【試乗インプレ】「GT」を名乗るハイブリッド、その本性に迫る VWゴルフ GTE(前編)
トヨタの新型プリウス、欧州のディーゼル仕様車2台と日欧のエコカーを連続して取り上げてきたが、今回はフォルクスワーゲンのプラグインハイブリッド、ゴルフ GTEにスポットを当てる。パイオニアであるトヨタ以外のメーカーからも、いまや多くの車種が販売されている国産ハイブリッド車。優れた経済性と環境性能を前面に押し出した日本のそれに対し、ドイツ大衆車の雄はどんな対抗馬を繰り出してきたのか。今回はその走りを掘り下げていく。(文・写真 Web編集室 小島純一)
ベース車両は「乗用車のベンチマーク」
ゴルフと言えば、説明の必要もないくらいに最も日本市場に馴染んだ輸入車の一つ。クルマに疎い人であっても、名前くらいは聞いたことがあるだろう。初代の登場は1975年。昨年、誕生から40周年を迎え、7度のモデルチェンジを経てなお、世界中で人気を保ち続けているフォルクスワーゲンの屋台骨である。
2013年(ドイツ本国では2012年)に発売を開始した現行モデルは、2013年の日本カー・オブ・ザ・イヤーを輸入車で初めて受賞する快挙を成し遂げた、非常に完成度の高いクルマだ。
私自身、現行のゴルフには何度も乗っているが、とにかく全方位スキのない作り込みにいつも感心させられる。ゴルフが属するCセグメントのクルマは、試乗インプレでもプジョー・308、アルファ・ジュリエッタ、ミニ・クラブマンと何台か取り上げてきたが、強豪ひしめくこの激戦クラスのなかにあっても、総合力とバランスで一歩抜きん出ており、「乗用車のベンチマーク」の座はいささかも揺らいでいないと感じる。
そんな優等生=ゴルフをベースにしたプラグインハイブリッドのGTEだから、試乗前の期待値は非常に高かった。
え?エンジン動いてたの?
結論から言うと、静粛性、ボディー剛性、乗り心地はすべて期待どおりか期待以上。
高剛性ボディーで密閉度が高いうえに、遮音もばっちり効いたガソリン仕様のゴルフの段階で、すでに静粛性は非常に高い。加えてGTEはハイブリッドだから、モーター駆動の時はエンジン音がしないわけで、静かなのは当然。
驚くのは、エンジンがかかってハイブリッド駆動になった時もほとんどエンジン音が気にならないことだ。そもそもエンジンがかかった瞬間がわからない。バッテリー残量があれば、発進時はモーター駆動。そこからスピードが上がってくると、自動的にエンジンがかかりハイブリッド駆動になる。しかし、その切り替わりはメーターパネルを見ていないとわからないほどスムース。追い越し加速などで、強めにアクセルを踏み込んでようやくエンジン音が聞こえてくるという感じ。それも、かなり遠くで鳴っているよう。まるでドア越しに聞こえる隣を走るクルマのエンジン音くらいの音量だ。クラスを超えた異次元の静粛性と言っていいだろう。車内が静かだから、会話もオーディオも普通の音量でOK。
乗り心地もゴルフ譲りのボディーのしっかり感とサスペンション調整のバランスが絶妙で快適そのもの。静粛性と乗り心地だけ抜き出して評価すれば、間違いなく高級車レベルで、一つ上のDセグメントの車種とも戦える、いや車種によっては打ち負かせるほどの素養を持っている。
静かなる韋駄天 市街地での完璧パフォーマンス
ゴー&ストップの多い市街地では、モーター駆動の長所が存分に生かされる。ガソリンエンジンに比べ、低回転域から強いトルクを発生させるモーターは発進加速に優れ、信号待ちで先頭に並ぶや、青信号に変わると同時に易々と他のクルマを置き去りにする韋駄天ぶりを発揮。
ゴルフのFFシリーズには2リッターターボエンジンを積んだスポーティーモデルのGTIがあるが、実は時速0~60キロまでの加速であればGTEのほうが速い。しかもバッテリー残量がある場合は、モーターだけで走る「Eモード」がデフォルトだから、エンジン音はまったくせず、ヒューンというSFっぽい中2ゴゴロに響くモーター駆動音と低いロードノイズがかすかに聞こえる程度で、キャビン内は静粛そのもの。すこぶる快適である。
そして言うまでもなくゼロエミッション。これ以上何を望もうかというくらい市街地でのパフォーマンスは完璧と言える。
高速の合流・追い越しが楽勝かつ安全
大阪市内から高速道路に入り、一路、三重県・志摩へ向かう。往復500キロ、7時間のロングドライブだ。「Eモード」でも時速130キロまでは加速できるから、バッテリ残量さえ許せば、モーターだけで高速道路を走ることもできるが、すでに市街地をモーターだけで十数キロ走ってバッテリ残量は少なくなっていたため、「ハイブリッドモード」に切り替える。
既に書いたようにエンジンはごく静かに始動。かかってから2000回転あたりまではエンジンの存在感は稀薄で、モーター走行の延長のようにしか感じられない。追い越し加速でアクセルをグッと踏み込むと、デュアルクラッチ変速機(DSG)がシフトダウンして回転数が上がりエンジン音が次第に高まってようやく、ハイブリッド駆動に切り替わっている実感が伴う。シフトダウンせず、エンジンのトルクが細い極低回転域からの追い越しでも、モーターのアシストが入る分加速が素早い。都市部の高速道路で合流路が短いところでもスピードコントロールの自由度が高く、土地勘のないドライバーや高速道路の走行に不慣れな初心者ほどありがたみを感じるだろう。加速性能はスポーティーな側面から語られることが多いが、実は安全な走行に欠かせない項目でもある。
直進安定性はベース車両のゴルフ譲りで、レールの上を走っているよう。十分に整備された自動車専用道でのドライブなら、どこまでも走っていける気がするほど安心感が高く、ドライバーを疲れさせない。面白いのは、非常に安定していながらも「乗せられている」感じはなく、常にドライバーが主導権を持って操っている感覚が強いところだ。だから、単調な長距離走行でも飽きることがない。くどいようだがゴルフのこういうところ、Cセグの域を完全に超えていると改めて感心する。
強烈なG 実質ツインチャージャーの“ロケット”モード
伊勢西インターで一般道に降りて、多島美で知られる賢島方面へ。途中のワインディングロードでエンジンとモーターがフルパワーを発揮する「GTEモード」に切り替える。
アクセルを底まで踏み込むと、その加速はまさにロケット。後ろでジェット噴射しているのでは…というのは大げさだが、背中がシートに押しつけられる強烈なGを伴って、バッヒューンとすっ飛んでいく。この時、メインの駆動力はエンジンで、モーターは「エレクトリックブースト」と名付けられたスーパーチャージャーのような役割を果たす。搭載された1.4リッターエンジンにはもともとターボがついているので、実質ツインチャージャーと捉えることもできる。
GTEのエンジンとモーターの合計出力は204馬力の35.7kgf・m。トルクだけならGTIと同値、パワーも-16psと肉薄している。こりゃ速くて当然である。
長い直線路が続く高速道路では高回転時の出力に優るGTIのほうが速いと思うが、細かい加減速を繰り返す山坂道では、ひょっとするとモーターの瞬発力に優れるGTEのほうが速いかもしれない。
旋回制御と大径ブレーキの安心感
ただ速いだけではなく、操縦性もいい。「XDS」という電子旋回制御が常時働いて、前輪駆動車特有のアンダーステアを打ち消してくれるから、普通のスピードで駆け抜けるときは言うまでもなく、思いがけずハイペースでコーナーに突っ込んでしまっても、ABSが効いたときのような「ゴリッ、ゴリッ」という音とハンドルに伝わる手応えとともに減速しつつ、車線をはみ出すことなく安全に、何事もなかったかのようにきれいに曲がっていく。いや、曲げていくと言うほうが的確かもしれない。
ブレーキもGTIと同等の大径ディスクだから、200馬力超のハイパワーでもガッチリ受け止め、まったく不足を感じない。「止まれる」という安心感が、積極的にスピードを乗せていこうという気分を盛り上げる。
ハンドルを握る両手には、タイヤがどのくらい路面をつかめているかが存分に伝わってきて、元気よく走っている時でも安心感が高い。もっとも、私のような素人ドライバーがちょっと飛ばしたくらいではその限界は窺えず、ポテンシャルの高さはスポーツモデル並みと感じた。ただ、標準装備の17インチタイヤは静粛性と乗り心地は非常に優れているものの、元気よく走るには少し物足りない。スポーティー志向なら、オプションの18インチタイヤに着け替えたい。
アクティブセーフティー(能動的安全)性能については、後編で詳しく触れるが、このクルマとにかく抜かりがない。ドライバーがアクセル、ブレーキ、ハンドルで意思を示せば、クルマは最善の挙動で答えてくれて、危険が回避される(あるいは最小限に抑えられる)。そしてクルマに助けられたと感じたその瞬間、一気に信頼感と愛着が増す。
ハイブリッド化が重量配分に好影響か
試乗車はサスペンションの特性を切り替える「DCC」というオプションが装着されていないモデルだったが、足回りの剛性に不足は感じなかった。その理由はひょっとすると、後部座席下に積まれた大容量バッテリーのおかげかもしれない。
ガソリンエンジンのモデルでは燃料タンクが格納されているこの場所に重たいバッテリーを搭載、燃料タンクは荷室下に移設したことで、前後の重量配分が最適化され、同時に重心が低くなっている。結果、かなりハンドリングのよい素性を持つ構造になったのではないかと思う。
国産各社の受け止めが気になる
ここまで書いてきて、GTEがハイブリッド車であることに我ながら驚いている。まるでスポーツカーのインプレッションのような内容ではないか。ハイブリッドでここまで楽しめるクルマが作れるという事実。ハイブリッド王国である日本のメーカーは、このクルマの存在をどのように受け止めているのか、非常に気になるところだ。
褒めちぎった走りのインプレッションはここまで。次回、後半は内外装、使い勝手のインプレッションに加え、肝心の燃費性能、そしてベースモデルの2倍近い驚くべき価格設定について考察していく。お楽しみに!(産経ニュース/SankeiBiz共同取材)
■基本スペック
フォルクスワーゲン・ゴルフ GTE 6速DSG
全長/全幅/全高(m) 4.265/1.8/1.48
ホイールベース 2.635m
車両重量 1,580kg
乗車定員 5名
エンジン 直列4気筒DOHCインタークーラー付ターボ
総排気量 1,394L
最高出力 110kW(150馬力)/5,000~6,000rpm
最大トルク 250N・m(25.5kgf・m)/1,500~3,500rpm
モーター形式 EAH
定格出力 55kW
モーター最高出力 80kW(109馬力)
モーター最大トルク 330N・m(33.6kgf・m)
駆動方式 前輪駆動
燃料タンク容量 40L
JC08モード燃費 23.8km/L
車両本体価格 469万円
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