失業率低下、求人倍率上昇で雇用逼迫、鍵握る賃上げ

 
完全失業率と失業者数など

 11月の完全失業率が平成5年11月以来24年ぶりの低水準となるなど雇用情勢の改善が顕著だ。背景にあるのが安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」に伴う景況感の改善。労働需給が逼迫(ひっぱく)し、企業の人手不足感が強まる中、政権の目指す3%程度の賃上げに向けた土台は整いつつあり、来年の春闘でどこまで賃上げが浸透するかが日本経済の力強い回復の鍵を握る。

 「賃金上昇を促す環境は間違いなく整いつつある」

 日銀の黒田東彦総裁は26日、東京都内で開かれた経団連の審議員会での講演でこう強調した。黒田氏が言う環境とは人手不足を「起点」とした賃金上昇圧力の高まりだ。残業規制などで企業の人手不足感は強まっており、とりわけ深刻な産業では賃上げを通じて処遇改善に取り組まなければならない状況になっている。

 政府はこうした状況を賃金引き上げに向けた絶好の機会と捉え、企業の背中を押す施策を用意した。来年度の税制改正では、3%以上の賃上げなどを条件に大企業の実質的な法人税負担を25%程度に引き下げる。一方で、利益を上げながら賃上げや設備投資に動かない企業は「研究開発減税」などの適用から外す“アメとムチ”で賃上げを促す。

 制度的な後押しも加わって、労使ともに賃上げに前向きだ。連合は30年春闘でベースアップ(ベア)を要求する方針で、要求水準は「2%程度を基準」とし、定期昇給(定昇)相当分と合わせ4%程度の賃上げを求める。経団連も3%程度の賃上げを加盟企業に呼び掛ける考えだ。

 賃金が増え国内総生産(GDP)の約6割を占める個人消費が膨らめば、企業業績は回復する。さらなる賃上げになる「経済の好循環」につながり、政権が目指すデフレ脱却にも近づく。(今井裕治)