【木下隆之の試乗スケッチ】レクサスの新型SUV「UX」は、都会を颯爽と駆ける“末娘”
レクサスに待望のブランニューが加わった。その名は「レクサスUX」。アーバンクロスオーバーの略であることから想像できるのは、都会的な多目的モデルであることだ。
UXは、レクサスが構成するクロスオーバーラインナップの末娘になる。最重量級なのが「LX」。その堂々たる体躯はフラッグシップSUVの名に恥じない。それを頂点に、ボディサイズでいうならば次男坊になるのが「GX(輸出仕様)」。そして都会的な味付けの「RX」と続き、「NX」が控える。そして今回デビューした「UX」が、シリーズで最もコンパクトな末娘というわけである。
なぜ「娘」?
UXを「娘」としたのは、ちょっとした訳がある。実は開発責任者を女性の加古慈氏が務めるからだ。レクサスインターナショナルのバイスプレジデントであり、トヨタ自動車の常務役員を兼務している。一言で専門分野を紹介するのは難しいのだが、インテリアの素材やテキスタイルへの造詣が深い。欧州勤務時代に「感性工学」を探求した。かつてはレクサスCTを開発責任者として成功に導いている。コンパクトモデルで数々の実績を残しているのである。
ちなみに、女性だからといって、UXが女性仕様であるはずもない。氏の名誉にかけてお伝えしておこう。
ともあれ、氏が得意な分野であるインテリアに関しては特に手腕を発揮した。それはコクピットに座った瞬間にバランスの良い質感として伝わってくる。
そもそもUXはBMW「X1」やメルセデス「GLA」といったコンパクトSUVとは異なって、全高の低さが特徴である。身長170センチの筆者がクルマの脇に立っても、ルーフの一面が見渡せるほどの低さである。
しかも乗り込んでみると、着座点が低い。ドライバーのかかととヒップとの高低差も少ない。つまり、アクセルやブレーキペダルを上から踏みつぶすようなドライビングポジションではなく、セダンのような自然な姿勢で運転が可能なのだ。SUVにありがちなトラックを運転しているかのような不自然な姿勢にはならないのである。
しかも、コクピットはほどよくタイトでありながら、閉塞感がまったくないのが不思議である。というのは、インパネやコンソール類がドライバーを取り囲むように配置されていながら、ウインドー開口部が広く確保されている。クロスオーバーらしい開放感と、ドライバーズカーらしい包まれ感がほどよくミックスしているのだ。
コンソール類に集約されたカーナビやオーディオ類の操作系も、慣れれば使いやすい位置に配置されている。UXが女性仕様ではないというものの、身長の低い女性でも運転しやすいのだろうと思えた。
ヒット間違いなし!?
エンジンは直列4気筒2リッターガソリンNAと直列4気筒2リッターハイブリッドの2タイプが選択可能だ。共に環境性能と動力性能がほどよくバランスされている。
走りで印象的だったのは操縦性である。速度を上げてコーナリングを楽しむタイプの車ではまったくないが、しっとりと路面に馴染むハンドリングは、新開発プラットフォームGA-Cの低重心化が貢献しているのだろう。都会をゆったりとクルーズするのは心地よいに違いない。
レクサスクロスオーバーの末娘は、これから都会でもっとも目にするクロスオーバーになるような気がする。そのキュートなフォルムは、都会によく似合うと思う。
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「木下隆之の試乗スケッチ」は、レーシングドライバーで自動車評論家の木下隆之さんが、今話題の興味深いクルマを紹介する試乗コラムです。更新は原則隔週火曜日。アーカイブはこちらから。
木下さんがSankeiBizで好評連載中のコラム「木下隆之のクルマ三昧」はこちらから。
【プロフィール】木下隆之(きのした・たかゆき)
ブランドアドバイザー ドライビングディレクター
東京都出身。明治学院大学卒業。出版社編集部勤務を経て独立。国内外のトップカテゴリーで優勝多数。スーパー耐久最多勝記録保持。ニュルブルクリンク24時間(ドイツ)日本人最高位、最多出場記録更新中。雑誌/Webで連載コラム多数。CM等のドライビングディレクター、イベントを企画するなどクリエイティブ業務多数。クルマ好きの青春を綴った「ジェイズな奴ら」(ネコ・バプリッシング)、経済書「豊田章男の人間力」(学研パブリッシング)等を上梓。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。日本自動車ジャーナリスト協会会員。
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