稲田防衛相に「集中砲火」 PKO日報問題、奇抜服装で信頼失墜 監察結果公表も遅れる

 
記者会見中に厳しい表情を見せる稲田防衛相=21日午前、防衛省

 菅義偉官房長官は20日の記者会見で、南スーダンの国連平和維持活動(PKO)の日報問題に関する防衛省の特別防衛監察について、稲田朋美防衛相が調査対象になるとの認識を示した。制度上、稲田氏は監察の対象外で、異例の対応となる。稲田氏は陸上自衛隊が保管していた日報の電子データ隠蔽(いんぺい)に関与していないと強調するが、混乱の背景には稲田氏がこれまでの言動で防衛省・自衛隊内の信頼を失ったこともある。

 菅氏は記者会見で「防衛監察本部から求めがあれば、稲田氏ら政務三役が協力することになる」と述べた。

 菅氏は会見で稲田氏の資質を問われ「責任を果たしている」と擁護したが、振り返れば稲田氏は昨年8月3日の防衛相就任直後から混乱を巻き起こしてきた。

 稲田氏は8月中旬に自衛隊の部隊視察のため外遊し、自身が例年行ってきた終戦の日の靖国神社参拝を見送った。外遊の出発時に派手なサングラスと野球帽というリゾートルックで空港に現れ、周囲をあぜんとさせた。その後も奇抜な服装が目立ち、防衛省関係者は「服装を改めるよう進言しても聞き入れられなかった」とため息を漏らした。

 弁護士としての自負が強く、報告では法的根拠の説明を求めた。多くの憲法学者が自衛隊を違憲と見なす中、法令解釈の実務も背広組に委ねてきた制服組幹部には、さらに不満が募った。「あなたたちは司法試験にも受かっていない」と言い放たれた幹部もいた。

 稲田氏も制服組に不信感を募らせていた形跡がある。制服組幹部のインタビューが新聞に掲載された際は「私の答弁は応答要領でがんじがらめにされているのに、なぜ制服組が自由に話せるのか。文民統制はどうなっているのか」と周囲に不満をぶつけたという。

 安全保障に疎いことは自身も認めていたが、先輩から学ぶ姿勢にも欠けた。自民党の国防族議員と関係を築けず、重鎮にぞんざいな口をきいて激怒させた。森本敏元防衛相ら防衛相政策参与3人は昨年末、そろって辞任。「稲田氏が煙たがった」(防衛省幹部)との見方がもっぱらだ。

 国会答弁も不安定だった。学校法人「森友学園」(大阪市)の過去の訴訟に代理人として出廷していたことについて「全くの虚偽だ」と突っ張ったが、後に「記憶違いだった」と訂正し、謝罪に追い込まれた。

 安倍晋三首相の信任が厚い稲田氏への批判は国民の耳目を集める。「日報データの隠蔽に稲田氏が関与していた」との報道は、責任追及の目をそらしたい陸自側が情報をリークしたとの見方が省内でも根強い。

 日報問題に関する野党やマスコミの稲田氏への集中砲火は、そのもくろみが「成功」したことを裏付けているが、稲田氏の信頼の失墜が影響していることは間違いない。(杉本康士、千葉倫之)

 稲田防衛相は21日の記者会見で、PKO日報問題をめぐる特別防衛監察に関し、「私もできるだけ早く協力したいと考えており、現在、防衛監察本部と日程など細部を調整している」と述べ、近く聞き取り調査に応じる姿勢を示した。

 稲田氏自身が陸自で発見された日報データの非公表方針を了承したとの疑惑については「私は一貫して情報公開を推進し事実解明に取り組んできた。非公表や隠蔽を了承する行動はこれまでの私の姿勢と真逆で相いれない」と否定。進退に関しては「なすべきことをやっていきたい」と語り、辞任しない考えを重ねて強調した。

 また、「私の責任のもとで調査を行い、できるだけ早く結果を公表したい」と、監察結果の月内公表に言及した。とはいえ、公表は当初検討されていた21日からずれ込むことになった。

 特別防衛監察は、防衛相直轄の防衛監察本部が実施しており、制度上は稲田氏ら政務三役は調査の対象外となっている。

 菅義偉官房長官は21日の記者会見で、「(監察本部は)元検事長を長に、現役検事が参加した独立性の高い立場だ。徹底した調査を行い、事実関係を明確に示したい」と明言した。