ロボット活用で変わる農業 完全無人運転のトラクター実用化も
農業従事者の減少や高齢化を受け、ロボットを農業に応用する研究が加速している。特に農業機械の主力であるトラクターは、自動運転型の試験販売が始まり、遠隔操作による完全無人運転の実用化も目前だ。夜間、誰もいない農場で黙々とロボットが作業するのも夢物語ではない。肉体労働をできるだけ減らし、農家は知恵や経験が必要な作業に特化する。ロボットと人間の協業が農場で始まろうとしている。
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◆位置情報の精度向上
直進走行を自動化して手放し運転ができるアシスト型の農機は既に市販されている。ただ、無人運転には精度の高い位置情報が必要だ。これまでは、米国が運用する衛星利用測位システム(GPS)の情報と、地上の基地局の電波による補正情報を組み合わせて使ってきた。衛星が常に真上にあるとは限らず、地形の影響を受けて10メートル近い誤差が出ることもある。
しかし、6月1日に準天頂衛星「みちびき2号機」が打ち上げられ、年内に3、4号機も打ち上げられる。日本上空を各機が交代しながら24時間カバーできるようになる。真上から電波を受けるため、位置情報の誤差は数センチまで縮まると期待されている。
制度面でも、農林水産省が「道路では自動走行させない」「農場には使用者以外は立ち入らない」などを盛り込んだガイドラインを3月にまとめた。こうした条件整備を受け、クボタは6月1日、自動運転できるトラクターの試験販売を始めた。
農水省のガイドラインは、人が農場で見守ることを大前提としており、北海道大大学院農学研究院の野口伸教授らのチームは、次の目標を遠隔操作による完全無人運転に置いている。それには、ロボット化された農機が自分で周囲を観察して、異常や危険を察知し、停止や回避する必要がある。
同大の札幌キャンパスの農場で、実験中のロボットを動かしてもらった。位置情報の受信機や多数のセンサー、内部には周辺を監視するためのカメラが備えられている。周りに障害物の気配を感じると、ブザー音を発して自動停止する。
実験では作業者が同伴し、タブレット型のコンピューターから、姿勢、速度などを制御したが、遠隔操作も可能だ。「数年後には、耕運、整地、代かきなどは夜間の作業も可能になる」と野口教授は予想する。
北海道・石狩川の河口から約40キロ上流。旧美唄川との合流点に950ヘクタールの広大な北村遊水地が広がる。ここが今秋から、完全無人運転の実証フィールドとなる。野口教授は「実用化のためには、研究者、機械技術者、利用する農家など、多様な関係者が連携して試行錯誤を繰り返すことが重要だ」と強調する。これまでも140人の農家で構成する「いわみざわ地域ICT農業利活用研究会」と協力して、さまざまな実験を重ねてきた。
例えば、気象や土壌データを解析することで、病害虫の発生や収穫期、収量を縦横50メートル単位で予測できるという。発育が遅れている場所に多めに肥料を与えるなど、きめの細かい作業が可能になる。
肥料や農薬の無駄を省け、経営を効率化できる上、農薬の過剰な投入を避けることで農産物の安全性や環境保全にも寄与する。北村遊水地では、電波の利用や道路交通法など実際の制約を踏まえて、具体的な検証に取り組む。
◆AIで熟練作業解析
もちろんロボットが全ての農作業をできるわけではない。農機の進歩で作業は効率化しているが、千葉県柏市で大規模稲作を営む染谷茂さんは「田んぼの管理作業は雑になってきている」と嘆く。「稲は人の足音を聞いて育つと教えられた。丁寧な見回り作業が不可欠だ」と指摘する。
こうした熟練農家の経験に基づく知恵や技を活用するには、データを大量に蓄積、人工知能(AI)技術を使って解析、学習する機能と、ロボットの作業を組み合わせることが有効だ。頭脳を持った農機が最適な農作業を追究する。この研究も日進月歩だ。
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【用語解説】農業分野へのデジタル技術の応用
欧米では「スマート農機」と呼ばれ、農機とITの融合が進んでいる。日本のロボット技術を活用すれば、精度が高い効率的な農業が可能になる。ただ、農場での労働力確保が課題になっている点で、日本は特殊。労働力が豊富な途上国や新興国、移民を受け入れている先進国では、ロボットより安い労働力を確保できる。無人化にこだわりすぎると、旧型の携帯電話のように高機能だが値段が高く、日本国内でしか通用しない「ガラパゴス化」する恐れもある。
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