【試乗インプレ】極上の快適さ「もっと遠くへ」 メルセデス・ベンツGLCを試す(前編)
最近人気の車種と言えば、国内では依然としてミニバン天下だけれど、世界的にはなんと言ってもSUVだ。市場のニーズに呼応して各メーカーが新型車種を次々と投入。選択の幅が広がっている。今年始まったばかりの「試乗インプレ」でも、すでにBMW・X1と三菱・アウトランダー、レクサス・RXの3車種を取り上げた。高級車ブランドとして広く認知されているメルセデス・ベンツ(以下、ベンツと表記)では、SUVのラインナップを拡充させており、主力モデルのA・C・E・Sクラスに呼応する形で、各クラスでSUVを揃えている。今回はその中で最も新しいモデルであり、先日日本でも販売が始まったばかりのGLCを取り上げる。(産経ニュース/SankeiBiz共同取材)
GLCはエントリークラスセダン・ステーションワゴンのCクラスをベースに、背高ボディを設え、大型のタイヤを装備させたモデル。国産車ではちょうど前回取り上げたレクサスのRXと同等のサイズになる。エンジンは2リッター4気筒で、パワー、トルクともに、RXのガソリン車版である200tとほぼ同じであり、ベースグレードの価格差は100万円ほど開いているが、プレミアムブランドの中堅SUVという性格を考えれば、競合車種と言っていいだろう。
ザ・高級車
今回の試乗も、渋滞路を含む市街地、高速道路、箱根芦ノ湖周辺の山坂道という、いつもの3パターンで試走してきた。
このクルマの高級感を最初に実感できるのは静かさだ。ダッシュボード右側のスタートボタンを押してエンジンを始動すると、早くもこの時点で非常に高い静粛性の片鱗がうかがえる。窓を閉めていると、アイドリング中のエンジン音はほぼ聞こえないと言っていいくらい静かだ。しばらく走ってエンジンが暖まってからのアイドリングはさらに回転数が下がるので、そうなると窓を開けないとエンジンが本当にかかっているのか不安になるくらいである。いざ走り出して回転数が上がってくると、さすがにエンジン音も聞こえるが、すごく遠くで鳴っているような感じで、風切り音、タイヤからのロードノイズもまったく気にならず、遮音性が極めて高いことに驚く。
静粛性に加え、高剛性ボディと重厚な乗り味が高級感を上塗りしていく。サスペンションはしなやかで、大径タイヤを履いていることもあって、舗装路であれば路面の細かな凹凸からくる上下動はきれいに吸収してしまう。まさに「ザ・高級車」という乗り心地。
運転操作に慣れてくると、道行く人や、並走するクルマからの羨望の眼差しに気づいて、ベンツに乗っているという優越感もじわじわ湧き上がってくる。
エンジンは数値以上のトルク感があり、低速から高速まで全く不足を感じさせない。パワフルでありながら、滑らかに静かに回り、振動も車内には全く伝わってこないので、ジェントルそのものである。ひと昔前であれば、こんな大きく重いボディに2リッターエンジンなんて組み合わせは考えられなかったが、時代はダウンサイジング。今回日本で発売開始したGLCも、グレードによって装備の違いはあれ、エンジンはこの2リッター4気筒の1種類のみだ。ターボをつけて低速トルクも太らせればこれで十分以上、というメーカーの自信がうかがえる。
さすがアウトバーン育ち 時速100キロでは8速までしか使われず
高速道路に乗り、時速100キロ巡行に入ると、その直進安定性が際立ってくる。車線保持アシスト機能をONにすれば、ハンドルにはいざという時に備えて軽く手を添えているだけでよくなり、細かい修正舵の必要がなくなるので、レールの上を移動しているような感覚に襲われる。もちろん前車追従優先のクルーズコントロールも標準で装備しているから、順調に流れている時も、渋滞している時も、ドライバーの負担は最小限だ。
高速に入ってからも高い静粛性は保たれたまま。遮音が恐ろしく効いていることもあるのだが、なんといっても9速ATの効果が大きいだろう。時速100キロ時のエンジン回転数は2000以下、しかもシフトレンジはまだ8段目。追い越し時に100キロを少し超えるあたりまで速度を上げないと9段目は使われないのだ。このあたりは速度制限のないアウトバーン育ちのドイツ車ならではであり、100キロで走っているくらいではこのクルマの持ち味のほんの一部しか味わえないのだと思うと、ちょっと寂しい気もした。どこかのテストコースで200キロ出してみたいなぁ。
「ウヒョー!こりゃいいわ!」軽くクルマ酔いするほどスポーティー
御殿場ルートで箱根に到着、ところどころ中央線のない狭隘路となる長尾峠へ。ドライブモードをコンフォートからスポーツ+に切り替え、ハイペースで駆け抜けてみる。背高ボディと車重を感じさせない軽快な走り。エンジンのレスポンス、ブレーキの剛性感もよく、ハンドルの切れもいい。四輪駆動ながら後輪へのトルク配分が多めなおかげで、後輪駆動車的な素直な旋回性と、四輪駆動の確かなトラクションがいいバランスで両立しており、高速コーナリングでの安心感が高い。正直スポーツ走行にはあまり期待していなかったのだが、その反動もあって、思わず「ウヒョー!こりゃいいわ!」と叫ぶ。恥ずかしい話、自分で運転しながら軽く車酔いになってしまった。それほどにスポーティー。ワインディング、しっかり楽しめます。
ただ、これだけスポーティーであれば、エンジン音の演出がもっとあってもいいかとも思う。BMWのX1に試乗した時は、4気筒ながら高回転時のエンジン音が気持ちよく、ついつい回したくなってしまうほど気分を盛り上げてくれた。ベンツはそういうキャラじゃない、と言われればそれまでなんだけれど。
箱根がこんなに近いなんて
今回は実質半日と短めの試乗ながら、GLCの走りの素性の良さは存分に感じることができた。一番印象的だったのは、箱根が近く感じた、ということ。試乗やプライベートのドライブで箱根には何度も行っているが、今回ほど近く感じたのは初めてだ。上で書いてきたように、静粛性、直進安定性、各種運転補助機能など、理由はいろいろ挙げられるけれども、一言でまとめると、すこぶる快適だから、ということになるだろう。いつもは遠く感じる場所が近く思えるなら、もっと遠くへ足を伸ばしたくなるのが人情。GLCは、乗る人を長距離ツーリングへと誘うクルマであると言える。
で、ここからが大事なのだが、ただ快適なクルマということであれば、多分他にもたくさんある。でも、ドライバーに、もっと走りたい、もっと遠くへ行ってみたいと思わせるには、運転すること自体が楽しいと思える魅力が必要だと思う。ではGLCのどこにそんな魅力が秘められていたのか。明確には言えないけれども、まったりと半自動運転状態の高速道路走行であっても、箱根の山坂道で発揮された走りの良さが、無意識レベルでドライバーに伝わっているのかもしれない。人間の感性と工業製品であるクルマの関係性の奥深さを考えさせられる試乗体験だった。(文・カメラ 小島純一)
次回、後編は外観、内装&使い勝手のインプレッション。お楽しみに!
■基本スペック
メルセデス・ベンツ GLC 250 4MATIC Sports 9AT
全長/全幅/全高(m) 4.67/1.89/1.645
ホイールベース 2.875m
車両重量 1,860kg
乗車定員 5名
エンジン DOHC直列4気筒ターボチャージャー付
総排気量 1.991L
駆動方式 四輪駆動
燃料タンク容量 66L
最高出力 155kW(211馬力)/5,500rpm
最大トルク 350N・m(35.7kgf・m)/1,200~4,000rpm
JC08モード燃費 13.4km/L
車両本体価格 745万円
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