内部留保、成長投資への活用を 金融庁、指針で企業と投資家の対話促す

 
金融庁が入る中央合同庁舎第7号館

 金融庁は、企業が積み上げた内部留保を成長投資に回すよう促す指針づくりに乗り出した。企業内にため込まれたお金が、賃上げや設備投資に振り向けられていない現状に政権内で不満が高まっているためだ。企業に内部留保を適正にためたり投資に使ったりしているか説明責任を果たしてもらい、企業統治の強化を促す。年内に方向性を固め、来年の株主総会集中期までに指針を示したい考え。

 金融庁は18日に開いた企業統治改革の有識者会議で議論を始めた。企業の内部留保は、円安進行や景気の回復などを背景に膨らみ続け、平成28年度は約406兆円と過去最高を更新。一方で「設備投資や賃上げへ振り向ける動きは低調」(金融庁幹部)な状況だ。

 麻生太郎金融担当相もこうした現状に「『内部留保に課税しろ』といわれる前に何とかした方がいい」とたびたび苦言を呈しており、金融庁も成長投資につながる指針づくりに乗り出すことにした。

 ただ企業は、世界経済の先行き懸念が強まる中、内部留保を投資に振り向けるのになお慎重だ。金融庁によると、約6割の企業が手元資金を「適正」とみているのがその証左だ。

 一方で、投資家の約8割は企業の手元資金について「余裕ある水準」と不満を隠しておらず、投資家の約6割が企業に成長投資へ振り向けるよう求めている。

 18日の会議では、金融庁の担当者が「企業と投資家の認識の差をどう埋めるかが課題」と指摘。出席メンバーからは「現預金をため込んでいるところがあれば対話が必要だ」とし、開示の強化が必要だと訴えた。

 金融庁は指針の策定を通じ、経営陣が自主的に内部留保を効果的に使えているかを投資家に説明する機会を増やし、賃上げや投資の拡大につなげたい考えだ。

 内部留保 企業の最終利益から株主への配当金などを差し引いて残ったお金を蓄積したもので、貸借対照表では「利益剰余金」として計上される。現金や預金、有価証券のほか、土地や建物、機械設備といった固定資産などさまざまな形態で保有されている。企業は、M&A(企業の合併・買収)や経営危機などに備えて、手元資金に余裕を持たせるために積み上げているとされる。