【CAのここだけの話♪】〈就航地で悲喜こもごも〉やっぱり母国にフライトしたい!
SankeiBizの読者の皆さんにだけに客室乗務員(CA)がこっそり教える「ここだけ」の話。第23回は中東系航空会社に日本人CAとして乗務4年目の飯島菜摘がお送りします。
皆様、「CA」と聞いて、どのようなイメージをお持ちでしょうか? いつも笑顔で、世界中を飛び回り、華やかな世界…ただそんな私たちの生活について謎に思っている方も少なくないかもしれません。今回そんな私たちCAの生活の一部を私のキャビンクルーライフを通してお伝えします。
▽願いを込めた「フライト&休日リクエスト」
私が現在所属しているエティハド航空は、アジア、ヨーロッパ、アメリカ、オーストラリア、アフリカなど、世界50カ国以上、90都市以上に就航しています。私は日本語スピーカーとして入社しましたが、日本へのみフライトをするわけではなく、さらに日本人だからといって、毎月必ず日本フライトがあるわけでもありません。
そんな中、自分の出身の国へフライトをしたい、もしくは自分が好きな国にフライトをしたいという願望は私だけではなく、クルー全員が持っています。そこで、そんな私たちの願いに役立つ、「フライト&休日リクエスト」というシステムが存在します。
このシステム、フライトだけではなく、休日リクエストも含め優先順位が高いものから、5つまでリクエストをすることが出来ます。クルーたちの多くは自分の出身国のフライトをリクエストしています。
私の場合は、日本フライトに加え、季節によってリクエストを変更しています。例えば、春先から夏のリクエストは過ごしやすく、気持ちの良いヨーロッパ、アメリカ、カナダなどで自然を楽しみ、逆に寒い冬の時期には南半球で暖かいオーストラリアで夏を楽しみ、更に年間を通して温暖なシンガポール、タイなどで美味しいお料理を堪能し、マッサージで癒されます。
ただし、このシステム、確約ではありません。言ってしまえば、運でしょうか…。
▽クルー同士の「絆」で希望が叶うときも
クルーにとって人気のフライト先は、年間を通して、ドイツ、イタリア、フランス、スペイン、オランダ、スイスなどのヨーロッパ。アジアですと、シンガポール、韓国、日本、タイなどが人気の就航地です。更にステイの時間が長いアメリカのロサンゼルスも人気のフライト先の1つです。
逆に人気のないフライト先は、ステイがない、日帰りフライトです。インド、パキスタンなどの南アジア、サウジアラビア、イラク、レバノンなどの西アジアはアブダビから比較的近く、フライト時間も片道5時間以内。フライトをして、到着し、飛行機から降りずにそのまままたその日のうちにフライトをして帰ってくるという、なかなかタフなフライトです…。
スケジュールが発表された後、リクエストが通り喜ぶクルーもいれば、自分の希望していたリクエストが通らず肩を落とすクルーもいます。ただ、まだチャンスは残っています。クルー間でフライトを交換することができる、「スワップ」というシステムです。
ただし、このスワップシステムは、フライトを交換するクルー同士が同じフライト日数であること、お休みとフライトは交換できないこと、そして飛行機の機種によって交換できないフライトもあります。
私も過去に何度か利用した経験があり、日本フライトへ変更したり、寒さが苦手な私は、冬の寒いパリフライトを暖かいバンコクフライトへと変更したことがあります。
▽CAは機内で食事はどうするの?
話は変わりますが、CAがフライト中にどんな食事をしているか気になったことはありませんか。
私たちキャビンクルーの食事は基本的にお客様と同じ機内食です。実はこの機内食、上空では(気圧の関係で)人間の舌の働きが鈍るため、地上では味が濃いと思うくらいの味付けをしておかないと上空ではおいしく感じなくなります。ですので、通常の食事よりも多く調味料が使われています。
お客様のように、たまにいただくのであれば問題はないのですが、月に何度もフライトをする私たちキャビンクルーにとっては悩みの種です。そこで、自分で食事を持参するクルーもいます。チキンやビーフなどの肉類や魚、そして普段不足しがちな野菜類を自宅で調理し、持参します。
私も同様で、メインの食事に加え、粉末スープや固形のみそ汁、豆乳、ヨーグルト、シリアル、はちみつなど、軽食を常に持参しています。
また、弊社では機内食に関して、よくフライトをされ、カロリーを気にしているお客様、そして宗教上、特別な食事を必要としているお客様はベジタリアンミールなどをはじめとする、「スペシャルミール」という食事をリクエストしています。
このスペシャルミールは、ベジタリアンミールだけでも4種類、その他にローカロリーミール、グルテンフリーミール、ヒンドゥーミール(ヒンドゥー教徒用食)、フルーツミールなど、約20種類ご用意しています。
▽飲み過ぎたお客様さまにはこっそり“裏技”も
さて、お食事と一緒に提供している、お酒。弊社では、ビール、ワインに加え、ウイスキー、ジン、ラム、ウォッカ、さらに日本線では日本酒をご用意しています。
上空では気圧の影響で酔いが回りやすいため、何度もお酒を頼まれる方に私たちキャビンクルーは情報共有をし、コミュニケーションを取り合い、注意を払っています。
しかし、アルコールを提供する量には決まりはないので、よっぽど顔が赤かったり、ろれつが回らなかったり、ふらついたりしてしない限り、私たちがお客様にお酒を提供するか否かを判断をし、更に様々工夫をしています。
例えばお客様と積極的にお話をし、アルコールから意識をそらしたり、アルコールの代わりにノンアルコールのお飲み物や、温かいコーヒーや紅茶をお勧めする、または薄めにお酒をお作りするなど。
ここで、ウイスキーの水割りを薄めにお作りする際のちょっとした工夫をお伝えします。
まず、グラスに氷を入れ、ウイスキーを数滴入れ、薄く水割りを作ります。そして、マドラーにウイスキーを数滴付け、グラスの縁の周りに沿って少しずつ付けます。まるで(カクテルの)ソルティードッグのソルト(塩)のようにです。すると不思議、薄い水割りでも一口目でお酒の味を感じるので、薄く感じません。クルーならではの工夫の1つです。
もちろんそれでも駄目な場合は、お客様のためにはっきりとこれ以上お酒を提供することが出来ない旨をお伝えし、納得していただくように努めます。
いかがでしたでしょうか? 今回ほんの一部ですが、あまり知られていないクルーライフをお伝えしました。少しでも私たちCAを知っていただき、さらに身近に感じていただけますと幸いです。
【プロフィル】飯島菜摘
いいじま・なつみ 北海道出身。オーストラリアに語学留学後、アメリカ・ハワイの大学を卒業する。卒業後は日本の旅行会社に勤務。その後マレーシアの航空会社にCAとして転職する。現在は中東の航空会社に乗務して4年目。趣味は旅と食。フライトで世界中を飛び回るかたわら、プライベートでもアクティブに世界旅行を楽しむ。
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このコーナーはエアソルに登録している外資系客室乗務員(CA)が持ち回りで担当します。現役CAだからこそ知る、本当は教えたくない「ここだけ」の話を毎回お届けしますので、お楽しみに。内容は随時更新します。エアソルはPR、商品開発、通訳、現地リサーチ、ライター業務等、現役CAの特性を活かせるお仕事を副業としてご紹介しています。
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