日本バスケ、勝負の年 市場2割成長で10億円クラブも 大河チェアマンに展望を聞く

 
3年目は日本代表と表裏一体でBリーグを盛り上げると意気込む大河正明チェアマン(大宮健司撮影)

 バスケットボール男子は7月、日本代表が20歳の八村塁(米ゴンザガ大)らの活躍で2019年ワールドカップ(W杯)アジア1次予選を突破した。W杯出場の成否が、20年東京五輪出場の行方を左右するとされるだけに、9月からの2次予選に注目が集まる。今秋、3シーズン目に突入するBリーグにとっても、バスケットの人気を上昇気流に乗せるための“勝負の1年”になる。リーグ開幕前の9月に行われるアーリーカップのPRで大阪を訪れた大河正明チェアマンに、新シーズンの展望を聞いた。(聞き手 大宮健司)

 日本代表とBリーグは表裏一体

 --日本代表が強豪のオーストラリアを破る金星などの活躍をみせ、バスケット界が盛り上がっている。

 大河 日本代表が活躍すると、バスケット自体のメディア露出も増える。八村が注目されるが、比江島慎や田中大貴、馬場雄大らもいい味を出していた。いい流れになる期待感はある

 --今季もW杯アジア2次予選がある。日本代表の活動が増え、選手やクラブの負担は増えそうだ。

 大河 今季は2020年東京五輪に出られるかが決まる1年(※注1)。代表とBリーグの盛り上がりは表裏一体と考えている。

 サッカーでは地球を半周して代表とクラブの試合に出るのは当たり前だ。Bリーグを休み、代表強化に専念するとなると、競技の裾野が広がらない。「代表になりたい」という強い思いを持った選手を増やすがプロを作った最大の意味だ。もちろん、調整できるところはしていく。

 《※注1…日本男子は国際バスケットボール連盟(FIBA)から東京五輪の開催国枠を保障されていない。開催国枠を得るにはW杯に出場し、ベスト16相当の結果を残すことが必要とされている》

 --Bリーグでは昨季、京都ハンナリーズが関西勢で初めてチャンピオンシップ(CS)に進出した。

 大河 いい兆しだが、戦力や財力を考えると大阪エヴェッサにがんばってもらいたい。最低でもCSに出場するチームに変わって欲しい。西地区は(昨季の西地区優勝、CS4強の)琉球ゴールデンキングスが優勝争いの中心になると思うが、京都と大阪の奮闘が盛り上がりのカギだ。

 市場は2割成長、10億円クラブも増

 --Bリーグが公開した全クラブの決算概況(※注2)によれば、収入トップは大阪だ。

 大河 Bリーグ1シーズン目(16~17年)の全36クラブの総売り上げは約150億円だった。2季目(17~18年)は決算の集計中だが、2割程度は増加して180億円になるとみている。単体で10億円を超えるクラブが5つくらい出るのではないか。千葉ジェッツは14億円を超えて、Bリーグで最も売り上げが多いクラブになると思う。

 《※注2…Bリーグは昨季中、リーグ開幕初年度にあたる16年度の全クラブの決算を公開した。B1とB2の全36クラブのうち収入トップは大阪の11億6985万円。10億円超のクラブは2つだった》

 --今季開幕前に行われるアーリーカップでは、関西大会に初めて韓国リーグのクラブが参戦する。

 大河 サッカー日本代表が韓国を苦手にしなくなったのは、韓国選手がJリーグに来て日常的に対戦するようになったからだ。バスケットも韓国や中国、フィリピンに勝たないと五輪に行けない。東アジア、東南アジアの国と対戦する機会を作るのは、Bリーグがビジョンの一番上に掲げている「世界に通用する」にほかならない。

 将来的にサマーリーグ(※注3)なのか、現在のアーリーカップを変形させていくのかは今後考えていくところだ。

 --関西は外国人観光客数が伸びている。試しやすい地域でもある。

 大河 関西や九州でやるのはいい。次のBリーグ・オールスター戦は富山市で開催するが、富山には台湾との直行便がある。台湾人を観戦に呼び込むきっかけにしたい。

 (※注3…米プロリーグNBAは、毎夏に若手の登竜門として短期間の大会を開催している。今夏は日本人の渡辺雄太(米ジョージワシントン大出)が参戦。実力をアピールしたことでグリズリーズとの契約に結びつけた)

 革新求め、平日開催を増やす

 --今秋に開幕する3シーズン目のBリーグはどうなっていくのか

 大河 「革新性」はこれからも求め続けていく。挑戦の一つとして今季は平日の試合開催を増やした。各クラブが4試合に1回ぐらいは平日に試合をすることになる。

 プロ野球ではないが、平日夜に、仕事帰りにでも試合を観に来てくれるというのは、一つの文化だからだと思う。もちろん集客が減る心配はあるが、新しい観戦スタイルを追求していかなければならない。将来はもっと平日開催を多くしていきたい。

 --今季の集客の目標は

 大河 昨シーズンと同じで、また観客動員の総数を前年比で10%増やしたい。だが、平日開催を増やしながら観客を増やすことは簡単ではないことも理解している。国民的スポーツにしていくために、苦しくてもやらないといけない。