【木下隆之の試乗スケッチ】ボルボXC40 打倒ドイツ勢へ“真逆”の販売戦略
ボルボXC40の日本試乗会が行われたのは秋深まる爽やかな北海道・函館だった。いまから2カ月前のことになる。まだ雪が降る前のことだったし、だからサテンのシャツに薄いカーディガンを羽織っただけの軽装でも風が心地よかった。今思えば、一番いい季節に北海道にいたのかもしれない。
函館空港に到着したのは午前11頃だった。それから空港で待機していたXC40に乗り、北の食事を楽しみつつ1時間ほどのドライブをしたのちに、試乗拠点となる瀟洒なホテルにチェックイン。荷を解いてからあらためて、何台かのXC40に乗り換え、大沼湖周辺のドライブコースを堪能したのである。
力の入れように圧倒された
それにしても今でも思い出されるのは、今回はボルボが国内展開するオールラインナップ試乗ではなく、新型XC40に限ってのドライブだったにも関わらず、たっぷりと2日間もあてがわれたことだ。ホテルで待機していたXC40は10数台もあった。それぞれ仕様が異なる。よくもまあこんなにもたくさん、北海道まで運んだものだよなぁ~と感心するとともに、ボルボジャパンのXC40への力の入れように圧倒されたのだ。
このところのボルボの勢いは凄まじい。日本市場がシュリンクしていると言われているのに、ボルボの販売は伸びている。特に売れ筋のクロスオーバーは飛ぶ鳥を落とす勢いだ。ボルボが記録した2017年の登録台数は日本だけで約1万5000台だったのに、2018年の受注見込みはXC40だけで4000台だというのだからまさにドル箱だ。その数字は、いかにコンパクトクロスオーバー市場が過熱しているかを語るものだし、そこにかけるボルボの意気込みには感心しきりなのである。
それが理由で、XC40は豊富なグレード構成でライバル勢を迎え撃つ。試乗拠点に10数台ものXC40が並んでいたのは、バリエーションが豊富だからである。
XC40のエンジン構成は変則的だ。基本は直列4気筒2リッターターボひとつなのに、過給圧やPCマップの違いで190psと252psの2種類の仕様を揃えた。前者を「T4」グレードに搭載、ハイパワー仕様の後者を「T5」に積んでいる。パワーユニットは共通の直列4気筒で2リッターなのに、パワーの高低をラインナップするのは異例である。
駆動方式はFFとAWD。FFは「T4」のみ、ハイパワーの「T5」ではAWDだけの設定になる。
味付けによって3種類のグレードスタイルが用意されている。もっともカジュアルなのが「モメンタム」、高級感を強調したのが「インスクリプション」、もっともスポーティなのは「Rデザイン」といった個性の住み分けがされている。
たとえば190psのエンジンが欲しいとなった場合は「T4」から選ぶことになる。グレードは「モメンタム」が気にいったとしよう。そこからさらにFFかAWDの選択に迫られる。タイヤも18インチと20インチが選択可能だ。
さらに付け加えれば、「Rデザイン」などは、外装色が6色。内装色は4パターン。どれを選択していいか悩んでしまう、
ライバルはQ2やGLA
その豊富な品揃えが、鼻息の荒さを物語っている。インポーターは輸入販売会社だから、本国がラインナップするすべてを輸入するわけではない。日本市場を吟味して、売れるモデルだけを取り寄せるのが通例だ。売れる見込みのないモデルをラインナップするのは、コストがかさむからだ。
でもユーザーの気持ちを考えれば品揃えは増やしたい。あるいは売る自信があれば品揃えを増やす。ライバルであるアウディQ2やメルセデス・ベンツGLAがグレードを絞り、ピンポイントで販売攻勢をかけているのとは対照的である。それがつまり、ボルボジャパンのXC40にかける意気込みと自信の表れのような気がする。
試乗に与えられた2日間がまったく飽きなかったのは、それぞれのXC40が個性的だったからだろう。
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「木下隆之の試乗スケッチ」は、レーシングドライバーで自動車評論家の木下隆之さんが、今話題の興味深いクルマを紹介する試乗コラムです。更新は原則隔週火曜日。アーカイブはこちらから。
木下さんがSankeiBizで好評連載中のコラム「木下隆之のクルマ三昧」はこちらから。
【プロフィール】木下隆之(きのした・たかゆき)
ブランドアドバイザー ドライビングディレクター
東京都出身。明治学院大学卒業。出版社編集部勤務を経て独立。国内外のトップカテゴリーで優勝多数。スーパー耐久最多勝記録保持。ニュルブルクリンク24時間(ドイツ)日本人最高位、最多出場記録更新中。雑誌/Webで連載コラム多数。CM等のドライビングディレクター、イベントを企画するなどクリエイティブ業務多数。クルマ好きの青春を綴った「ジェイズな奴ら」(ネコ・バプリッシング)、経済書「豊田章男の人間力」(学研パブリッシング)等を上梓。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。日本自動車ジャーナリスト協会会員。
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