされた。ダンサブルなジャズのビートや民族的なパーカッションのリズム、そしてどこか日本の民謡や演歌を思わせるメロディーなどがミックスされた音楽は、とにかくハッピーでワクワクさせられる。思わず踊りたくなるサウンドが満載の一作だ。(音楽&旅ライター 栗本斉(ひとし)/SANKEI EXPRESS)

 ■Owiny Sigoma Band ケニア人とイギリス人で構成されるバンド。中心人物は、ゴリラズにも参加するキーボード奏者、ジェシー・ハケット。2009年にデビューし、ジャイルス・ピーターソンやセオ・パリッシュらトップDJに評価されて話題を呼んだ。

 ■Imperial Tiger Orchestra トランペット奏者のラファエル・アンカーを中心にスイスで結成。1970~80年代にかけてのエチオピア音楽を演奏するグループとして、国内外で活動を開始。2010年にデビューし、トラなどの“かぶりもの”の面白さでも人気を呼んでいる。

 ■くりもと・ひとし 音楽&旅ライター、選曲家、ビルボードライブ企画プランナー。2年間の中南米放浪の経験を生かし、多彩なジャンルで活動中。情報サイト、All Aboutでアルゼンチンのガイドを担当。最新著書は「アルゼンチン音楽手帖」。

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