生産性高め「稼ぐ力」に磨きを 人手不足は収益構造変革のチャンス

 
東京・浅草の浅草寺「仲見世商店街」(AP)

 ■産経新聞論説副委員長・長谷川秀行

 世界経済に陽光が差す中で迎えた新春である。8年半もの息の長い景気拡大が続く米国はもちろん、英国の欧州連合(EU)離脱に揺れた欧州や、景気減速が懸念された中国も今や成長の足取りを強めている。

 何よりも日本の景気回復が高度成長期の「いざなぎ景気」を超える戦後2番目の長さとなった。主要国の経済がそろって堅調だという、近年みられなかった状況は、多くの企業の経営を後押しすることだろう。

 無論、懸念はある。日本経済は消費が伸び悩み、回復を実感できるほどの力強さがない。人口減による国内市場の縮小も気がかりだ。間もなく2年目に入るトランプ米政権が保護主義的な動きを本格化させるかもしれない。北朝鮮の核・ミサイル開発という地政学上のリスクもある。それゆえ企業が先行きを慎重にみるのは理解できる。

 だが、思い返してみたい。かつては円高や高い法人税率、経済連携戦略の遅れ、電力不足などの「六重苦」が、企業の競争力を減じていると指摘されていたのである。そのほとんどがこの5年でなくなった。

 先進7カ国で最下位

 日本経済を苦しめてきたデフレから完全脱却するには、もう一押しが必要だ。それには賃上げや設備投資など、企業の積極的な経営姿勢が欠かせない。海外の景気がピークを打って後退へと転じてからでは遅い。その認識を新たにすべきである。

 やるべきことは、はっきりしている。生産性を高めて稼ぐ力に磨きをかけることである。

 日本生産性本部によると、日本の労働生産性は経済協力開発機構(OECD)加盟35カ国中の20位だ。先進7カ国では1970年以降、万年最下位である。

 産業別では、化学や機械が米国の労働生産性を上回るのに対し、非製造業の生産性の低さが際立つ。特に運輸や卸売・小売業、飲食・宿泊などは米国の3~4割にすぎない。いずれも人手不足が深刻な業界である。

 この状況を嘆いても仕方がない。むしろ、欧米と比べ、生産性を引き上げることで成長できる余地が大きいと前向きに考える発想があっていい。人手不足は収益構造を抜本的に変革するチャンスだと捉えるべきだ。

 環境整備が重要

 企業がIoT(モノのインターネット)やビッグデータ、人工知能(AI)、ロボットなどの技術革新をいかに活用するかは、引き続き重要である。

 これらを導入した企業に対する内閣府の意識調査では、半数近くの企業が新商品開発や新規顧客の開拓で成果があったと回答した。これはコスト削減を成果とする回答よりも多い。新技術の導入は、合理化や省力化にとどまらず、新たなビジネスの広がりをもたらすのである。

 円安などで収益が改善した企業が現預金をため込むことへの批判は根強い。過剰債務で苦しんだ過去の経験を踏まえ、財務内容を筋肉質にしようとする経営判断はもちろんあろう。

 だが、個々の企業にとって合理的な行動であっても、それが経済全体に広がると景気を冷やす要因となることがある。いわゆる「合成の誤謬(ごびゅう)」である。

 これを避けるためにも、企業に投資を促す政府の役割は当然大きい。デフレ期の需給ギャップが改善してきた今、財政や金融でやみくもに景気を刺激する緊急性は薄れた。大切なのは規制改革などで企業の活力を引き出す環境整備だ。それに企業はどう応えるか。政府が掲げる生産性革命の成否も民間の創意工夫にかかっているのである。