【高論卓説】安保大改革、安定政権に期待 北緊迫、他国頼みの防衛がリスク

 

 10月の総選挙直前の本コラムで予想した通り、安倍晋三首相率いる自民党が圧勝した。ただ、そこでも言及したが、もろ手を挙げて安倍政権を称賛しているわけではない。他党が政権を担うよりは明らかに良いし、歴代政権に比しても非常に巧妙に経済・外交政策の手綱さばきをしているのは確かだが、まだ改革のスピードが遅いからだ。

 こう書くと、力強い経済成長に向けた規制緩和系の話と思われがちだが、やはり安定多数を得た安倍政権には、本来実現したかったことと思われる憲法改正や安全保障面での大改革を特に期待したい。

 改めて書くまでもなく北朝鮮情勢がかなり切迫している。政策担当者の常として、責任を持って国民の生命・財産を守るためには、最悪の状況の想定が必要だが、普通に考えても、近い将来(1年以内?)、北朝鮮は、米国を射程に収める大陸間弾道弾ミサイル(ICBM)と、核の小型化・弾頭化技術を手にする。後者は既に保有しているという分析も有力だ。

 米国としては、北朝鮮に下手に干渉すると、本土の安寧が脅かされるわけで、北朝鮮の核保有を認める代わりに、ミサイル技術の放棄のみを要求する可能性もある。核を持った北朝鮮が東アジアで暴れようとも、米国本土に届かないのであれば、とりあえずは安全だ。現に米国内では「戦略的忍耐」という無責任政策を取っていたオバマ氏周辺などから、既にそういう議論も出ている。

 その際、最も危険にさらされるのは、近隣諸国、特に北朝鮮に明らかな敵意を見せている日本であり、核弾頭で脅されながら「金を出せ」といわれ続けるリスクもある。正確には、「過去の戦争での賠償金を払え」とか「工業団地の開発に協力せよ」といった類と思われる。

 こうした、少し考えれば分かる悪夢の将来を想定すれば、特に、若い現実的世代を中心に、わが国の「核武装論」や「敵基地攻撃能力保有論」が湧きあがるのは当然で、憲法に自衛隊を明記するというレベルを超越した改革が必要だ。現代戦では、サイバー・宇宙空間が当初は主戦場になるが、憲法改正には国民投票も必要なことを踏まえると、現実的には、まず、これら分野への本格対応から始めるべきかもしれない。

 短期的には、しばし挑発が沈静化しているが、互いに引くに引けないトランプ米大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は、近い将来に行きつくところまで行くという見方もある。例えば、在韓・在日米軍の家族が大挙して帰国するクリスマス休暇周辺などに米国が軍事オプションを取るという見解もある。

 希望的観測としては「米軍が電撃的に一挙に北朝鮮の反撃能力を壊滅することに期待」となるが、常識・現実的には、米軍が勝利はするものの、かなりの返り血、特に地理的に近接している韓国や日本には深刻な被害が出るとみるのが当然だ。ソウルと東京で200万~400万人の死者が出るとの予測もある。

 いずれにしても、考えれば考えるほど、自国の防衛を他国に委ねるリスクが顕在化するわけであり、トランプ氏に「日本は武士の国だ」と言われるまでもなく、われわれは本格的に自らの防衛を考えなければならない。

 そもそも、他国の大統領に、自国の拉致被害者・家族に、「面会」していただいて、多少なりとも留飲を下げている事態に違和感を持つのは私だけであろうか。

                   ◇

【プロフィル】朝比奈一郎

 あさひな・いちろう 青山社中筆頭代表・CEO。東大法卒。ハーバード大学行政大学院修了。1997年通商産業省(現経済産業省)。プロジェクトK(新しい霞ヶ関を創る若手の会)代表として霞が関改革を提言。経産省退職後、2010年に青山社中を設立し、若手リーダーの育成や国・地域の政策作りに従事。ビジネス・ブレークスルー大学大学院客員教授。44歳。