立憲民主・枝野幸男代表演説詳報 「党を立ち上げるには迷いもあったが…」

 
南海堺東駅前で街頭演説する立憲民主党の枝野幸男代表=15日午後、堺市堺区(沢野貴信撮影)

 衆院選投開票(22日)に向けて最後の日曜日となった15日、立憲民主党の枝野幸男代表は名古屋市のJR名古屋駅前で、経済政策や介護・保育従事者の処遇改善を中心に演説を繰り広げた。詳報は次の通り。

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 立憲民主党代表の枝野幸男でございます。雨にもかかわらずたくさんの皆さんにお集まりをいただき、まずは本当にありがとうございます。

 10月2日に立憲民主党、新しい党を立ち上げることを呼びかけさせていただきました。「このままでは、この総選挙、入れる政党がない」「私たちの声を受け止める政党がない」-。たくさんの皆さんからそういう声をいただきました。そうした声に押されて、民主党、民進党と積み重ねてきた理念・政策をベースにしながら、多くの皆さんが今、政治に声が届いていない、政治から遠くにいる、そんな思いの国民の皆さんの声をしっかりと受け止めるべく、立憲民主党という新しい旗を掲げさせていただきました。

 今までの政治、「上からの政治」だったんじゃないでしょうか。政治のやり方も、政策も上から。国民生活が見えていない、国民の声が見えていない、そうした「上からの政治」を「草の根からの政治」に、暮らしの足元にしっかりと目を向けた政治に変えていきたい。それが立憲民主党の大きな大きな旗だと私は思っています。

 暮らしと経済。(安倍晋三政権の経済政策である)アベノミクスの5年。株価は上がりました。大きな企業のもうけは増えて、内部留保という企業のいわば預貯金は過去最高になりました。「強い者をより強くすれば、そこに引っ張られて世の中全体がよくなるはずだ」「豊かな人が豊かになれば、その豊かさのおこぼれで、みんなが豊になるはずだ」。アベノミクスはこういう考え方で、5年、やりました。

 じゃあ、本当にあなたの暮らしは引っ張り上げられましたか? あなたの暮らしのところに豊かさは行き渡っているでしょうか?

 残念ながら、むしろ格差が拡大をする。貧困の問題がますます深刻になる。結果的に、日本社会そのものが分断をされて、遠心力が働くようになってしまっているんじゃないでしょうか。これで本当に経済を活性化し、社会が元気になり、暮らす人々の暮らしが安心になっていくんでしょうか。

 「上からの経済政策」は限界だ。私はそう思います。豊かな者を豊かにすれば、強い者をより強くすれば、全体が引っ張り上げられる。これは戦後復興や高度成長の時代にはある意味でうまくいった考え方です。大きな輸出企業がもうかれば、そこで働いている人たちの給料が上がる。取引している中小・零細にも仕事が増える。新しい工場がどんどんできて、新しい雇用の場も広がる。あのときの成功体験そのままに、20世紀の政治を、政策を安倍さんはやっている。

 でも、残念ながら、大きな輸出企業、もうかっても、新しい工場はなかなか作りません。給料もそれほど上がりません。中小・零細企業もなかなか、経営、そこに回っていくお金は増えていきません。企業の内部留保だけがたまっていく。それは、時代が変わったのに古いやり方をしているからです。

 少子高齢化、人口減少、新興国の追い上げという21世紀においては、上から強い者をより強くする、こういう政策のやり方ではなくて、社会を下から支えて押し上げる、むしろ格差を是正し貧困に真正面から向かい合う、これこそが今求められている日本の再生の道だと私たちは考えています。

 格差が拡大をしているから景気が悪いんですよ、皆さん。日本の不況は、安倍さんの話聞いているとねぇ、民主党政権のときに不況になったかのような勘違いさせられません? バカ言ってもらっちゃ困りますよ。その前にリーマン・ショックでドスーンと落ちたところから、われわれは受け継いだんです。引き継いだんです。それを一歩ずつ改善させていったんです。

 このリーマン・ショックみたいな波はありますが、実は、一定年齢以上の方は実感あると思います。あのバブル崩壊を境に、日本はもう30年近くにわたって経済が低迷しています。波はあるけれどもずっと低迷しています。なぜか。それは消費が冷え込んでいるからなんです。国内でモノやサービスが売れないからなんです。

 輸出は、ご当地のトヨタ自動車さんなんか含めて、世界経済の影響で波がありますよ。新興国の追い上げで大変ですよ。それでも、実は、そのバブル崩壊の前の時代と比べて、日本の輸出産業の成長力はほとんど落ちてないんです。落ちたのは国内でモノやサービスが売れなくなった。これで経済、低迷してるんです。

 その原因は、一つは人口減少です。お客さんが減ってるんですから。売れ行き下がるのが一般です。でも、それ以上に大きいのは、格差が拡大しているからじゃないですか。年収500万の人が200万に減ったら、300万円、消費減るじゃないですか。年収100万の人が300万になれば、増えた200万、消費に回るじゃないですか。所得の低い人ほど手にした収入の大部分が消費に回ります。この人たちの所得が増えるか減るかは、消費に直接つながるんです。

 一方で、お金持ち、年収1億、2億の人が、株が上がって年収増えたからといって、全部使いますか? 使いませんね。投資や貯蓄に回したりして、消費される比率は低いんですよ。だから「一億総中流」と言われていた分厚い中間層が減って、ちょっとだけお金持ちが増えて、減った分の大部分は苦しくなった。これでは消費が落ち込むの、当たり前なんです。ここに目を向けていないから、いくらアベノミクスをふかしても、経済の本格的な回復にはならないんです。

 この本質にきちっと目を向けて。だから、格差の是正は貧困対策だ。貧しい人が気の毒だからだけではないんです。日本社会、日本経済の活力を取り戻すためにも、格差は是正しなきゃいけないんです。みんなのために、社会全体のために、格差を是正しましょう。貧困に立ち向かいましょう。私たちは自信を持ってそのことを皆さんにお訴えをさせていただきたい。

 具体策はたくさんあります。一度にいろんなことをやらなければいけません。でも、大事なことを2つだけ、この選挙で私は申し上げています。

 一つは「きちっとしたルールに基づく経済にしよう」ということです。

 自由にすれば、競争させれば、経済はよくなる。こうした新自由主義と呼ばれる考え方が蔓延をしてきました。確かに、資本主義経済というのは自由な競争。競争がなければ進歩はありません。でも、自由な競争には前提があります。公平公正なルールがあること。そのルールがきちっと守られること。このことなき競争は競争ではありません。

 ルールを作る責任は誰にありますか。政治にあります。ルールを守らせる責任は誰にありますか。政治にあります。これをやってきていないから、おかしな競争、そのひずみで格差と貧困を生んでいるんです。

 その代表が労働法制、働き方のルールじゃないでしょうか。非正規雇用が増えて、いまや4割。そのうち少なくとも半分は、不本意ながら非正規雇用。非正規雇用の多くがいわゆる派遣です。二十数年前まで、派遣労働で働いている人は、どちらかというと恵まれていたんです。特別な技術・技能を持った専門的な仕事以外には認められていなかったんです。これを、労働法制を改悪に改悪を重ねて、今まで正社員がやるのが当たり前だった仕事を派遣に置き換えていった結果として、非正規がこんなに増えてしまったんです。元に戻しましょうよ、皆さん。

 働く側からすれば、働くというのはどういうことですか。そのことによって、自分が、家族が、生活を営む、暮らしていく、そのためには、一定の安定的な雇用がなければ、そしてある程度生活していくためのお金がもらえなければ、働くということの意味が違っているじゃないでしょうか。

 そうした、働く側に立った労働法制に、一気にはできないです、中小・零細潰れちゃいますから、段階的に戻していこうじゃありませんか。 そして、過労自殺。ブラック企業。サービス残業。ただでさえ働き方のルールが守られていないです。ちゃんと守らせましょう。

 しかも、安倍政権は、この選挙がなければ秋の臨時国会で「残業代ゼロ法」を作ろうとしていたんですよ。制度があっても、残業代払わずにサービス残業させている。それを取り締まることもできないのに、堂々と「残業しても残業代払わない」。そんな仕組みを作ろうとしているんですよ。

 逆じゃないですか。私たちは、むしろ長時間労働を是正させる。残業したら、働いたら働いただけお給料払う。当たり前じゃないですか。その当たり前のことを守らせる。ルールに基づいた市場競争というものをしっかりとやることによって、ゆがんだ格差や貧困に対して立ち向かっていきたいと思っています。

 もう1つは、所得の低い人たちの所得の底上げです。お金をただばらまくだけでは持続可能性がありません。効果的なところ、必要なところにちゃんとお金を回す。そして賃金を底上げをする。

 その代表が介護と保育です。需要があるのに、人手不足でサービスが提供できない分野なんです。

 特別養護老人ホームを待っていらっしゃる方は万単位で全国にいます。特別養護老人ホームのベッドは1割以上空いています。ベッドはあるのに、待っている人はいるのに、なぜ空いているんでしょうか。働いてくれる人が集まらないからです。なぜ集まらないのか。命にかかわる責任の重い仕事で、体も使う重労働で、でも賃金が安すぎるから、意欲を持ってその仕事に入った人でも、長く続けられない人たちがたくさんいます。

 保育所が足りない問題も、土地や建物の問題もあります。でも、新しい保育所を作ろうとしても、なかなか保育士さんを集めるのが大変です。これも賃金が安すぎて重労働で、なかなか、資格を持っていても、例えば一度家庭に入られた方が「職場復帰しよう」、そう思っていただけません。

 おかしいんです。この国は資本主義の国です。資本主義の国では、価格は、需要と供給のバランスで決まるんです。ほしい人がたくさんいて、売っているものが足りなければ、値段は上がるんです。たくさん売っているけどほしい人が少なければ値段下げなきゃ売れないんです。

 賃金の基本もそうです。需要があるんです、介護も、保育も。人手がなくて困っているんです。普通はその賃金は上がるのが当たり前なんです。上がっていない理由は政治にあります。

 なぜなら、介護保険も、保育所の制度も、政治がそこにどれぐらいのお金を回すのか決めているからです。政治がコントロールして、押さえ付けているからです。だから、需要があって、もっと賃金を払ってでも人を集めたいけど、介護施設も保育所も払いたくても払えないんです。その結果、老後の不安や子育ての不安につながっているんです。

 この必要なところ、本来高く給料を払うべきところにしっかりと公のお金、回しましょうよ。

 時代遅れの大型公共事業にカネ使うよりも、こうした人の賃金に限られたお金回したほうが、もともと低所得ですから、給料が増えた分は、消費に回るんです。そして、そうした仕事、もっともっと人が集まってくるならば、需要はあるんですから職場の数も広がっていくんです。そして、老後の安心や子育ての安心につながるんです。一石二鳥、三鳥じゃないですか。

こういう暮らしの足元にしっかりとお金を回して社会を下から支えて押し上げる、これが私たちの掲げる新しい時代の社会政策、経済政策だということを、ぜひ皆さんに強くお訴えをさせていただきたいと思っております。

 暮らしの足元に光が当たらず、上からの経済政策、社会政策になっているのは、政治が「上から」になっているから。

 安全保障法制の話は、(先立って演説した立候補者らの)皆さんがされたと思います。何よりも、私は、おかしいのは、まさにわが党の党名、「立憲主義」というものを理解しない政治がまかり通っているということです。

 安倍さんが総理大臣としての権限を持っているのはなぜですか。国会議員が法律を作るという権限を持っているのはなぜですか。安倍さんは、選挙に勝ったからだと勘違いしています。選挙に勝ったからというのは、半分でしかありません。憲法で決められたルールに基づいて選挙で勝ったから総理大臣なんです。

 そして、その憲法には、総理大臣は何でも好き勝手やっていい、なんて書いてありません。憲法で決められた枠の中で権限は使いなさい、と。その権限を委ねられているに過ぎない。これが立憲主義なんです。近代国家では当たり前の大前提なんです。この立憲主義をわきまえない権力は、18世紀、19世紀の権力ですよ。

 安倍さんは勘違いをしている。だから勝手に解釈を変える。

 しかも、集団的自衛権は行使しない、できない。アメリカから押し付けられたわけじゃないですよ。野党から言われて渋々決めたルールじゃないですよ。歴代自民党政権自ら決めて、そして「集団的自衛権を使うときには憲法を変えないとできないんだ」と、自分たちで言い続けた自分たちを縛るルールなのに、勝手に変えてしまう。こんなルールなき権力は許してはならない。まっとうな政治、立憲主義を私たちは取り戻していきたい。そう思っています。

 民主主義もゆがめられています。確かに、民主主義に多数決はつきものです。でも、民主主義と多数決はイコールではありません。安倍さんはここを勘違いをしています。だから「上からの政治」になっています。

 本来の民主主義は「みんなで決める」ということです。1億2000万国民が主権者なんですから、国民みんなで決めるというのが民主主義です。

 でも、1億2000万人みんなが集まって相談はできません。みんなの意見が全部一致するということはありません。でも、みんなで決めるんだから、みんなに資料、情報を提供して、みんなで考えて、そして国民の声に耳を傾けながら、できるだけみんなの意見を一致させよう、その努力を積み重ねて、そして、どうしても一致しないときに、最後に多数決という手法がとられるんです。

 皆さんは選挙で勝った人間に白紙委任をするんですか? そんな人いないでしょ?

 「この人がこの中では一番いい」と思う、だから投票するんであって、じゃあ、勝ったら何をしてもいいんだ、そういう一票を投じているんですか、皆さんの民主主義は。違うんですよ。

 選挙でだれかを選ばなきゃいけないけれども、でも、選挙で選ばれた人間も、国民の世論に耳を傾けながら、できるだけ多くの国民に理解、納得してもらいながら、物事を進めていく。これがまっとうな民主主義というものじゃないでしょうか。

 数を持ってるから、権力を持っているから好き勝手やっていいんだ。森友、加計(学園問題)のように、情報も隠していいんだ。説明、説得なんかしなくていいから、共謀罪のように、大臣自身が中身を分かっていない、それでも時間を経過させたら強硬に採決する。これでいいんだと勘違いをしているんですよ。

 本当の民主主義を取り戻しましょう。もちろん皆さんの意見を全部は聞けないこともある。即断即決しなきゃならない、スピードが求められるときもある。でも、最大限、国民の皆さんに耳を傾ける。国民の皆さんに理解してもらうように説得する。

 それがベースでなければ、ただでさえ、社会の価値観が多様化しているんですよ。一億総中流といわれた時代に比べて、都市と地方、高齢者と若者、持てる者と持たざる者、それぞれの暮らしも多様化しているんですよ。それを誰かが「エイヤー」「ボン」では、社会の不安と不満が高まっていって、社会に遠心力が強まります。

 だからこそ、多様な意見や多様な立場に目を向ける、耳を傾ける、そうした「草の根の民主主義」が必要な時代なのではないでしょうか、皆さん。

 10月2日に党を立ち上げました。でも、党を立ち上げるには正直言って、迷いました。

 お金もない。先行きどうなるか分からない。自分の選挙だけ考えれば、無所属でもまぁ戦えそうだし。無所属なら、今ごろ、埼玉の大宮で私はマイク握っているんです。

 でも、最後に背中を押したのは、国民の皆さんです。「永田町の内側の事情、政治家の事情よりも大事なことがあるだろう」「受け皿がない。選択肢がない。俺たちの声を聞け」「俺たちの声を届ける受け皿をしっかり作れ」。国民の皆さんに「枝野、立て」と背中を押していただいたから、立憲民主党は立ち上がりました。

 いろんな仲間、事務所をあげて、いろんな人たちでこの党を立ち上げて、ここまで来るのには、本当に汗をかいてやってもらってきていますが、でも、立憲民主党は何かと言われれば、私の背中を押して「立て」と言った、立憲民主党を作ったのはあなたです! 国民の皆さんが作った、国民の皆さんが背中を押したからできあがった政党が立憲民主党だということを、私は、その代表であることを、大変誇りに思っています。

 「1票を投じてください」というお願いの仕方はもうやめました。

 なぜならば、私たちのために投票してもらうんじゃないからです。皆さんのあしたの暮らしのために。私たちも100点満点ではありません。永田町の常識から飛び出たつもりですが、いろんなものがまだ残ってるかもしれない。だから皆さんにしっかりと叱咤激励していただかなければ、まっすぐに進んでいけないかもしれない。

 でも、新しい選択肢を提示をさせていただきました。私たちが扉を開くんじゃありません。私たちの背中を押していただいた、あなた! 新しい民主主義の扉を開く当事者です。だから、皆さん、私たちと、一緒に戦いませんか! 一緒に戦ってくれませんか!

 まわりの、まだ諦めている人たちに、「どうせ政治なんて」と思っている人たちに、一人でも多くの人たちに、私たちの代わりにではない、皆さんが当事者として、一人でも多くの人たちに声をかけて、一緒に戦って、一緒に新しい扉を開きましょう。

 私たちは、皆さんとともに歩んで、「日本の民主主義はこの選挙から大きく変わり始めた」、必ず皆さんにそう言っていただける、その流れを作っていきます。どうぞ皆さん、一緒に頑張りましょう。私にはあなたの力が必要です! どうぞよろしくお願いいたします! ありがとうございます!