ナイキVSアディダス前哨戦 サッカーW杯 ユニホームとシューズ契約争う

提供:ブルームバーグ
ドイツ代表ではアントニオ・リュディガー選手(右)らもナイキのスパイクを履いている(AP)

 2018年夏に開催されるサッカー・ワールドカップ(W杯)ロシア大会。前回王者ドイツのサミ・ケディラが着るユニホームには、チーム・スポンサーであるスポーツ衣料大手アディダスの3本線のロゴが入っていることだろう。しかし、足元に視線を移せば、同じくスポーツ衣料大手ナイキのロゴマーク「スウッシュ」を目にすることになる。ケディラが履いているサッカーシューズはナイキ製だからだ。

 ケディラは数十年にわたる「スニーカー・ウォーズ(シューズ戦争)」に起きている戦略面での変化の象徴とされる。ロシア大会に出場する32カ国のユニホームのブランドは11カ国がアディダス、10カ国がナイキで、アディダスが一歩先行する。しかし、トップ選手とのシューズ提供契約の件数はナイキが大きく上回り、反撃を見せている。

 個別狙い「嫌がらせ」

 出場32カ国の最終登録選手は大会直前まで決まらないものの、独調査会社PRマーケティングは、ナイキのシューズを履いている選手が半分以上を占めるとみる。同社の創業者、ピーター・ホールマン氏によれば、4年前のブラジル大会でナイキのシューズを履いていた選手は全体の52%、アディダスを履いていた選手は36%だった。

 同氏は「決してまぐれ当たりではない。個人スポンサー契約に関して、ナイキはアディダスよりも早くから、より幅広く動いていた」と指摘する。

 PR社によれば、スポーツ衣料メーカーは、欧州だけで年間8億ユーロ(約1084億円)をクラブチームに、さらに同5億ユーロを各国代表チームに投じている。

 シューズ、ユニホームといった用具の市場規模は年間190億ドル(約2兆1420億円)近くと、10年前の倍以上の水準に達しており、メーカーは一般消費者への販売を強化する上でスポンサー契約が鍵だとみている。PR社の推計では、同市場におけるナイキ、アディダスのシェアは合計89%を占める。

 アディダスは最近になって、本当に重要な競争で、ナイキをトップの座から追い落とすことに成功した。それは趣味でサッカーをする層への売り上げだ。PR社によれば、昨年のアマチュア向けシューズ販売はナイキの3100万足に対し、アディダスは4200万足だった。

 サッカーシューズの巨人2社による激しい応酬の中、ナイキはホールマン氏が「嫌がらせ戦略」と呼ぶ行動に出ている。アディダスと契約しているチームの所属選手と、個別にシューズ契約を結ぶのだ。

 例えば、ケディラは所属クラブであるユベントス(伊)で試合に出るときも、アディダスのユニホームを着て、ナイキのシューズを履いている。レアル・マドリード(スペイン)のクリスティアーノ・ロナウドも所属クラブとユニホームはアディダスだが、シューズはナイキ製だ。

 企業は、臆することなく不意打ち的なマーケティング戦術を実行している。ボルシア・ドルトムント(独)の点取り屋、ピエール・エメリク・オーバメヤンは昨年3月、クラブがプーマとスポンサー契約を結んでいるにもかかわらず、頭髪にナイキのスウッシュの形で刈り込みを入れ、その部分を赤く染めた。

 また昨年4月のシャルケ04(独)との対戦で得点した際には、ナイキのCMに登場するマスクを被ってゴール後のパフォーマンスをした。現地メディアの報道によれば、オーバメヤンがナイキから受け取っている報酬は年間約200万ユーロとされる。さらに、ソーシャルメディアで同社に言及すれば追加報酬を受け取れるという。

 チーム名より大きく

 また、ミッドフィールダーのマリオ・ゲッツェが13年にバイエルン・ミュンヘン(独)に加入した際、入団発表の席で着ていたTシャツには、ユニホームのチーム名よりも大きく「Nike(ナイキ)」と書かれていた。クラブがアディダスと契約しているにもかかわらずだ。ゲッツェはこの年、ドイツ代表の一員として移動していた際にも、アディダスと同代表のスポンサー契約があるにもかかわらず、ナイキのソックスを見せつけるような行動を取った。

 ナイキは年次決算報告で、今後5年間、スポンサー契約に年11億ドルを投じると表明している。

 当然、「嫌がらせ戦略」には報復もある。アディダスはヴォルフスブルク(独)のディボック・オリジや、恐らく世界最高の選手であるバルセロナ(スペイン)のリオネル・メッシにシューズを提供しているが、両クラブはナイキとスポンサー契約を結んでいる。

 マッコーリー・グループのアナリスト、アンドレアス・インダースト氏は、カジュアル層のファンはユニホームをより重要し、プレー用のシューズには、ほとんど関心がないと指摘する。

 一方、ブランド全体の健全性を測る指標としてはシューズの売り上げの方が優れているとし、「市場シェアを取るのは、ユニホームよりもシューズの方が難しい」との見方を示している。(ブルームバーグ Richard Weiss)