診療報酬「2%超下げ」提案 来年度予算編成 社会保障費抑制目指す
2018年度予算案の編成に向け、膨張を続ける社会保障費抑制に向けた政府内の議論が25日から本格的に始まった。年末の予算編成に向け最大の焦点となるのが、医師に支払う診療報酬と介護事業者に払う介護報酬をどれだけ下げられるか。ただ報酬の引き下げをめぐっては、医師や薬剤師からの猛反発が避けられず、調整難航は必至の情勢だ。
25日に開かれた財政制度等審議会の分科会で、財務省が社会保障の膨張を抑えるための改革案を提示した。診療報酬では、医師・薬剤師の技術料に当たる本体部分を含めたマイナス改定を主張。民間企業の賃金や物価の水準を上回る上昇が続いてきたとして財務省案では2%台半ば以上の引き下げを提案した。介護報酬も下げるよう求めた。
会合後、記者会見した田近栄治分科会長代理は「この日の会合で、診療報酬も介護報酬も引き下げるべきだという方向で委員の意見が一致した」と述べた。
会合では、財務省が高齢者に対し医療費窓口負担の増額を求める案も提案した。
財務省案では、75歳以上の人が病院の窓口で負担する医療費の割合を現在の原則1割から2割へ引き上げるとした。
財務省が今回、負担割合の見直しを提言したのは、25年以降、団塊世代が全員75歳以上となり、医療や介護など社会保障費が一段と膨らみ現役世代の負担がさらに増えるためだ。財務省では、19年4月以降に75歳となる人の窓口負担を2割に据え置き、それに合わせて既に75歳になっている人たちの負担も段階的に2割へ引き上げるよう求めた。
子育て支援の財源確保に向けた施策も提言。20年度末までに32万人分の保育の受け皿を新たに整備する政策の実現に向け、企業が負担する拠出金の引き上げを求めた。財務省は今回の改革案をたたき台に、厚生労働省など関係省庁との協議を本格化するが、調整難航は避けられない見通し。負担増になる高齢者や報酬の下げで収入が減る医療機関の反発が確実だからだ。
ただ社会保障の改革は待ったなしの状況だ。日本の国・地方の借金は1000兆円を超え、先進国で最悪な水準にある。痛みを伴う改革に切り込まない限り、今の社会保障制度も財政健全化目標の堅持も維持継続が難しい。18年度予算案の編成に向け、安倍晋三政権の改革への決意が試される。
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