シンガポール、オフィス市場がV字回復へ 雇用改善、新規供給は縮小

提供:ブルームバーグ
シンガポールのビジネス街。オフィス市場は急回復している(ブルームバーグ)

 2018年はシンガポールのオフィス賃料が5~10%上昇する見通しだ。雇用環境が改善し、新規供給も縮小しているためだ。17年7~9月期(第3四半期)の賃料は前年同期比2.4%増と、四半期としては15年1~3月期(第1四半期)以来初めて上昇に転じた。新規雇用見通しは過去2年で最高となり、賃貸需要の拡大が予想される。ブルームバーグ・インテリジェンスの分析によれば、過去12年で最高水準にあった空室率は大幅に低下する見通しだ。

 ◆REITが上昇後押し

 保有物件の稼働率が高い主要なオフィスの不動産投資信託(REIT=リート)が、賃料を上げやすい良好な立場にある。

 一方、シンガポールの新規オフィス供給ペースは減速見通しのため、空室率は18年に天井を打ち低下傾向をたどるだろう。コリアーズ・インターナショナルによれば、昨年9月までの4四半期の新規需要面積は230万平方フィートに達したという。18年に完成予定のオフィス面積は約200万平方フィートで、17年の予想である350万平方フィートより43%少ない。

 19年の新規供給は110万平方フィートとさらに縮小する見通しで、これは07年から16年までの年間平均供給面積である210万平方フィートの53%にすぎない。

 今後、計画されている主なプロジェクトとして、フレイザーズ・センターポイント・リミテッドのフレイザーズタワー(完成予定は18年、66万3000平方フィート)、ハイイ・ホールディングスとシンハイイ・グループ並びにサンテックREITの9ペナンロード(同19年、35万2000平方フィート)、キャピタランド・コマーシャル・トラストのゴールデン・シュー・カーパーク再開発プロジェクト(同21年、190万平方フィート)がある。

 人材サービス会社のマンパワーグループが行った最新の雇用調査では、17年10~12月期(第4四半期)に新規採用を増やす計画の企業は11%(季節調整後)とこの2年で最高となった。この数値は17年7~9月期(第3四半期)より7%高く、雇用環境の改善が見込まれる。金融、保険、不動産セクターでは約8%の雇用主が17年10~12月期(第4四半期)に人員を増強すると回答した。7~9月期(第3四半期)は3%だった。

 ◆新たなテナント需要

 シンガポールの主要なオフィスREITはポートフォリオの空室率が相対的に低いため、17年10~12月期(第4四半期)から18年にかけて賃料を上げやすい良好な位置にある。キャピタランド・コマーシャル・トラストのポートフォリオの稼働率は17年9月末時点で98.5%と、前年同月の97.6%から上昇した。銀行、金融サービス、エネルギー、物流など多様なビジネス分野から新たなテナント需要が生まれている。17年9月末時点のケッペルREITとサンテックREITの稼働率はそれぞれ99.6%、99.1%と、高水準を維持した。

 17年11月にマリーナベイエリアのアジア・スクエア・タワー2を21億シンガポールドル(約1774億円)で買収したキャピタランド・コマーシャル・トラストは、収益成長を見込める好位置にある。17年6月末日時点の稼働率は88.7%にすぎず、収益拡大の余地が十分にある。

 シンガポールの賃貸オフィス市場に回復の兆しが見られており、これが投資需要を喚起して、賃料は16~17年の低迷期水準から引き上げられる公算が大きい。17年7~9月期(第3四半期)は平均賃料が月を追うごとに上昇し、前四半期比2.4%と、15年1~3月期(第1四半期)以来初めて上昇した。賃貸市場はこの2年間厳しい環境にあったものの、オフィス不動産の資本価値は低金利によって支えられた。当面は急激な利上げの可能性は低く、賃貸需要拡大に伴い一段の賃料改善が見込める。

 ホンコンランドが保有するシンガポールのマリーナベイ・ファイナンシャルセンターの17年6月末時点のオフィスのキャップレート(還元利回り)は3.25%と、昨年12月末の3.5%から低下した。同様に、キャピタランド・コマーシャル・トラストのキャピタルタワーのキャップレートは同期間に3.85%から3.7%へ低下した。(ブルームバーグ Patrick Wong、Mohsen Crofts)