中国の野望…宇宙征服へ世界最大の電波望遠鏡 5年前から軍主導で建設

2015.12.1 00:00

 宇宙開発分野で、米航空宇宙局(NASA)を追い抜こうと、中国が南西部の貴州省で来年9月の完成を目指して、世界最大の電波望遠鏡建設を進めている。パラボラアンテナの直径は500メートル。現存するアレシボ電子天文台(プエルトリコ)の1.5倍以上の大きさだ。NASAに対抗する中国は、最新型の電波望遠鏡(FAST)ができれば、数百億光年離れた宇宙から電波信号がキャッチできると主張。中国も世界初の地球外生命体との接触に挑むというが、過去には宇宙ロケット打ち上げ失敗で村落をほぼ壊滅させる事故も起きており、見通しは決して明るくないようだ。

 知的生命体接触に自信

 英紙デーリー・メールやデーリー・テレグラフ(いずれも電子版)などによると、FASTは、約5年前から軍主導で建設されている。総事業費は1億2400万ポンド(約229億円)。パラボラアンテナは、サッカーグラウンドが30面収まる広さだ。施設の外周を徒歩で1周するには40分もかかるという。

 観測精度の鍵を握るパラボラアンテナには、4450枚の三角形のパネルを張り付ける。現在この作業中で、11月下旬には、何らかのテストが実施された。中国は内容を公表していないが、機器動作などの確認が行われたとみられている。

 光を集めて観測する「光学式望遠鏡」と違い、宇宙からの電磁波を観測する装置。FASTは世界最大とあって、天の川の天体をはじめ、さらに遠い数百億光年離れた距離から地球に届く電磁波も探知することができるとしている。

 FAST計画の主任科学者、ナン・レンドン氏はデーリー・テレグラフなど欧米メディアに「雷雨の中でセミの鳴き声を聞き当てるようなもの」という例えを引き合いに、FASTの能力に自信をみせた。つまり、いろいろなノイズ(雑音)が入り交じる宇宙の電磁波を、全てクリアに聞き分けることができるというのだ。

 中国天文学会の理事長、ウー・シャンピン氏もデーリー・テレグラフ紙などに「FASTは銀河系の外にいる知的生命体を探し出し、宇宙の起源を探るための助けになるだろう」と胸を張る。

 トラブル続きの過去

 NASAは今年7月、惑星探査衛星ケプラーが、地球から1400光年の距離にある「ハビタブルゾーン(生命存在可能圏内)」で地球によく似た惑星「ケプラー452B」を発見したと発表し、世界を驚かせた。

 一方の中国も、NASA猛追に懸命だ。2013年12月には米、旧ソ連に続き、初の月面着陸に成功。さらに、CNNテレビ(電子版)などによると、20年までに世界初となる月の裏側への無人探査機を着陸させる計画をぶちあげるなど、“宇宙征服”に並々ならぬ意欲を示している。

 とはいえ、中国のこうした派手な功績の裏には、数多くの失敗が隠されている。例えば、1996年2月には、衛星打ち上げロケット「長征3号B」が飛行の2秒後に近くの村に墜落。新華社通信は死者6人、負傷者57人と報じただけだったが、他のメディアは、村の建物がほとんど消えてなくなり、人口約1000人の村で200~500人が亡くなる大惨事だったと報じた。

 また、初の月面着陸を果たした無人探査機「嫦娥(じょうが)3号」に搭載していた探査車「玉兎号(ぎょくとごう)」も、着陸から約2カ月後の2014年2月、故障して車輪が動かなくなるなど、トラブルに見舞われた。宇宙分野でも覇権を狙おうとする中国。安全の視点を欠いたままでは、その目的はかないそうにない。(SANKEI EXPRESS)

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