【CAのここだけの話♪】〈お待ちください!〉空の旅のイライラ、解消への近道は?
SankeiBizの読者の皆さんにだけに客室乗務員(CA)がこっそり教える「ここだけ」の話。第38回は香港系航空会社に日本人CAとして乗務7年目の笹子和代がお送りします。
限られた時間やものの中で、効率を重視する私たちCA。
今回は、そんな私達がお客様の全体的な傾向を見て、これを知っていれば、無駄に時間を使ったり、嫌な思いをすることをさけられるのになと思うポイントをご紹介します。旅慣れた方、そうでない方、毎日様々な価値観のお客様が乗って来られるわけですから一概には言えませんが、少しでも参考になれば幸いです。
始まったばかりの旅。チェックインも荷物検査も出入国検査も終えて、搭乗時刻にゲートに並んだら、長時間立って待たされたという経験はありませんか?
◆ゆったりと順番を待つのも悪くない
自分の搭乗の優先度が低い場合、長い列に並んで待つより、ある程度お客さんが機内に入ってから並んでも遅くはありません。大丈夫、新幹線のように自由席を設定している飛行機はないので、自分の席は確保されていますよ。
もちろん搭乗時刻を大幅に過ぎての遅刻は厳禁ですが、まだかまだかとイライラした気持ちで乗るより、ゆったりと待合の椅子で順番を待つのも悪くないでしょう。
また、飛行機をよく利用する方でしたら、空港での入国出国審査がスムーズに済むように、取得できる便利なアイテムは揃えておくこともオススメします。例えば香港では、申請すればビジネスビザや学生ビザでIDカードが手に入るので、それさえあれば長い列に並ばずに、自動化ゲートで出入国できます。
話はそれますが、早く乗って早く降りたい、それを象徴するフライトがあります。
ある時、車椅子のインド人のお客様が20名乗ってこられました。通常通り、車椅子のお客様はお手伝いが必要なので優先搭乗です。やっと手足を動かせる状態の皆様と共にテイクオフ。着陸前には、車椅子を用意するために時間がかかるので、着陸後は声をかけるまで席で待っていてほしいということを一人一人に説明し、降機は最後ですよと念押しします。
が、どうしたことでしょう。いざ着陸してお客様を呼びに行くと…3名しか残っていないではありませんか。他のCAいわく、みなさんスタスタ歩いて帰っていったそうな。
我が社では、このようなフライトを「リカバリーフライト」と呼んでいます。
◆機内のお手洗い事情
ミールサービス後のお手洗いに長蛇の列。これは、ほぼ毎フライト、特にエコノミークラスで見かける光景なので、是非皆さんにもお伝えしたいことです。
機内では離陸後、まずドリンク、お食事の提供、食後のお飲み物とトレーの片付け、という内容でサービスが進むことが多いのですが、毎回必ずと言っていいほど発生するのが、お食事後のトイレ問題。
飲んで食べて目の前のトレーが下げられたので、いざお手洗いへ! わかります、わかります。でもそのタイミングでは、すぐに用は足せない事が多いのです。
みんな考える事が同じで、トイレの数も限られているので、お手洗い前は大混雑。便座が汚い!、お子様がお漏らししてしまった!、トイレットペーパーがなくなった!、10人待ちだからビジネスクラスに行かせて!…と、まだトレーの片付けをしてカートを引いている私達に、次々とクレームが入ってくるわけです。
排泄のコントロールは難しいかもしれませんが、こういった傾向を知っておくのもイライラしないポイントです。“トイレ戦争”に巻き込まれないために、ベストなタイミングは、「ドリンクの後」「お食事の前」と覚えておきましょう。
◆荷物棚の陣取り合戦
先程、搭乗ゲートで長蛇の列の話をしましたが、我先に乗りたがる人の中には、自分の荷物棚がとられてしまうと思われている方がいます。
満席のフライトで荷物棚がいっぱいに溢れている時、私達CAが荷物の整理をしてお客様に確認をしてから近隣の棚に移動させる場合があるのですが、「私の席は46Kだから、その上のスペースは私のものだ! なんで他の客の荷物を入れるんだ」と怒るお客様がいらっしゃいます。搭乗券に書いてある座席の数字が、荷物棚にも記載されているからでしょう。
しかし、実際にお客様が購入されているのは座席であって、その番号をまとった荷物棚ではありません。もともと消火器や酸素ボンベ、緊急用浮き具などの非常用設備が入っていて、荷物が入れられない箇所もあるのです。
またある時は、日本発の路線で人気のお土産・日本産フルーツを持ち込み、「私の苺や桃やぶどうの上に荷物を置くな!」と喧嘩をしている人も見かけました…。荷物棚はお客様みんなのもの、周りの乗客とうまくコミュニケーションをとって上手にスペースを使いましょう。どうしても近隣の棚に入らない場合には、喧嘩になる前に優しくCAを呼んでくださいね。
◆降りるときも余裕をもって…思わぬ幸運も?!
目的地に到着し、ドアが開かない時から、我先にと立ち上がり、他のお客様が荷物を取れないほど通路を占領しているお客様。急ぎたい気持ちはわかりますが、早く飛行機を降りたところで、早く空港を出られるとは限りません。
降機後、普通は入国審査とチェックインした荷物が出てくるのにも時間がかかります。
私の会社では、到着後、お客様が降りる時にコクピットのドアを開けていることも多いので、興味のある方はちらっと中をのぞくチャンス! 他のお客様がほとんど降りられた頃にCAに話しかけたり、パイロットと一緒に写真を撮ってもらうのも楽しいですね。
また、急いで降りて忘れ物をしたとなると大変です。乗客の降機後の再搭乗は禁止されていますから、降りる時には慎重に確認しましょう。
飛行機はAからBへの移動手段。とはいえ大事な旅の一部です。無駄な時間や動きをなくして、ストレスフリーな旅にしてくださいね。
【プロフィール】笹子和代
ささご・かずよ 大阪外国語大学卒、シンガポール航空客室乗務員、新潟放送アナウンサー、現在香港の航空会社で客室乗務員として勤務し7年目。香港と東京に在住。フリーアナウンサー・通訳・英語や日本語のスピーチトレーナーとしても活躍中。
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このコーナーはエアソルに登録している外資系客室乗務員(CA)が持ち回りで担当します。現役CAだからこそ知る、本当は教えたくない「ここだけ」の話を毎回お届けしますので、お楽しみに。内容は随時更新します。エアソルはPR、商品開発、通訳、現地リサーチ、ライター業務等、現役CAの特性を活かせるお仕事を副業としてご紹介しています。
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