【高論卓説】保育の無償化、さらに熟慮を 幼少期は家族の触れ合いが第一
安倍晋三政権は、「女性の活躍」を重要政策の一つとしてさまざまな施策を行ってきた。しかし、それらの政策をやればやるほど、女性の役割をどう考えているのかという疑問が大きくなっていく。少子化という国難を突破するために、「産めよ、増やせよ」という方向性を強調し、経済回復のために、女性も納税者となるべく働けという。
しかも、それが「女性の活躍」だと“定義”する。生活のためではなく、「女性の活躍」のためには、子供を0歳児から保育園に預けることも“推奨”する。そこには、親や家庭の責任と役割はもちろん、子供にとって最善の社会は何かという視点はない。
それは、8日に閣議決定した、「人づくり革命」と「生産性革命」のための2兆円の政策パッケージを見れば分かる。これは、11月に自民党が提言した「人生100年時代・全世代型社会保障への転換」を元に、与党間の協議を経てまとめられたもので、先の衆院選で自民党が公約にした「幼児教育無償化」と、その実現のための消費税増税分の使途変更を具体化したものを含む。
しかし、実際にはそれを具体化する過程で、自民党にもさまざまな議論があったことがうかがえる。幼児教育の無償化については、3~5歳児(通常、幼稚園でいう年少児から年長児に当たる年齢)は一定の基準の中で全てが無償化の対象となったが、0~2歳児については、住民税非課税世帯に限定しての無償化となった。
この背景には、待機児童が解消されていないことから「無償化より(保育園)全入」という要望の声があったからでもあるが、家庭の経済的事情からその必要性が高い場合を除き、0歳児から保育園に預けることの疑問の声があることも反映している。
事実、自民党の提言には、基本的には幼児教育の無償化の必要性は示しながらも、「幼児期は能力開発、身体育成、また人格の形成、情操と道徳心の涵養(かんよう)にとって極めて大切な時期であり、家庭・保護者の果たす第一義的な役割と共に…」「子育ての第一義的責任は家庭・保護者にあることを大前提としつつも…」「0~1歳児は、家庭の触れ合いが特に大切との指摘も踏まえ…」など、随所に家庭、つまり保護者自身が育てることの重要性が強調されている。また、「0~2歳児についても、家庭で保育をしている方々とのバランスを考慮しつつ、保育の無償化の検討を進める必要がある」とし、いわゆる専業主婦で子育てを行っている女性たちへも、その役割や意義を強調するものとなっているのである。
中学生の子供を持つ母として、この十数年の子育てを振り返ってみても、幼少期に子供第一の働き方をし、触れ合う時間を持てたことは、自分自身にとっても、人生の宝のような時間であった。特に幼稚園に通うまでの4年間は、仕事との両立においても、また子供と向き合う時間においても、苦しいことは山ほどあった。まだ中学生のわが子に、これから先、どのような将来があるのかは分からない。しかし、その時間を経たからこそ、母親として、至らないことはまだまだあるとはいえ、今、それなりの務めを果たせてこられたという思いはある。
自民党の提言が、子供を第一と考えたときの親の責任と、母親となった女性にとって、何が「活躍」で、何が「輝く」要素となるのかを示すものであるならば、今後進めていく幼児教育無償化の制度設計は、熟慮に熟慮を重ねて行ってもらいたい。
【プロフィル】細川珠生
ほそかわ・たまお ジャーナリスト。元東京都品川区教育委員会教育委員長。テレビ・ラジオ・雑誌でも活躍。千葉工業大理事。1児の母。父親は政治評論家の故細川隆一郎氏。
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