気になる市販モデルは…
さて、ここまで読まれた方はレクサスボートの発売時期が気になることだろう。トヨタ自動車マリン事業室長の上田孝彦氏によると、発売に関する問い合わせは増えており、豊田章男社長からは「いつまでコンセプトなんだ」と発破をかけられているそうだ。上田氏によると、市販第一号モデルは今回試乗した42フィートから大幅にサイズアップした60フィートクラスで開発を進めているという。「十分な居住スペースを確保しつつ、オーナー自ら操船して『走る』ことを楽しめる上限を考慮すると、60フィート前後がベストだと考えています」。
船体を大型化しても革新的なレクサスデザインは積極的に取り込むという。「これまでの大型クルーザーはどれも角ばっていました。(レクサスとしては)安全面を担保しながら、スポーティーで流麗なラインをいかに落とし込むかがポイントになります。ユーザーが望むものに近い実用性とデザイン性をバランスさせて勝負します」。
具体的な発売時期や価格の明言は避けたが、「忘れられては意味がない。購入を検討している人が待てるくらい、可能な限り早く出すことを意識して取り組んでいます。市場の適正価格を視野にレクサスの思想も入れて、戦える値段を考えています。社内でも期待は高いです」と腕を撫す。
レクサスの「優雅な空間」を持ち出す
2016年にメルセデス・ベンツがラグジュアリーボートを発表。英国のアストン・マーティンも同時期にパワーボートをお披露目した。18年には潜水艇のローンチも予定するなど、高級車ブランドによるマリン事業進出は活発化している。ブランド信念の一つに「新たな驚きの創造」を掲げるレクサスも、クルマにとどまらない活動に手を広げることで、「驚き」の体験領域の拡大を狙っている。
レクサス車をマリーナにとめて、そのまま海へ-。筆者がボート試乗を通じて感じたのは、ユーザーが「レクサスの世界観」を陸から海へ持ち出せるようになったということ。これまでレクサス車が提供してきた「驚き」や「おもてなし」を海の上でも体験できるという選択肢ができたのだ。勝手な想像だが、そのうち家や家電、ベビーカーからプライベートジェットまで、レクサスブランドに囲まれた生活が富裕層にとって当たり前になるかもしれない。レクサスのような自動車ブランドは「ライフスタイルの総合プロデューサー」として、クルマを中心に人々の暮らしをより豊かにデザインするポテンシャルを秘めていると思っている。ひょっとすると、今回動きだした「レクサスの提案するマリンライフ」はその一部に過ぎないのかもしれない。