パブリック移行でIT変革 クラウド投資増受け新収益源必須

提供:ブルームバーグ
四半期決算を発表するタタ・コンサルタンシー・サービシズのゴピナサン最高経営責任者(CEO)。クラウド関連事業が好調に推移している=2017年10月12日、インド・ムンバイ(ブルームバーグ)

 プライベートクラウド(企業や組織向けの専用クラウド環境)からパブリッククラウド(利用者を特定しないクラウド環境)への移行が進んでいることに伴い、ITサービス業界の変革が進んでいる。

 コンサルで差別化

 短期的に、クラウド化はコンサルティング中心のベンダーにとっては成長の追い風となる一方、データセンター受託業務を手掛ける企業にはマイナス影響をもたらす。

 IT投資に占めるクラウドの割合が10%未満にとどまっていることを踏まえれば、長期的な脅威よりもクラウド化によって生み出される機会の方が大きい。成熟化に伴い拡大ペースは緩まるだろうが、少なくとも今後10年間は、コンサルティングとシステム統合の双方でクラウド化進展による需要拡大が見込める。

 長期的には、パブリッククラウドの普及により、IT業界の大規模なシステムサポートとメンテナンスの商機は大幅に減少するだろう。また、従来型のデータセンター受託業務も需要縮小が予想される。IT業界は今後この損失分を補うために、人工知能(AI)による、あるいはプラットフォームベースの製品を拡大していく必要があるだろう。

 クラウド化への移行はまだ初期段階だが、この需要の高まりによって今後10年間はITサービス業界の成長加速が見込める。成長の大半は、インフラとアプリケーションなどをクラウドに移行する自社運用系(オンプレミス)の既存顧客からのものとなる。

 企業のクラウド化が進むにつれ、ITサービス業界では、規模を伴うITコンサルティング業務の能力が重要な差別化要因になってきている。アクセンチュア、デロイト、キャップジェミニなど、大規模なコンサルティング事業を展開する企業は、IBMやDXCテクノロジーなどの受託業務を中心とした企業に比べ、今後も速いペースで成長するだろう。最新のITアーキテクチャーの開発とシステム導入の両方をサポートするほか、顧客がクラウド用のプログラミング言語でアプリケーションを書き換える際のサポートもできるため、クラウド化の過程でのコンサルティング企業の役割は極めて大きい。

 規制強化は追い風

 規制やデータコンプライアンスが強化されている金融サービスやヘルスケアなどの業界では、ハイブリッド型のクラウドモデルが求められる。このモデルでは、顧客は自社にインフラの一部を残し、一部をパブリッククラウドに移行させる。パブリッククラウドが拡大しても、この移行作業は相当量のマニュアル作業が必要となり、新たな事業機会となる。多くの場合、欧州連合(EU)の一般データ保護規則(GDPR)などの規制は増収要因だ。

 顧客仕様の従来アプリケーションには引き続きモニタリングとサポートが必要なため、今後も長期的な売り上げが見込める。ほとんどの従来型ITモデルでは、システム維持関連の業務がIT支出の50%以上を占める。クラウド化はまだ初期段階にあるため、当面はこれらのサポート業務が劇的に減少するとは考えにくい。ただし新たな技術への移行に伴う値下げ圧力はあるだろう。

 インドのタタ・コンサルタンシー・サービシズやインフォシス、米コグニザント・テクノロジー・ソリューションズ、アクセンチュア、仏キャップジェミニなどのITサービス企業では、顧客がこれらの新しい技術を採用し始め、需要が増加するだろう。

 長期的な展望としては、パブリッククラウドの導入が進めば、インフラ受託、パッケージソフトやインフラのサポート・カスタマイズなど、ITサービスのいくつかの業務は消滅するだろう。収益を保つため、ITサービス企業は新たにプラットフォームベースの製品を立ち上げる必要が出てくるだろう。

 パブリッククラウドは第三者によるメンテナンスがほとんど必要ないため、サポートによる収益基盤が縮小し、ITサービス業界の長期的な経済性が損なわれる可能性がある。

 パブリッククラウドはカスタマイズの必要がほとんどなく、IBMやアクセンチュアなどに対するシステム統合需要は減少するだろう。多くの場合、クラウドプロバイダーはエンドツーエンド(E2E)のITインフラの提供で追加収入を得ているため、このモデルではハードウエアとITサービス双方の企業が業務縮小の痛手を受ける。

 オラクルの推定によれば、クラウドに移行することで顧客のデータ保有コストは約33%低下する。

 基盤製品やAI鍵

 パブリッククラウドへのインフラ移行が進めば、従来型のデータセンター事業者は痛手を受ける。当面は移行の流れが続き、自社でデータセンターを維持・管理する企業は減少するだろう。そうなれば、IBMやDXCテクノロジーなどの売上高に影響が出る。これらの企業は減収分を補うため、独自のクラウドサービスの提供を進めている。多くの場合、顧客のニーズに応じてクラウドとオンプレミスの混合サービスを提供している。

 ITサービス業界は、パブリッククラウド化によるマイナス分を補うため新しい収益源を見つける必要がある。堅調な成長が見込める選択肢の一つとして、プラットフォームベースの製品が挙げられる。業界のほとんどの企業で、売上高に占めるこれらの製品の割合は5%に満たない。プラットフォームベースの製品展開であれば、新たな収益源となるだけでなく増収と同ペースでの要員補充の必要がなくなる。収益性向上のため、製品へのAI搭載を進めることも必要だろう。

 タタ・コンサルタンシー・サービシズ、インフォシス、アクセンチュアなどのITサービスプロバイダーは、プラットフォームベースのサービス創出に焦点を当てることで、新製品の開発および実装支援などの新たな需要創出が可能となるだろう。(ブルームバーグ Anurag Rana)