【試乗インプレ】フェラーリの生みの親 アルファの240馬力スポーツハッチを試す(前編)

2016.6.19 17:10

 アルファロメオは、100年以上の歴史を持つイタリアを代表する自動車メーカー。1910年代からモータースポーツに積極的に参加するなどスポーティーなブランドイメージが非常に強く、あのエンツォ・フェラーリが独立してスーパーカーブランドのフェラーリを立ち上げるまで、アルファのレース部門で長きにわたり活動していたことでも知られている。今回の試乗インプレは、そんな“走りのDNA”が宿るアルファの人気ハッチバック「ジュリエッタ」の最上級スポーツモデル、「クアドリフォリオ ヴェルデ」にフォーカスする。(文・大竹信生 写真・瀧誠四郎)

「四つ葉のクローバー」は最高峰の証し

 皆さんの中で「アルファロメオ」といえば、どのモデルを思い浮かべるだろう。筆者が初めてアルファの存在を知ったのは、まだ小学生だった1989年。スバル好きの父親がコンビニで手にしたVHSが、(なぜか)初代レガシィRSとアルファロメオ164の2本立てで、家に帰って食い入るようにビデオを見たのを覚えている。日本では見慣れないその独特のフォルムが子供なりに衝撃的で、「うちのお父さん、このクルマを買わないかな~」なんて密かに期待してしまったものだ。

 そんなちょっとした憧れだったアルファが昨年、5ドアハッチバック「ジュリエッタ」に新たなモデルを追加した。スポーツタイプの新型「クアドリフォリオ ヴェルデ」(以下QV)だ。クアドリフォリオとはイタリア語で「四つ葉のクローバー」の意味。QVはアルファのラインアップにおいて、それぞれの車種の最高峰モデルに与えられる特別な“称号”だ。

 ジュリエッタQVのフロントフェンダーには三角形のバッジがあしらわれており、その中に四つ葉のクローバーが描かれている。このバッジこそが、標準グレードと一線を画す最上級モデルだと一目でわかるQVのシンボルマークなのだ。

本格派スポーツカー「4C」と同様のエンジンを搭載

 この他にも、ジュリエッタの最高峰の走りを支えるQV専用の装備はたくさんある。一番注目すべきポイントは、アルファの本格的スポーツカー「アルファロメオ 4C」と同様の1.7リッター直4ターボエンジンを受け継いでいることだ。アルミ製のシリンダーブロックを採用することで大幅に軽量化し、最高出力240ps、最大トルク30.6kgmを発生するハイパフォーマンスユニットを車体前部に搭載。標準モデルの1.4リッターターボと比較して70馬力、トルクは5.1kgmもパワーアップしているのだ。ちなみに0-100kmの発進加速は、ルノー・メガーヌRSと同じ6秒フラットだという。

 トランスミッションは6速デュアルクラッチATを組み合わせている。マフラーは左右2本出しで、サスペンションもQV専用だ。このスペックを見ると、おのずと試乗が楽しみになる。いざアクセルを踏み込んで、千葉県の幕張方面を目指した。

 走り始めて最初に気付いたことは、外国車にありがちなクセがほとんどないということ。ステアリングを切った時の感覚やブレーキを踏んだ時のクルマの挙動など、まるで日本車を運転しているかのように親しみやすく、違和感なくすんなりと入り込むことができる。クルマの個性に慣れるための“探り”は全く必要ないのだ。

うるさすぎないスポーツサウンド

 それにしても、4Cから受け継いだターボエンジンがとても気になる。そりゃ、このクルマ最大のウリなのだから。期待を込めてグッと踏み込むと、これが素晴らしく刺激的なサウンドを響かせる。よりスポーティーな音を演出するためにサウンドジェネレーターを装着しているとはいえ、さすが本格スポーツカーに搭載しているだけのことはある。これがまた、体に心地良く沁みてくる上品なサウンド。過剰な演出で虚勢を張っている感じは全くない。うるさすぎないのだ。この辺は同乗者への配慮を考えた設計なのかもしれない。

 そしてこのエンジンが実によく回る。低回転から力強いトルクを発揮し、どこまで回転数を上げても息切れすることなくグングンと加速していく。車重はこのクラスでは平均的な1440kgだが、アクセルレスポンスはとても鋭い。街乗りはもちろん、高速道路の合流や追い越しもドライバーに負担をかけることなく余裕でこなす。過給は2000回転前後から効くため、ターボラグを感じることなく軽快に突き進む。

アルファ独自のトランスミッションには弱点も

 6速デュアルクラッチATも非常に滑らかで、変速ショックはほぼ皆無。気持ちのいい加速感と乗り心地を上手にアシストしている。しかし、弱点もあった。地下駐車場での徐行時など、20キロ以下の超低速域ではガクンガクンと前後に揺れる場面が多々あった。ちょっと前に試乗したVWゴルフ・トゥーランのデュアルクラッチが1000~1500rpmでも滑らかだっただけに、余計に目立ってしまった。

 走行モードは「ダイナミック」「ナチュラル」「オール・ウェザー」の3つから選べる。走行性能を最大限に引き出すなら「ダイナミック」。エンジンやハンドルレスポンスが高まり、クルマを操る喜びを満喫できる。ATからMTモードに切り替えて、ステアリングの裏側にあるパドルシフトを使って運転すれば、ちょっとしたレーサー気分を味わえる。ちなみにシフトレバーでも「+/-」で変速可能だ。

これはもうスポーツカー

 QV専用サスを履く足回りはやや硬め。前輪駆動(FF)ながら、コーナーを理想的なライン取りで意のままに駆け抜け、直線ではしっかり路面をつかんで安定感をもたらす。アスファルトの凹凸も余韻を残さず一発でカット。ただ単純にスポーツ性能だけを希求しているわけじゃない。乗り心地だってとっても上質なのだ。素直で滑らかなハンドリング、アスリートのようにバランスよく鍛えた足回り、スポーツカー譲りのパワーユニットがもたらす抜群の運動性能と操縦安定性で、抜かりない走りを披露してくれる。別にサーキットで走らせたわけではないが、Cセグメントのスポーツモデルの中でも「トップクラスの走行性能を誇るのではないだろうか」と思わせてくれるほど、走りの完成度の高さには驚かされた。ハッチバックの形をしているが、ジュリエッタQVはほぼスポーツカーなのだ。(産経ニュース/SankeiBiz共同取材)

 ※前編はここまで。次回掲載する後編ではインテリア、エクステリアやジュリエッタの総評をお届けします。乞うご期待。

■主なスペック(アルファロメオ・ジュリエッタ クアドリフォリオ ヴェルデ)

全長×全幅×全高:4350×1800×1460ミリ

ホイールベース:2635ミリ

車両総重量:1440キロ

エンジン:直列4気筒16バルブ インタークーラー付ターボ

総排気量:1742cc

タイヤサイズ:225/40R18

最高出力:170kW(240ps)/5750rpm

最大トルク:300Nm(30.6kgm)/1850rpm

トランスミッション:6速デュアルクラッチAT(Alfa TCT)

駆動方式:前輪駆動

燃費(JC08モード):10.8キロ/L

車両本体価格:394万円(税抜)

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