電子商取引で中国包囲網 デジタル保護主義を懸念、日米欧が有志国協定 2月にも初会合

 
中国のサイバーセキュリティー法

 政府が電子商取引(EC)の国際的なルール作りを進めるため、有志国協定の締結に向けた調整を始めたことが2日、分かった。米国や欧州連合(EU)加盟国など70カ国が今年2~3月に初の事務レベル会合を開く見通し。中国が進める「デジタル保護主義」が企業活動の障害となる懸念が広がるなか、中国を牽制する狙いがある。

 有志国協定では、インターネット上の個人情報保護やオンライン契約の有効性に関する決まりなど基本的なEC円滑化のルール構築を想定。まずは法整備が遅れた途上国の要望に応じた内容にすることで、「枠組み作りの第一歩」(交渉筋)を踏み出したい考え。

 中国は昨年6月のサイバーセキュリティー法施行などで、企業にデータ保存設備の国内設置やソフトウエア技術の情報開示を求めるなど監視を強めている。また「グレート・ファイアウオール(電子版・万里の長城)」と呼ばれる検閲システムは政府に都合の悪い情報を遮断している。

 一方、日本などはこうした規制に反発。環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)では中国のような強権的な規制を禁止するECルールを盛り込んだ。将来的には有志国協定でも禁止対象にしたい思惑がある。

 日本がECのルール作りを急ぐのは中国のデジタル保護主義が企業の事業戦略を阻むだけでなく、当局に製品や技術の“手の内”をさらけ出すことで情報の外部流出につながる恐れがあるためだ。流出した情報が中国企業の後押しや言論封殺に使われる懸念も拭えず、日米欧の警戒感は強い。経済産業省幹部は「このまま放置すれば取り返しがつかなくなる」と危機感を隠さない。

 しかもデジタル保護主義には拡散の兆しもある。ベトナムが同様の法整備を検討中のほか、インドネシアやタイでも規制の動きが強まる。中国は昨年12月に主催した「世界インターネット大会」で国家主権の問題としてネットの管理統制を正当化。ラオスやサウジアラビア、セルビアなど現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」の沿線国とネット空間の秩序を高める共同提言を発表した。

 中国の動きにはデジタル保護主義の主導で周辺国への影響力を強める狙いが見え隠れする。一方の周辺国には中国からの経済支援への期待に加え、ネット上の言論が体制を揺るがすことを防ぐため規制を強めたい狙いがあるとみられる。

 日本などが目指す有志国協定は中国包囲網を築く意味合いがあるが、協定の効力は参加国にしか及ばない。このため中国の行動を縛るには枠組みに取り込む必要があり、デジタル保護主義払拭に向けた日本の戦略が問われる。