《投信を知る》(4)〈世界株式投資のカギ〉グローバル分散投資の重要性

マネー講座

 前回は、世界株式投資を成功させるためのカギのひとつである「①長期継続投資」についてご説明いたしました。今回はもう一つのポイントとなる「②グローバル分散投資」についてみていきましょう。(みずほ証券 石隈鉄太郎)

リスクを抑えたいときこそ分散投資をしよう

 分散投資とは、集中投資の対義語として使われる用語で、投資対象を特定のものに限らずに幅広く投資することをいいます。

 分散投資の重要性を示す格言として、「卵を一つのカゴに盛るな」という言葉があります。これは、卵を一つのカゴに盛る(1銘柄だけに投資を行う)と、カゴを落とした場合に卵全てが割れてしまう(下落時に大きな損失を被る)ので、複数のカゴに分散して持つ (複数銘柄に資金を分ける)べきだ、ということを表現しています。

 例えば、値動きが異なる複数の資産(株式と債券)に資金を分散させた場合を考えてみましょう。リスクオフで株価が下落した場合でも、債券価格が上昇すれば全体では株価の下落によるマイナスの影響が緩和されて、収益の安定化が期待できるわけです。このことを投資の世界では「資産配分(アセットアロケーション)」と呼んでいます。投資資金を複数の投資対象に分散することで、リスクを低減しつつ安定的なリターンを獲得することが期待できます。この投資対象の『分散(配分)』にはいくつかの種類があり、上述の「資産配分の他にも、代表的なものとして「国・地域の分散(グローバル分散)」、「通貨の分散」、「時間の分散」などがあります。

 ここからは実際のデータを用いて「資産配分」と「国・地域の分散」の効果を確認していきましょう。

資産分散とグローバル分散を行った際の投資効果

 図は、個別資産と、各資産へ均等に配分したポートフォリオ(分散ポートフォリオ)について各年のパフォーマンスと順位を表しています。

 ここでご注目頂きたいのは、各年で個別資産の順位が大きく変化している点です。これは様々な要因により各地域の経済状況や金融政策、各資産の需給関係などが変化をしていることが考えられますが、変化のもととなる様々な要因を将来にわたって予想することは難しく、個別資産だけに投資する場合、パフォーマンスは不安定になりがちです。一方で、分散ポートフォリオのパフォーマンスに目を向けると、どの年も概ねランキングの中間に位置しています。

 つまり、値動きの異なる複数の資産や、経済状況の異なる国・地域に分散投資を行った場合、最終的なパフォーマンスは個別資産を単体で保有するよりも安定するわけです。これこそが分散投資の効果です。

分散投資でパフォーマンスの向上も期待できる

 分散投資の効果として期待できるのは収益の安定化だけではありません。資産と国・地域の分散をうまく組み合わせることで、相対的に安定性を高めつつ、パフォーマンスの向上が期待できます。

 図で確認しましょう。これは1994年12月末~2017年8月末までの3つのシミュレーションによるパフォーマンス推移を表しています。この期間に日本株だけを保有していた場合には、100であったものが143.3となっています。これに日本債券を加えて半々で保有した場合は170.3となりました。資産を分散することでパフォーマンスが向上しているのがわかります。

 次に海外資産に注目してみましょう。低成長の日本と比べて海外の成長率は相対的に高いため、海外株式も魅力的なパフォーマンスが期待できます。

 前述のポートフォリオに先進国の株式、債券を加えた4資産ポートフォリオでは287.0、これに新興国2資産を加えると374.1となります。このように国、地域、そして資産を分散することでパフォーマンスが大きく改善しています。

 しかしながら、パフォーマンスの改善が期待できる一方で、海外資産への投資は為替リスクをともなうことから、その分、リスク水準が高まる点には注意が必要です。

 一般的な投資信託では、プロの運用者がリスク水準も管理しながら各資産の良し悪しを見極めた上で投資を行うため、分散効果を享受できる有効な資産運用ツールといえます。

テーマ型ファンドの問題点

 しかし、必ずしも全ての投資信託がこのような条件を満たしているとは限りません。例えば、昨今では科学技術の進展によって人工知能(AI)やビッグデータなどのイノベーションが加速しており、投資の世界においてもAIやビッグデータなどのテーマに注目した商品が多数存在しています。

 このようなテーマ型ファンドは、国・地域といった観点からは分散されているかもしれませんが、業種といった観点では偏りが生じます。つまり、国・地域は分散されていても、投資対象企業のビジネスが偏っているのです。過去の業種ごとのパフォーマンスを見ると、前述した各資産のパフォーマンスと同様に景気サイクルなどに応じて順位は毎年変化しています。

 注目している業種やテーマが選好されている時期は良いのですが、裏を返せばテーマが廃れた際のパフォーマンスは相対的に見劣りするものとなるでしょう。

 また、投資対象をテーマで絞らなければ、他の魅力的かつ割安な業種に投資することができますが、テーマ型ファンドの場合は投資対象がそのテーマによって限られているため、資金がそのテーマに集中する傾向があります。そのため、テーマに関わる多くの銘柄は割高になりやすく、ファンドに資金が流入すれば、そうした割高な銘柄をファンドに組み入れざるをえません。これでは中長期的に良好なパフォーマンスを享受することは難しくなると考えられます。

 今回の連載記事では、投資を行う際に最初に考えていただきたいこと、世界経済に着目する必要性、そして資産形成のカギとなる2つのポイントをご説明いたしました。これらを包括的に運用することが可能な「投資信託」は中長期的に良好なパフォーマンスを獲得するための一つの手段であり、非常に魅力的な投資対象であると考えています。

 ぜひ、今後の投資にあたっては、これまでご紹介したポイントを意識していただき、みなさまの資産形成の一助としていただければ幸いです。

(※マネー講座は随時更新。次回から「NISAを学ぶ」をテーマに掲載します)

【プロフィル】石隈鉄太郎(いしくま・てつたろう)

みずほ証券リテール・事業法人部門商品企画部次長
2002年新光証券(現みずほ証券)入社。支店営業を経て、04年より投資信託関連業務に携わり、旧DIAMアセットマネジメント(現アセットマネジメントOne)や旧新光投信(同)への出向等を経て、16年より現職。現在では、投資信託を中心とした幅広いプロモーションに従事。