突然だった総選挙、「なぜ今」残る疑問 「悪用」される7条解散
高論卓説今週、第4次安倍政権が発足する。来年の自民党総裁選の行方は分からないが、今年12月で丸5年の長期となった安倍晋三政権の、最後の仕上げに入ったということだ。最大の政策目標は憲法改正である。言い換えれば、今回の選挙の目的は、憲法改正実現のために、最大で4年という猶予が与えられたということでもある。その目標設定について異論はないが、多くの国民にそれは伝わっていない。53.68%という低投票率にそれが表れているだろう。
安倍総理は、2つの国難を指摘し、その突破のための解散・総選挙であると表明していたが、それでも「なぜ、今なのか」という疑問は、選挙が終わった今も、国民の中に残っている。それは、解散総選挙の在り方に問題があるからだ。
第1の問題は、突然の解散総選挙であったということである。今回の解散は、いわゆる「7条解散」と呼ばれるもので、内閣が助言・承認を行うことを前提に、天皇の国事行為として行われた。時の内閣が助言・承認をすれば、いつでも解散ができるということで、内閣のトップである「総理の専権事項」と言われている。
しかし、憲法第7条の天皇の国事行為の規定に、全て「内閣の助言と承認」が付されているのは、天皇の権限を制約することを目的としているのであって、内閣の権限を強調するものではない。つまり、本来、衆議院の解散は、憲法69条にのっとり、不信任という国民の意思を持ってのみ行われるべきである。基本的には議員は任期を全うし、その任期で果たした役割の評価を受ける。有権者の意思表示としては、それが一番判断しやすい。いつ、総理の一存で選挙になるか分からないという環境があるがゆえに、国会議員が本来の立法活動よりも、自分の選挙活動を重視するという現状を招いているとも言える。
総理の解散権の制約は、憲法改正すればより担保されるが、改正しなくても、7条解散の「悪用」を、内閣全体で行わないようにすればよいだけである。内閣を構成する政治家の良識があれば済む話だ。
2つ目の問題は、選挙制度である。現行の小選挙区比例代表並立制で今回8回目の選挙となった。最初の選挙から21年たったが、そのうちの3回は、この5年間に行われたことになる。今回は区割りの変更もあり、投票券が送られてきて初めて、自分の選挙区が変わったことを知った有権者も多い。しかし、選挙区がどこであれ、本来国会議員は、政策を掲げる政党の代表者として付託される存在である。
特に小選挙区制では、各選挙区で政党の唯一の候補者となる。選挙区の場所や大小は関係ないはずだが、それには併せて地方分権がなされていることが条件だ。今の日本では、地方議員より狭い範囲から国会議員を選ぶことにはかなりの違和感がある。
比例代表制度の趣旨を適切に運用せず、復活当選のために悪用していることも大きな問題だ。惜敗率の順位付けが公正だと解釈されているが、そもそも重複立候補自体が、政治家の保身であり適切ではない。比例代表には、党の代表としてふさわしい候補者を、政党が責任をもって選び、順位をつけるべきだ。
今回の選挙は、その意味よりも、解散や制度の問題がより浮き彫りになった。選挙は何より、国民のためにある。国民が疑問に思うことは直ちに改善することが、政治家の責務であることを自覚してもらいたい。
◇
【プロフィル】細川珠生
ほそかわ・たまお ジャーナリスト。元東京都品川区教育委員会教育委員長。テレビ・ラジオ・雑誌でも活躍。千葉工業大理事。一児の母。父親は政治評論家の故細川隆一郎氏。
関連記事